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ささやかなGood Job

からっと晴れた休みの日に限って、車の汚れに気がつく。
私がふと思い立ってドライブスルー洗車に行く時は、大抵すでに車列ができている。
他の人が自分の車の汚れに気がつくタイミングも、同じようなものなんだろう。
待つのは慣れっこなので、ノラ・ジョーンズでも聴きながらのんびり番を待つ。

ふと、隅にある横断幕に目をやる。
ブランケットサイズで、ビニールみたいな素材。
四隅にはハトメが留まっていて、紐でプラスチックの枠と固定されている。
幕の真ん中に目を凝らすと、縦に大きな切れ込みが入っている。
かろうじて隙間が空いている程度なので、文字を読むのには差し支えない。

この切れ込みは…?と一瞬考えて、あ、そっか、と気が付く。
これだけ大きな幕では、もろに風の抵抗を受けてしまう。
少しでも強い風が吹けば、倒れたり、飛ばされたりしてしまうだろう。
このちょっとした切れ込みが風をうまく逃がしてくれている。
しかも、縁が丁寧に縫ってあるので、切れ込みが広がってくることもないだろう。

丁寧な良い仕事というのは、ささやかであることが多い。
特に、暮らしの中の心地良さや快適さは、一度当たり前になってしまうと、それを生み出す仕事の存在を意識するのが難しくなる。そういえば、高校時代、国語の先生が授業中の雑談で言っていたな。
「働く」という言葉は「傍(はた)」を「楽(らく)」にするという意味なんだ、と。

快適さを与えてくれる細やかな仕事に気がつくことができるだけの、視野の広さを持って暮らしたい。
いや、その前に、私は自分の車の汚れにもっと早く気がつくべきだよね…おっと、洗車の順番が回ってきた。



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