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転職だけがゴールじゃない!リスキリングがもたらす本当の価値とは
これまで小学生のプログラミング教育について書いてきましたが、今年の目標を立てる人が多い年始ということですので、大人の学習についても書いたみたいと思います。
はじめに
ここ数年、「リスキリング(学び直し)」という言葉がメディアで注目を集めています。日本政府も教育訓練給付金の拡充や教材サイト・スクールへの支援を行っているようで、日常的に耳にする機会が増えました。では、実際に何を学び直せばよいのでしょうか?
現状のリスキリング
日本政府はリスキリングを「デジタル人材の育成」と位置づけ、構造的な賃上げの実現を目的とする成長産業への労働移動も視野に入れています。日本政府の方針から「リスキリング → 転職 → 収入アップ」という流れをイメージし、最近では転職エージェントの登録者が増えているとも聞きます。
しかし、デジタルと一口に言っても広範囲にわたるため、「何を、どの程度まで学べばいいのか分からない」という人も多いのではないでしょうか。
本来のリスキリングの目的は?
このように「転職による収入アップ」が注目されがちですが、そもそもリスキリングという言葉はどのように生まれたのでしょうか。
リスキリングは、2000年代から2010年代にかけて米国企業で始まった取り組みです。デジタルトランスフォーメーション(いわゆるDX)を推進する経営層が、従業員に急激な変化に対応してもらうための学び直しの機会や環境を提供したことを指します。そのため、学び直しの内容の方向性や評価方法は会社が提示しています。また、厳しい雇用環境のなかで継続的に雇用されるには従業員自身の努力も必要でした。米国では転職が日常的に行われていますが、リスキリングはあくまでも「企業の指示による学び直し」が主な動機だったのです。
期待するリスキリングの姿
日本企業でもDXの必要性が叫ばれていますが、同時にデジタル人材が不足しています。現状では外部発注や派遣の形で社外人材に頼る企業が多い一方、長期的視点に立てば、米国と同様に社内人材を育成して活用していくことが望ましいと考えます。
最初は大変かもしれませんが、社外メンバーとの混合チームを組織するなど、プロジェクトを通じて徐々に社内でデジタルテクノロジーのノウハウを蓄積していくことが重要です。その結果、社員が成長できる環境、評価方法も整い、企業としてもデジタルシステムを内製化しやすくなります。
リスキリングすべき内容とは?
具体的に「何を、どの程度までリスキリングするか」を考える前に、まずは所属企業(あるいは働きたい企業)のDXの取り組みを確認してみてはいかがでしょうか。DXの全体像をブレイクダウンすれば、求められるスキルや人材の方向性が明確になってきます。
経営層がリスキリングにコミットすると、こんないいことが!
みんなが同じ方向を向きやすくなる
経営トップが将来像やDXの意義をはっきり示すと、社員も共通のゴールに向かって自然と学びや仕事に取り組みやすくなります。新しいアイデアや働き方が生まれやすい
社員が学び直しを応援される環境では、新しいことに挑戦しやすくなります。失敗を許容する雰囲気があると、イノベーションが生まれやすくなるのです。会社も個人も成長しやすくなる
リスキリングで得たスキルを活かし、社員自身がキャリアパスを描きやすくなります。企業は外部から人材を採用するよりコストを抑えながら有能な人材を育てられるメリットがあります。ステークホルダー(お客さまや取引先)からの信用アップ
DXやリスキリングに真剣に取り組む企業は、「変化に強い会社」「将来も信頼できる」と外部から評価されやすく、ブランドイメージや新たなビジネスチャンスにもつながります。
転職のメリットとリスク
最後に、個人的に7回の転職を経験した立場から、メリットとリスクをまとめます(あくまでも個人的な感想です)。
メリット
給与がアップする(かも)
労働環境がよくなる(かも)
新しい人間関係を築ける
キャリアアップできる
デメリット
期待通りの成果を求められ、半年~1年ほど常に気が抜けない(メンタル的に負荷)
人間関係・信頼関係を1から作り直し
入社前に聞いた業務内容と違う可能性がある → すぐに転職を考える必要に迫られることも
おわりに
リスキリングによって転職の可能性が広がる一方で、実際に「何を、どこまで」学び直すべきかを考える際には、まず所属企業のDX施策や方向性をしっかり確認することが大切です。
「これから私たちの会社はこう変わるんだ!」というビジョンが明確で、学習や研修の環境が整っていれば、社員もリスキリングに前向きに取り組みやすくなります。
もしもその方向性が自分の学びたい分野と異なる場合は、転職を視野に入れるのも一つの選択肢と言えるでしょう。