[詩]「心の棄てる」
棄ててしまおう
不法投棄の
ゴミ箱の中
壊してしまったから
愛していた
思い出のこと
「囚われないで」
声が囁く
「間違いじゃない」
ただ
あの間違いを
肯定するように
今までを棄てて
色の抜けた
裏路地を歩く
「忘れはしないよ」
紫の頸飾を
輝かせて
喪った全てを
丁寧に棄てた
あの日のこと
貴方を
諦めて
自分の心は
粉々になって
今までが
終わって
ふと
前を見た時
何故だろう
空が青色に
見えたんだ
何故だろう
大好きなものは
こんなにも
近かったのに
ずっと側に
いてくれたのに
見逃していた
見えないふりを
繰り返してきた
身に余る幸福を
受け入れずに
踏み出せばよかった
あの瞬間を思う
けれど
それは
簡単に見えて
どうしても
厳しかった
素直に
なるのは
あの人に
向き合うのは
どうしても
怖かった
失うことも
幸せになることも
ただ
身に余る幸福の
対価を支払って
それから幸せに
なりたかった
それだけだった
だから
棄ててしまうよ
苦痛を堪えて
不法投棄の
ゴミ箱の中
鏡の向こう
青い空の下
苦しんだ
思い出の中
紫の花だけを
連れ去った
そう
あの出来事を
忘れないよう
生きるために