[創作]進路はつづくよどこまでも(原案)⑤[最終話]
私が所属する文芸サークルに掲載予定の作品の原案を掲載させていただきます。拙文ですが、どうぞお楽しみください。
進路はつづくよどこまでも
場所
株式会社SAITO 面接室
人物
万丈大輝(ばんじょう だいき)
就活生。 船場大学文学部英文学科四年生。
伊藤
面接官。四十代。
三井
面接官。三十代後半。
リク
ナビサイトの精霊。 見た目は二十歳前後の男性。
マイ
ナビサイトの精霊。 見た目は二十歳前後の女性。
大杉
大卒の新卒エージェント。二十代。
お母さん
万丈の母。五十代。
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三井: お母さまお待ちください。これにご記入をお願いします。
(三井は席を立ち、鞄の中からクリップボードに挟まれた内定承諾書とボールペンを取り出し、お母さんに渡す。)
お母さん: あら、ありがとうございます。うちの大ちゃんをよろしくお願いします。
(お母さんは内定承諾書の保証人の欄に記入を始める。)
伊藤: お母さまはここまで無事に来られましたでしょうか?
お母さん: (微笑んで)ええ。今朝、銀行のATMが先月に続きまたシステム障害で故障しておりまして、お金を引き出せなかったときはどうなる事かと思いましたが、何とか。
伊藤: (含み笑いで) そうですか。それは大変でしたね。
お母さん: ええ。(内定承諾書への記入をしていると、印鑑がないことに気づく。) いけない。ごめんなさい。印鑑を忘れてしまいました。
三井: いえいえ安心してください。ご自宅で記入してもらい、一か月以内にこちらに郵送していただければ問題ありません。
お母さん: そうなのですね。なら安心しました。うちの大ちゃんとよく相談させていただきます。(愛想を振りまく。)
(クリップボードとボールペンを三井に返却し、内定承諾書を携えてお母さん退場。三井はそれらをカバンの中にしまう。)
伊藤: さて、次の方の面接の準備をしよう。
三井: ええ。そうしましょう。
(伊藤は机の上にある資料を、三井は鞄を持ち、二人退場。一部始終を見ていたリクとマイがステージ前に移動し、観客席に向かった状態で会話をし始める。)
リク: (マイに語り掛けて) 万丈さん、内々定を頂くことができて本当に良かったですね。
マイ: うん!ほんと万丈君凄いよね!帰ったらいっぱい褒めてあげなくちゃ!
リク: ええ、是非そうしましょう。
(マイはつるはしをリクに渡す。リクはそれを万丈が座っていた椅子に置き、その場でマイを微笑ましそうに見守る。マイは大杉が退場したシーンで歌った「線路の仕事[せんろはつづくよどこまでも]」の続きを歌い始める。それと同時にステージの明かりが徐々に暗くなり始める。)
マイ: (軽快に) つらい仕事でも しまいには
つらい仕事でも はてが来る
汽笛のひびきがなりわたれば
つるはしをおいて 息絶える
(マイが歌い終わるころにはステージの明かりが完全に消える。)
(幕)
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