Happierインタビュー:やさしさとアクティビズム 齊藤由香さん#1
プロフィール
京都出身、バークレー在住。アクティビスト・翻訳家・ワークショップファシリテーター。翻訳書現在は日本およびアメリカで環境運動・女性のエンパワメントに積極的に関わるとともに、関連書籍および映像の日本語翻訳を行う。2011年より米国の仏教哲学者・社会活動家であるジョアンナ・メイシーに師事し、2014年以降彼女が生んだ「つながりを取り戻すワーク」のワークショップを日本で開催。社会や世界の痛みに対する気づきと行動をうながし、新しい世界観や価値観にもとづいたコミュニティ作りを目指している。書籍翻訳に『センサリーアウェアネス:つながりに目覚めるワーク』(ビイングネットプレス)『カミング・バック・トゥ・ライフ:生命への回帰』(サンガ)。映像翻訳に『ジョアンナ・メイシー&グレート・ターニング』『プラネタリー』『ジャーニー・オブ・ザ・ユニバース(仮題)』がある。また英語では『A Wild Love for the World』(Shambhala)、Deep Time Journal (2017.May)にエッセイが収載されている。
日本では薬剤師として勤務、そこで気になった現象
もともとは薬学部を出て京都で薬剤師として大学病院や調剤薬局で仕事をしていました。薬学の専門知識を活かしながら、いろんな症状の人が曜日ごとに変わる外来の患者さんをみてきて、次第に「この曜日、ちょっと気になる」と心に引っかかりを感じるようになってきたのが精神科と婦人科の患者さん達とその投薬方針でした。当時、更年期の一般的な治療法は低用量の女性ホルモンを服用することだったが、通常ホルモンが安定する60歳になってもずっと同じ薬を処方されている人がいる現実。そんな中で、本当の意味での“治癒”を問い続けた日々だった。以前は病院とは病気の時だけ行き、治ったら行かない、というイメージを持っていたが、実際に働いてみた現実はその逆だった。婦人科・精神科の両ケースに関係しているのは「心のしんどさ」「生き辛さ」と気付いた結果、自然体で健康に生きること・人の全体を診ることを学ぶ為に立命館大学院大学に進むことにしました。
人を癒す、から地球を癒す、にライフシフトしたきっかけ
心理学と哲学を専攻、そこで出逢ったのが「ソマティック」とそれを教えていた指導教官、村川治彦先生(ハルさん、現関西大学人間健康学部教授)。彼がサンフランシスコにあるCIIS(カリフォルニア統合学研究所)の卒業生だったことで、CIISへの留学機会に繋がっています。ハルさんがカリフォルニアから日本に戻り、立命館大学で教え始めたときに出逢い、彼を通じて現在日本での活動を共にしている東京工業大学の中野民夫さんとも繋がっている。ハルさんの影響から “センサリーアウェアネス”という概念を学んだ。これは、いま座っている体重がどこに向かっているか、足の裏を感じる、等自分の感覚に徹底的に注意を向ける学問。これはヴィパッサナの考えにも通じる。これを徹底して練習していく中で、落ち着き、いまここ、グラウンディングを感じる。その結果としてセラピー効果も生まれると言われています。
*注1:ソマティックとは
「soma=生き生きとしたカラダ」が語源。心身の統合に関する領域のひとつ、言葉のみではなく、相手に触れたり、身体を動かしたり、身体の感覚に注目しながら人の根幹から癒す。身体へのアプローチから心を癒し、また、心の改善から身体の改善を促していくのが特徴。
*注2:CIIS(California Institute of Integral Studiesの略)ユニークな高度教育機関、統合教育のさきがけ https://www.ciis.edu/
注3:センサリーアウェアネス(Sensory Awareness)とは
体験・実験・実践を通して感じ・気づくことを大事にする方法。感覚を鋭敏にすることで今まで疑いもしなかったこと、生きていくうちに知らずのうちに身に付けてきた「条件付け」に気付くという考え方。
注4:ヴィパッサナ(Vipassana)とは
瞑想法のひとつ、仏教を根幹とするが「瞑想」のみに特化した方法。カリフォルニアや日本にもヴィパッサナ瞑想10日間コースが開催されている。