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両親の介護から学んだ「できることを奪わない」介護の大切さ

忙しい日々の中で介護をしていると「できないこと」ばかりに目がいってしまいます。
そして、危険を回避しようと「まだできている行動」も制限してしまいがちです。
私も忙しさに追われて危険を回避するあまり、両親の「できること」「やりたいこと」を制限してしまったのではないかと今になって後悔しています。

今回は「できることを奪わない」介護の大切さについて書きたいと思います。

私の両親は、ほぼ同時に介護が必要な状態になりました。父はパーキンソン病で昨年他界し、母は認知症で要介護3の状態です。

私には2歳と8歳の子どもがいて、普段は仕事もしています。しかも、私は一人っ子で介護を手伝ってもらえる兄弟もいない……。

両親は遠方住んでいて、遠距離介護は難しい……。後ろめたさを感じながらも両親には、サ高住(サービス付き高齢者住宅)に入居してもうらうことに……。

サ高住に入居させた結果、私は両親から「できること」を奪ってしまったのではないかと後悔しています。

後悔を強く感じるようになったのは「できることを取り戻す魔法の介護」という本を読んだのが、きっかけです。

この本には、高齢者の「好きなこと」や「得意なこと」に注目し、それを生かす介護の実践例が書かれています。実際にこの取り組みによって、多くの高齢者がポジティブな気持ちを取り戻せているのです。

介護の現場では、利用者のプラス面に注目するという考え方は「当たり前」かもしれません。しかし、忙しいに日々の中では意識しないと実践するのは難しいのです。

私は、これまで忙しさを理由に両親の「できること」「好きなこと」に目を向けられていなかった……。

「できることを取り戻す魔法の介護」を読んで、後悔の気持ちをいだいたのです。


父の介護を振り返って

父の介護を振り返り、私は父から多くの「できること」を奪ってしまったと後悔しています。

「また転倒したら大変だから、一人で外出しないて!」
「ケガをしたら危ないから、なるべく料理はしないで!」

父は要介護状態にありながら、「自分で買い物に行きたい」「料理をしたい」という意欲はありました。
周りがいくら「危ないから……」といっても「まだできる!」と、とても強い意志を持っていたのです。
それなのに、私は安全を重視するあまり、父の「やりたい」気持ちを制限してしまった……。

今振り返ると、父の気持ちをもっと尊重し、できる限りサポートしながら実現させてあげればよかった。そうしたら、父はもっと生き生きとした生活を送れたかもしれないと後悔しています。

認知症の母について思うこと

認知症の母に対しても、父と同様に母の「できること」を奪ってしまい、その結果、認知症が進行してしまったのではないかと感じています。

子育てと仕事に追われていると、母がまだできることも「自分でやった方が早い」とやってしまったり、母がやりたいことに付き合う余裕がなかったり、母の気持ちを尊重できなかったのです。

ある日、母の入居するサ高住に子どもたちを連れて行った時、印象に残った出来事がありました。
母が子どもとお絵描きをしていた時のことです。
認知症になってから手芸講師を辞め、しばらく手芸や絵を描くことから遠ざかっていた母ですが、手芸講師をしていた時と同じくらい上手な絵を描いていたのです。
母の描いた絵に子どもも、思わず「ばあば、絵がうまいね!」とびっくりしていました。子どもの言葉に母は「ばあばは、昔手芸講師をしていて、絵を描くのもうまかったよ!」と得意げに話したのです。

その後、母が通うデイサービスの職員の方と話す機会がありました。デイサービスでの母の様子を聞くと「お母さまは、絵がすごく上手なんですよ!いつも楽しそうに描いています。」と母の描いた絵を見せてくたのです。
確かに母は、昔と変わらず上手な絵を描いていました。

認知症になっても、習慣になっていたことや得意なことは、体が覚えているとよく聞きます。

母も絵を上手に描くことは、まだ体が覚えていたのかもしれません。

母は、自分がデイサービスで絵を描いたことなど覚えていません。
母が得意だったことを少しでも思い出せるように、私は母が描いた絵を何枚か部屋の目につくところに貼りました。

そして、母のもとを訪れた時は子どもと絵を描いたり、工作をしたり、母に「教える役割」をあたえたのです。

孫と絵を描いたり、工作をしたりする母の姿は、少し生き生きとしているように感じました。

理想と現実

頭では「できること」「やりたいこと」を尊重する介護が大切だと理解しています。しかし、日々の忙しさの中で実践するのは難しく、理想と現実の間で悩む日々です。

自分に余裕がないと、尊重する介護は本当に難しい……。

それでも、私は母に「自分はまだできる!」と自信を持って生き生きとした生活を送ってほしい。
好きなことをして「やりがい」を感じてほしい。

これからは母の「できることや」や「りたいこと」に目を向けて、少しでも寄り添っていきたいと思います。

少しでも自信をもって生き生きととした生活が送れるように……。

介護をしている人の多くは、時間に追われ、心に余裕がない状態だと思います。

それでも、子育てと同じように高齢者の中にある「できる」という気持ちを大切にすると、健康維持にもつながり生活の質を向上させるメリットがあります。

その結果、お互いがポジティブな気持ちになれるのです。

「できることを取り戻す魔法の介護」に書かれているような考えや取り組みが、世の中にもっと浸透していけばいいなと思います。



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