【詩】雪
肌寒い朝にカーテンを開けると雪が降っていて、わたしたち、雪が綺麗だねとお互い口にする
そうしてわたしたちはそれからもずっと雪の話をしていて、雪がどんなふうに綺麗なのかについて数多の言葉を尽くしていた。一枚の窓ガラスで隔てられた室内から、意味もなく、思いついた形容詞を並べ立てるように、冷えた空気をむやみやたらに振動させたいかのように
わたしたちの口にした言葉はひとりでに宙に浮かびあがっていた
そして宙に浮かんだ言葉たちは、ひとつの文字を部分部分に分解したときみたいに次第にばらばらになっていき、最後には形もなくなって、部屋の中に降りしきっていたのだった
寒かった
はやく夏になれと願った
太陽が照りつける36度5分の暑い日をわたしは待ち望んでいた
そんな日が来ればきっと、もうわたしには何も要らなくなるから
そう自分に言い聞かせながら