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小学生から始める“論理的思考”の新時代:プログラミング的思考がもたらす学びの変化




はじめに

みなさんは、これまでの学校教育で「論理的思考」について学ぶ機会がどれほどあったか、振り返ったことはありますか? 実は、これまで日本の学校教育では「論理的思考」を学習項目として、体系的に扱う機会はほとんどありませんでした。
もちろん、小学生高学年の算数での文章問題、中学生以上での数学の証明問題や文章問題、または、国語の感想文や小論文などを通じて、結果から原因を考える論理的に文章を組み立てるといった訓練は行われてきました。しかし、あくまでも単元や問題演習の一部であり、体系だった学習科目・項目としてゴールを設定し「論理的思考」を教えていたわけではありません。

本記事では、学校教育の中での論理的思考の扱いと、近年注目されている「プログラミング的思考」の学習がどのように「論理的思考の早期教育」につながっているのか、そのポイントを解説します。


1. これまでの学校教育における論理的思考の学習

1-1. 数学での証明問題・文章問題

中学・高校の数学で登場する証明問題は、ある仮定(条件)から結論を導き出す過程を筋道立てて示すことが求められます。ここでは「AだからBである。よってCである」というように、論理の筋道を意識する力が養われます。

さらに、文章題では式を立てるために状況を整理したり、必要な条件をピックアップしたりする必要があるため、やはり論理的に思考する力が試されます。ただし、こうした訓練はあくまでも数学の一部として行われるものであり、目的として「論理的思考を身につける」というのが明示されているわけではなく、問題演習の“副産物”として論理的思考が育まれているのが現状でした。

1-2. 国語の感想文・小論文

一方で、国語の授業では感想文や小論文を書く機会があります。ここでも論理的思考は必要です。「自分がなぜそう感じたのか」「どのような根拠でその結論に至ったのか」を文章で整理して表現することで、論理の流れや因果関係を表現する訓練になっていました。

しかし、これらの学習も「論理的思考」を明示的に教えるのではなく、国語という科目の一部として経験的に身につけるものでした。つまり、体系立てて論理のルールや構造を学ぶ機会は少なかったと言えます。


2. なぜプログラミング的思考が注目されるのか?

では、そんな現状の中で注目を集めているのが、小学生の段階から「プログラミング的思考」を学ぶことです。学校教育の中でも必修化が進み、子どもたちはプログラミングを通じて新たな学習体験を得る機会が増えています。

2-1. 明示的かつ体系的に論理的思考を学べる

プログラミングでは、コンピュータを動かすために「命令を順番に整理して書く」「条件が成立するときとしないときの分岐を考える」といったステップが必要となります。どの指示をどのタイミングで実行すれば理想の結果につながるのか──こうした流れを組み立てる過程は、まさに論理的思考のトレーニング。しかも、プログラミングはそのプロセスがはっきりしており、根拠のない指示や手順があるとエラーが出たり、うまく動かなかったりします。
つまり、論理構造がシンプルに可視化されるため、「論理的に正しいフローを作るにはどうすればいいか」を体系的に学ぶことができるのです。

2-2. ゴールが明確で、かつ動きが目に見える

プログラミングは、最終的に「動くプログラム」が成果物となります。たとえば、画面上のキャラクターを思い通りに動かせたり、簡単なゲームを作れたりするので、目に見える形で達成感を味わうことができます。これは論理的思考を身につけるうえで非常に大きなメリットです。さらに、ゴールとなるプログラムの内容を自分で考えることもでき、創造性も身につけることができます。
小中学生でも、プログラムがうまく動くと「どうして動いたのか」を自分で振り返り、改良を繰り返すようになります。いわば「失敗と試行錯誤のサイクル」が、楽しみながら回る仕組みがあるのです。


3. 早期学習がもたらすメリット

3-1. 思考力の基礎をしっかり育てる

これまで中学生以上で触れることが多かった論理的思考のトレーニングを、小学生のうちから積み重ねられるのがプログラミングの強みです。早い段階で「筋道を立てて考える力」を身につけることで、後々の数学や国語、さらには社会科や理科など、あらゆる教科の学習にプラスの効果をもたらします。

3-2. 好奇心や探求心を刺激する

プログラミングというツールは、ただの「論理的思考トレーニング」だけではなく、創造力や探求心を刺激する要素があります。自分のアイデア次第でキャラクターが動くゲームやアプリを作れるとわかれば、子どもは自然と「もっとこんなふうにしたい」「こういう機能を付けたい」とアイデアを膨らませます。その中で、「どうすれば実現できるか?」を考え、論理的にアプローチする習慣が育まれます。


4. どんな教材や環境がいいの?

4-1. ビジュアルプログラミング言語の活用

小学生が最初に取り組む場合、ブロック状になった命令を組み合わせてプログラムを作る「ビジュアルプログラミング言語」がおすすめです。たとえば、Scratchなどが代表的な例で、英語のコードを覚える必要もなく、論理の組み立てに集中できるため、考える楽しさをダイレクトに味わえます。

4-2. 保護者・教師がサポートしやすい仕組み

子どもがプログラミング学習に取り組む際、周囲の大人がしっかりフォローしてあげられるように、解説動画や教材が充実したオンライン学習ツールを選ぶのもポイントです。何をどこでつまずいているのかがわかりやすく、論理の組み立て方を親子で一緒に考えることで、コミュニケーションの機会も増えます。


5. おわりに

これまで、日本の学校教育では論理的思考を明確に学ぶ機会は限られていました。中学・高校での数学や国語などで断片的にトレーニングは行われてきたものの、体系的に学ぶことは難しかったのが現状です。ところが、小学生のうちからプログラミング的思考を身につけることが浸透していけば、体系的な論理的思考の学習が、もっと早い段階から可能になります。

さらに、プログラミングによる論理的思考の鍛え方は、キャラクターを動かしたりゲームを作ったりと、わかりやすく楽しみながら学習する仕組みが豊富にあるのが特長です。楽しみながら試行錯誤を重ねるうちに、自然と「論理的に物事を考える習慣」が身についていくでしょう。

こうした学びが広がれば、これからの子どもたちは思考の基礎をしっかり築き上げ、将来的にあらゆる分野でイノベーションを起こせる人材へと成長していくかもしれません。私たち大人は、子どもたちの未来を応援するために、まずはプログラミング教育の意義を理解し、サポートしていきたいですね。


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