演奏会で緊張していた
大人になってから吹奏楽を再開したが、最初の頃の演奏会ではとても緊張していた。
でもそれも昔の話。
今ではほとんど緊張しなくなった。
結局は場慣れなのかもしれない。
緊張していた最初の頃
最初の頃は、何もなくとも演奏会が始まるときに緊張していた。
私がよほど大雑把なキャラに見えるのか、「緊張しなさそうだよね」と言われていたが、実は気が小さく緊張をしていた。
指揮者がカツカツと靴を鳴らして入場してきて、一礼。
お客さんが拍手をしてくれる。
まだ場が温まってないときの拍手。
まぶしい舞台のライト。
いつもとちょっと違う配置で、みんなの見え方も違う。緊張感が漂う舞台。
お客さんはうっすら見える。
あまりお客さんを見ると緊張しそうなので、目を逸らす。
ドキドキ、としているのがわかる。
指揮者が予想より早く構え、いきなり曲が始まる。
自分のことで精一杯で、指揮者や周りを見る余裕もない感じ。
音の聞こえ方もいつもの練習と違うので戸惑う。
頭が真っ白、みたいなのに近い。
なのに、楽譜を追い、ほぼ無意識状態で演奏はしている。
いつも間違えたことのないところでミスをする。
休みの小節を数えるのに、途中でわからなくなり、結局入れなかったりする。
曲の中盤くらいで少しこの状況に慣れる。
必死で楽譜を追う。
いつのまにか曲の終盤。
そして終わる。
終わってみたらあっという間だったな、と思う。ミスしたところを悔やむ。
混乱と動揺の中、またすぐ次の曲が始まる。
緊張しない方法
私は、いい歳をして緊張するなんて恥ずかしいと思った。
なので、自分を落ち着かせようと、まるで緊張していないように装ってみた。
周りを見回してみたら、緊張でガチガチになっている人がいた。
その人は私より後に入団した男性で、真面目な性格の団員だ。
見るからに緊張していたので、「あんなに緊張しなくてもいいのに。」とちょっと可笑しくなった。
自分の緊張が少し解けた。
自分より緊張している人を見つけたら、自分の緊張が少しほぐれた!と思い、これはちょっと大発見だな、と思った。
ジャガイモ
ネットで緊張しない方法を調べたこともあった。
その中で「観客をジャガイモと思え」というようなものがあった。
人から見られてるとかではなく、物だと思えばいい、というような。
私は一度、それを実行したことがあった。
舞台上で「ジャガイモ、ジャガイモ」と思っていた。
なんとも馬鹿げているが、当時は真剣だった。
これは個人的にはあまり効果がなかったと思う。
ジャガイモとはいえ、お客さんを意識していたからかもしれない。
お客さんを無視する
その後、私は「お客さんを無視する」という方法に辿りついた。
演奏を聞いている唯一の聴衆は自分で、自分が満足する演奏をする、みたいな意識だ。
お客さんの反応は関係なく、自分のための演奏。
この方法は、私にとってはとても効果があった。
演奏会本番も、いつもの練習場所での練習もあまり変わらないみたいになった。
お客さんを意識しない、というのがポイントなのかもしれない。
そして場慣れをしていく
緊張していたときは、周りを見る余裕もなかった。
なので、演奏が終わって、仲間から「あのときの指揮、間違えてたよねぇ?」とか「テンポ早すぎなかった?」と言われても、全くわからなかった。
私は今では演奏会では緊張しないのだけど、それはひとえに経験を積んだからだと思う。
場慣れ、がやはり大きいのだと思う。
そうすると、やはり緊張しなくなるまでに、たくさんの本番の舞台に乗ることが必要となる。
いくら緊張しない方法を試しても、緊張しなくなるのには時間がかかるのかもしれない。
そして今
今は演奏会では緊張しない。
よほどの大役があれば別だが、そんなものはない。
舞台に乗る。
指揮者が来るまで隣の人とくだらないおしゃべりをしてクスクスと笑う。
ちょっと本番でテンションが上がっているのかもしれない。
おしゃべりしても、お客さんには聞こえない。
指揮者が靴を鳴らして入場してくる。
今日の指揮者はいつもと違う衣装だなぁ、とか
考えてみれば指揮者も団員なのに、1人だけ違う衣装なんてちょっとずるいよね、とか
緊張してそうだなぁ、指揮者も緊張するのだな、とか
指揮者の様子を観察する余裕がある。
舞台をゆっくり見渡して、みんな準備できているかなぁ、と確認したりする。
指揮者が棒を振り始める。
え、ちょっとテンポ早くない?
いや、私は前からこれくらい早いのがいいと思っていたからいいけど、木管の人たちはついていけるのかなぁ
などと思う余裕もある。
この部分はこうなんだよね、と想定どおりの演奏ができたりもする。
今、指揮者ちょっとあのパートに強めに指示していたけど、気づかなかったよね?などと他人を心配したりもする。
最初を思うとものすごい成長だ。
喜ばしいことだ。
でも、初々しい気持ちがなくなってしまったことにちょっぴり寂しくもある気がする。