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小説

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サクッと読めるSS・短編闇鍋 別名義でステキマガジンにもあげてあります
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記事一覧

【ショートショート】墓穴

 月のない夜。空を飛び回る星があった。
 はじめ楽しそうに。それから興味深げに。段々と混乱したようにブンブンと上空を旋回する。やがて王城の一番高い塔の上にとまり、しばらくすると今度は辺境までひとっ飛び。ぐるりと辺りを一周して、すいっと地上に降り立った。
 闇色の大地はでこぼこと隆起して十字の乱杭が突き出している。墓地だろうか。
 一筋の光となって舞い降りた星は、明滅する蛍みたいにじわりと光を弱める

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【短編】ガラスの天井

「もしもし」
「やあメラニー」
「パパジョー、お久しぶりね。ご活躍はメディアを通して拝見してますわ。ご家族はお元気?」
「ありがとう。お陰様で、と言いたいところだけれど少し問題があってね。君に相談があるんだ」

 少々不穏なセリフとは裏腹に、デスクに深く腰掛けた男の表情は穏やかである。皮膚にハリはなく、痩せた手足をしているが、瞳は澄んで強い光を宿している。少し寂しくなった白髪頭に白い三角耳。老いて

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【ショートショート】拗れ

「ねえ、私の好きなタイプ知りたい?」

 校庭の南に立つ大きなクヌギの木陰。明莉は声を落として、さも重大そうに言った。ざわざわと若葉が風にさざめいている。さくらと由良は、返事をする前に校舎中央の時計を確かめた。
 昼休みもそろそろ終わりの時間だ。由良が気まずそうに明莉を振り返る。

「私、もう行かなきゃ。次、理科室なんだ。ごめんね」
「そっか〜。じゃあね由良ちゃん」

 屈託なく答えるさくら。隣で

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【ショートショート】わたし犬 十四歳

おかあさん、どこに行ったのかな。

昔は良かったな。たくさん食べて、たくさん寝て、たくさん走って。

そう、私も昔はたくさん走ったんだよ。からだの重さなんて無いようなものだった。いくら走っても疲れなんて知らなかった。
今は、すこし食べて、たくさん寝るだけ。なんだか足が動かないんだもの。

そういえば、おかあさんの足だって動かないみたいだった。いつもじゃ無いのだけれど。

ふらふらよろよろ、すわって

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