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【短編】ガラスの天井
「もしもし」
「やあメラニー」
「パパジョー、お久しぶりね。ご活躍はメディアを通して拝見してますわ。ご家族はお元気?」
「ありがとう。お陰様で、と言いたいところだけれど少し問題があってね。君に相談があるんだ」
少々不穏なセリフとは裏腹に、デスクに深く腰掛けた男の表情は穏やかである。皮膚にハリはなく、痩せた手足をしているが、瞳は澄んで強い光を宿している。少し寂しくなった白髪頭に白い三角耳。老いて
【ショートショート】わたし犬 十四歳
おかあさん、どこに行ったのかな。
昔は良かったな。たくさん食べて、たくさん寝て、たくさん走って。
そう、私も昔はたくさん走ったんだよ。からだの重さなんて無いようなものだった。いくら走っても疲れなんて知らなかった。
今は、すこし食べて、たくさん寝るだけ。なんだか足が動かないんだもの。
そういえば、おかあさんの足だって動かないみたいだった。いつもじゃ無いのだけれど。
ふらふらよろよろ、すわって