富山大・慈恵医大・京大、パーキンソン病の新しい発症メカニズムを発見
概要
富山大学 薬学部薬物生理学研究室の藤井拓人助教、酒井秀紀教授、同 生命科学先端研究ユニットの田渕圭章教授、同 医学部消化器・腫瘍・総合外科(第二外科)の藤井努教授、奥村知之講師、東京慈恵会医科大学の永森收志准教授、ウィリヤサムクン パッタマ講師、京都大学の竹島浩教授らの国内共同研究グループは、パーキンソン病の病因分子の一つである「PARK9(※1)」が、水素イオンとカリウムイオンを輸送するタンパク質であることを発見しました。パーキンソン病患者の脳には、「α-シヌクレイン(※2)」と呼ばれる病原(変性)タンパク質の異常な凝集体が「ゴミ」のように蓄積しており、運動に関わるドパミン神経細胞(※3)が死に至ると考えられています。
藤井、酒井らの研究グループは、PARK9による水素イオンとカリウムイオンの輸送機能が阻害されると、α-シヌクレインの処理(分解)機能が低下し、細胞内にα-シヌクレインの異常な蓄積が引き起こされるという新しいパーキンソン病発症メカニズムを明らかにしました。本成果は、パーキンソン病の病態理解や治療方法の解明に新たな道を開くものと期待されます。
この成果についてと今後の課題についての考察
パーキンソン病の治療法を探る上で、非常に重要な発見であると言えます。従来、α-シヌクレインの異常な蓄積がパーキンソン病発症の原因とされてきましたが、そのメカニズムが具体的にどのように進行するかは不明でした。本研究により、PARK9がα-シヌクレインの分解機能に関与していることが明らかになり、治療法の開発に向けた新たなアプローチが期待されます。
しかしながら、今後の課題としては、PARK9による水素イオンとカリウムイオンの輸送機能の詳細な解明が挙げられます。さらに、α-シヌクレインの異常な蓄積が引き起こされるメカニズムには、他にも複数の要因が関与していることが考えられるため、それらの解明も必要です。
また、本研究においては、パーキンソン病患者の脳におけるα-シヌクレインの異常な蓄積についての調査は行われておらず、その点についての研究も必要とされます。
さらに、今回の研究は細胞レベルでの検証に留まっており、実際のパーキンソン病患者の脳内での検証が必要です。そのためには、治験に基づいた臨床研究が必要であり、今後の課題として取り組まれる必要があります。
総じて、この成果はパーキンソン病治療に大きな意義を持つものであると言えますが、そのメカニズムや治療法についての解明には、今後も多くの課題が残されています。