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【2023年本屋大賞候補作品 大賞予想&感想】

1年に一度の本屋大賞、今年は明日4月12日に発表予定です。
毎年ハズしちゃっていますが、今年も大賞を予想していきたいと思います!

私の予想


どの作品も良くて、正直全然選べなかったのですが、あえて選ぶなら、
町田そのこさんの『宙ごはん』と、一穂ミチさんの『光のとこにいてね』を推したいと思います!

宙ごはん』は、個人的にも好きな作品だけど、ハマって何度も読みたい人が多そうな作品だから。

そういう意味では、『方舟』や『君のクイズ』『#真相をお話ししします』『爆弾』は、どれも面白くて人に勧めたくなるけれど、一度オチを知ってしまってから読み返すのはちょっと気が進まないかなあと思うので、書店員さんの好みとしては何度も読みたくなる本かな?と予想しています。

光のとこにいてね』は、直木賞も受賞すると思っていたけど違った…ということもあって、是非大賞を獲ってほしいな、という気持ちが強いです。

----------4/12追記----------
今回は、私が3位に予想した、凪良ゆうさんの『汝、星の如く』が大賞受賞されました!
予想はちょっと惜しかった〜。

私が大賞と予想した『宙ごはん』は8位と低めだったのが、めちゃくちゃ意外でした…。
毎年思うのですが、10位まで順位発表しなくても良いんじゃないかなあって。
3位ぐらいまでで良くないですか?なんか下位だと推してるこちらも凹むし。

その次に挙げた『光のとこにいてね』は3位でしたので、これもちょっと惜しかったかな。

そしてこちらも楽しみにしていた、翻訳小説部門賞ですが、1位が『われら闇より天を見る』でした。
こちらは既読作品なので、2位『プリズム』3位『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』を読んでみようかなあ、と思っています。

----------追記ここまで----------

《各作品の感想(受賞予想順)》

◆『宙ごはん』町田そのこ


とても良かったです!最初は、家族の話かなあと思いましたが、家族に限らず色々な人との『料理が繋いだ縁』を描いた物語。
前半は主人公である宙は子どもであるはずなのに、あまりにも精神年齢が高く、いやそんなわけないでしょ…と感じる部分も多々ありましたが、宙が成長していき、たくさんの人と出会って別れも経験し、色々な出来事に悩んで…といった様子を見守っていくうちに、読者としては応援したい気持ちになってきます。
作家さんの登場人物への愛を感じる一冊。
是非、続編かスピンオフを読みたいなと思いました。カバー裏に特別掌編あり。

◆『光のとこにいてね』一穂ミチ


2人の少女が偶然出会い、人生を通じて惹かれ合う物語。
主人公の結珠ちゃんと果遠ちゃん、お互いの視点から交互に語られていくスタイルです。
この2人は、いわばソウルメイトの間柄、というのが一番しっくりくる感じですが、本人達もわかっていない部分があったのだと思います。
作中にもハッキリとは示されていないですし、読者によって様々な受け取り方があるのではないでしょうか。
それぞれの母親の存在も2人の人生に大きく影響を与えていました。
対照的ではあるけれど、どちらかが善というわけではない、そんな母たちの存在が印象に残りました。

◆『汝、星の如く』凪良ゆう


映画になった『流浪の月』は、犯罪加害者と被害者の立場に分かれた男女の知られざる関係性を描いた物語でした。
今作は、瀬戸内の島を舞台に、主人公の暁海と櫂をめぐる、犯罪ではないけれど島中の噂になるような関係性を描きつつ、暁海という1人の女性の生き方にもフォーカスした物語。
周囲の目というものを島という場所を使ってよく表現しているなと思いました。
『勝手にひどい親だとかかわいそうな子供だとか、他人が決めつけてどうこう言う権利なんてない』本当にその通りなんだけど、それが世の中。
櫂という男の絶妙なダメさが光っていました。

◆『君のクイズ』小川哲


この世界で僕たちが出題されるクイズのほとんどには答えが用意されていないー競技クイズというスポーツにも似た世界に身を置く主人公、三島玲央は、ライバル本庄絆との戦いを振り返り、そして伝説の『ゼロ文字押し』はどうして成り立ったのかという謎を解き明かすことで、彼のクイズ人生をひとつ進めていく…そんな物語でした。
大長編の直木賞受賞作『地図と拳』とはまったく方向性が違い、内容的にも気軽に読める一冊です。
競技クイズの世界の裏側、クイズ作問の仕組みなど、この小説を読まなければ知る由もなかった事が知れて面白かったです。

◆『月の立つ林で』青山美智子


『月』をテーマにした五篇の連作短編集。
青山美智子さんのいつもどおりの『登場人物たちへの愛』が感じられる一冊でした。
両親の離婚で別れた母と子、嫁と姑、婿と舅、解散した漫才コンビ、恋が始まりそうな高校生などなど、様々な関係性があり、それぞれに悩みがあるけれど、月というモチーフに勇気づけられ、背中を押されて前に進んでいく様が描かれています。
色々な形の月の中でも特に新月がクローズアップされているのは意外でしたが、新月の意味や捉え方などが作品全体で扱われていて、興味深いです。
どう見えてもずっと丸いんですね、月は。

◆『川のほとりに立つ者は』寺地はるな


自分と少しでも関わりのある人、自分の大切な人、様々な人にある『その人にしかわからない、その人の事情』。
それらをどれぐらい推しはかれるか、推しはかった上で、どれぐらい思いやった行動を取れるのか。そんな自分への問いかけが心に残る作品でした。
私は小説をたくさん読んでいる分、人それぞれの事情を想像することは得意な方かもしれないけれど、果たして何かの行動に移すことは出来ていないと思うので、そのことについて考え込んでしまいました。
物語の題材として、恋愛なのか友情なのか、ハッキリさせないところが、時代だなと感じました。

◆『#真相をお話しします』結城真一郎


面白かったです!短編集なのですが、各話とも、前半では主人公が感じる違和感が散りばめられ、後半で謎解きがあってスッキリ、という展開が共通項でした。
私は最初の『惨者面談』が一番面白いと思いましたが、どの作品も現代ならではの設定だったり社会問題になるような題材が絡んでいたりと、新感覚のミステリーという感じでした。
たいして推理力のない私は、騙されまくりで、『そういうことか〜!』の連続でした。
すべて男性目線の作品ばかりだったので(こどももいましたが…)、今度はぜひとも女性目線の作品も読んでみたいなあ、と思います。

◆『爆弾』呉勝浩


都内で突然始まった連続爆破テロ。犯人と思われるスズキタゴサクなる人物は、故意に警察に捕まることで刑事と対峙し、心理戦を繰り広げていく…果たして次の爆破テロは防げるのか、爆弾はどこにあるのか?という物語です。
凄いのは、犯人が警察署の中にいながらにして事件がどんどん進んでいくところで、人の欲望を見抜けるというスズキの語りがとにかく素晴らしく、ぐいぐい読ませてくれます。
最初に登場する女子大生の存在が謎だったのと、もっと深掘りして欲しいキャラクターが何人かいたのが惜しい感じがしましたが、夢中になれる作品でした。

◆『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒


まずタイトルの響きが素敵です。
『ラブカ』の意味は序盤に紹介され、適度に凝っていて良いと思いました。主人公は少しトラウマを抱えてメンタル弱めの青年ということで、全体的に心の内面を探りつつ物語が進んでいく繊細な文章です。
安壇美緒さんというペンネーム(本名かもですが)も綺麗な響きだし、この方の書く日本語は読み易くて好みだなと思いました。
ちょっと惜しいなあと思ったのが、発表会でのチェロの演奏シーンがいくつかあるのですが、その描写がアッサリし過ぎていた事でしょうか。
演奏中の心の動きも詳しく知りたかったなと思います。

◆『方舟』夕木春央


山奥にある地下建築に閉じ込められた10人。助かるには1人が犠牲になるしかなく…というストーリー。
誰がその犠牲者となるべきなのか?トロッコ問題みたいな難題に悩まされる登場人物たちと読者。次々と不可解な事件が起こります。
そしてまさに衝撃のラスト!面白かったです。
欲を言えば、登場人物同士の関係性がもっと密だったら良かったなと思いました。一応、夫婦は一組出てきますし、3人家族もいましたが…。
無関係と思いきや実は親子だったとか、元婚約者だったとか、そういうドラマがあってドロドロしたとしたら、もっと盛り上がったかも。

以上、各作品を読んだ感想でした。
本当に全部面白かったし、どれが大賞でも不思議じゃないなと思ってしまいました。
ノミネート作品どれもおすすめです。気になった作品があったら、是非読んでみてください!

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