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施設長の本当の仕事とは?現場ヘルプに隠れた本当の責任

介護事業所はどこも人が足りずにアップアップ。
管理者自ら現場に入って、職員と一緒に汗を流すことも珍しくはありません。

「うちの施設長は自ら現場に入って私たちの仕事を助けてくれるので、すごく頼りがいのある施設長です」という職員からの高評価も励みになります。

でも、管理職の仕事って現場のフォローでしたっけ?たぶん違うよね。フォロー“も”するけど、それ以上にやるべきことがあることを忘れないようにしましょう。というお話です。

マネジャーは人を介して成果を出す

施設長や管理者に求められるのは「個人の結果を出すこと」ではなく、「組織として結果を出すこと」です。
介護事業では現場の対応が即座に求められるため、自分で動く方が手っ取り早いと感じる場面も多々あります。
でも、現場に入る時間が増えるほど、職員への指導や目標設定、業務改善といった「組織全体を動かす仕事」に割ける時間が失われていきます。

マネジャーの本質は、「人を介して成果を出すこと」です。現場で困難が発生した場合、対応そのものを行うのではなく、「誰がどのように対応できるか」を考え、采配することが求められます。

ヘルプは感謝される

人が足りないからと管理職自ら現場に入り、手を貸すと、職員から感謝されます。そして、その感謝の言葉にやりがいや充実感を感じます。
しかし、この「感謝される」には、思わぬ落とし穴があります。

職員が「困ったら施設長が助けてくれる」と思い始めると、職員の自主性が失われたり、職員自身の成長の機会を奪うことにもなりかねません。
ヘルプは短期的には効果がありますが、そればかりでは組織全体の成長を阻害してしまうのです。

僕の場合、慢性的な人材不足によるシフトの穴埋めには、原則として自分を当てがわないようにしています。
その代わり、救急搬送や夜間の呼び出しなど、突発的な対応で、現場に対応できる人がいない場合は、自ら積極的に対応しています。

ヘルプをしている間に「やらなかったこと」

現場をヘルプしている間に“やらなかった”管理職としての「本来やるべき仕事」は何だったでしょうか?

例えば、
人員配置の見直し
人材確保のための計画やその実行
職員との面談
職員のスキルアップのための研修
中長期の事業計画の作成
トラブル・クレーム対応

管理職が現場に入る頻度が増えると、こうした管理職ではなければできない重要な業務が後回しになり、結果的に組織全体の問題がさらに悪化してしまいます。

ヘルプはいつまでも終わらない

管理職として人員不足を招いている根本原因に真正面から取り組まない限り、人手不足は永遠に続きます。
現場を助けることが日常化してしまうと、それが当たり前の状態となり、いつまでも「ヘルプをし続ける管理職」から抜け出せません。

これでは、職員も管理職自身も疲弊してしまいます。そして最悪の場合、管理職自身がバーンアウトしてしまう可能性さえもあります。

実際に、管理職になり現場のヘルプに入ることが増えて、休日返上の長時間労働が常態化、心身に不調をきたし、休職や退職に追い込まれたという人は、僕のまわりにもいます。

職場の伝統、あるいは経営者からの指示として「人員不足分は管理職が補うもの」となっている事業所もあるという話も耳にします。
そういう事業所では、管理職だけでなく、経営者にもこの記事を読んでもらいたいものです。

マネジャーの責任を果たす

管理職の責任は、「現場を助けること」ではなく、「組織を最適な状態に保つこと」です。
それは以下のような行動に現れます:

・問題の根本原因を特定し、解決策を講じる
・職員がスムーズに業務を遂行できる環境を整備する
・目標達成に向けた計画を立て、組織全体を動かす

現場で直接的な貢献をするのではなく、職員が自律的に動ける仕組みを構築することが、管理職の大切な役割です。

目の前の感謝より、組織の目的目標達成

職員からの感謝の言葉は励みになりますが、それだけに満足してはいけません。
組織の目的や目標の達成を最優先に考え、それに向けて行動することが、管理職としての本分です。

たとえば、職員が「手が足りない」と言ったときには、
・新たな人材採用の方法を考える
・業務を効率化する仕組みを作る
といった、根本的な解決策に取り組むことが管理職の役割です。

このような管理職にしかできない仕事は、現場職員の目に触れることが少なく、すぐに効果が現れるわけでもないため、職員からは「管理職は現場に入らずに楽をしている」と誤解されることもあります。
一緒に汗を流して作業をしている方が、今ある仕事をしているように見えるからです。

「管理職は何もしてない」という誤解を防ぐために、僕が意識的に実践しているのが、自分の仕事をオープンにすることです。

たとえば、採用面接の予定を朝礼で共有したり、面接の結果、採用を見合わせる判断をしたことをリーダーと共有したりします。
現場のみんなには苦労をかけているが、こっちはこっちで管理職にしかできないアプローチで根本解決に取り組んでいるから、お互いにがんばろうということを繰り返し伝えます。

それが伝わり、問題が解決しはじめると、はじめは「現場に入ってくれない」と不満をもっていた職員たちも徐々に、管理職は管理職なりに現場の問題を認識して、改善に向けて動いてくれているようだ。と分かってくれます。

これが「ヘルプに入ってくれてありがとう」を超えた“信頼関係”です。

ときにはヘルプもOK

もちろん、管理職が現場に入ることが絶対に悪いわけではありません。

緊急時や災害時などの一時的な人員不足への対応として現場に入ることは、組織の安定に寄与します。

たまに現場に入ると、職員との連帯感が生まれたり、惰性で継続していた無駄な作業に気づいたり、手順の改善点を見つけたりすることもあります。
管理職は一般社員よりも高い賃金をもらっているのですから、単なる代替要因ではなく、仕事をさらによくする視点をもって、入ります。

ただし、繰り返しになりますが、それはあくまで「一時的な対応」であり、常態化させないことが大切です。

管理職が現場に入り、職員を助けることは時に必要ですが、それが仕事の中心になると、組織は衰退します。

「マネジャーは人を介して成果を出す」
この本質を忘れず、職員が自律的に動ける組織作りを目指してください。

一時的なの感謝の言葉に満足せず、長期的な目標達成を見据えて行動することで、事業所全体の成長を実現できるはずです。


めでたしめでたし

立崎直樹

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立崎直樹@めでたし〃
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