H a p p a n o U p d a t e s - No.265
□【新世代作家が描く小説のいま】From Africa!!!
アフリカ短編小説集 もくじ 巻頭エッセイ(ニイ・パークス)
Summer break essays and more …
・予想外だったケイン賞 エフェミア・チェラ(ザンビア/ガーナ)
・私たちの物語は悲劇ばかりじゃない ドリーン・バインガナ(ウガンダ)
・ヒルトップ・カフェでコーヒーを マーティン・エグブレウォグベ(ガーナ)
8月は夏休み特別版として、二つのエッセイと超短編小説一つの計三つの作品を公開しました。
エフェミア・チェラのエッセイは、彼女が、アフリカの文芸作品に与えられるケイン賞の最終候補になったときの思い出についてです。受賞は逃したものの、その後に起きた貴重な体験が、作家としてどう生きていくかの大きなヒントになったと書いています。
ドリーン・バインガナのエッセイは、イギリスのガーディアン紙のために書かれたもので、「アフリカ」というものに対する他の国々(主として西欧諸国)の受け止め方があまりに狭く、一つの見方に集中していることを嘆いています。アフリカの多様性を複雑さもっと見てほしい、作家として、それを小説の中で表していきたいと考えているそうです。
マーティン・エグブレウォグベの小説はごく短い作品ですが、読んだあと、あとを引くものがあると思いました。それは主として、小説の中で「書かれていないもの」によって引き起こされています。場所や登場人物の説明が最小限に抑えられ、アフリカの物語かどうかも不明、しかし描かれる情景や心理はとてもクリアでリアルです。
□ 最近思ったこと、考えたこと(happano journal)
08.15/24 小説の中の結合双生児:直近の芥川賞作品から江戸川乱歩まで
08.29/24 ChatGPTに聞いてみた。なぜ日本の(一部)出版社は電子本の最適化をしないの? 例:文學界 vs. 文藝。
芥川賞の作品に、結合双生児の話が選ばれたことで、結合双生児についての知識や興味が一般に広まったり、深まったりしたかもしれません。(あ、パラリンピック、彼らの場合、一人だけが一人として出場できるのかな?)
文芸作品のテーマというのは、このようにして社会的に即時性をもつことがあり得るのだな、と。もう一つの受賞作品『バリ山行』も読みましたが、こちらにも普通とは違う山の歩き方がある、ということを広めたことで同様の意味合いがあります。わたしはこれを読んだことで、登山(中でも低山の)とは何かということに初めて気づきました。
□ お知らせ:たにこのみ「やわらかい庭」展
昨年出版の『小さなラヴェルの小さな物語』で絵を描いてくれた、たにこのみさんが、東京文京区にある現代アートのギャラリーで個展を開いています。「庭をつくるようにして」描かれた花々や草木、生きものたちの輝かしくパンチのある、そしてやわらかな「たにこのみワールド」が堪能できそうです。
2024年8月21日(水)〜9月22日(日)
午後1時〜7時(休廊:月・火)
ヒロマート・ギャラリー
〒112-0014 東京都文京区関口1丁目30-7三村ビル1階
03-6233-9836
Web Press 葉っぱの坑夫/エディター大黒和恵/editor@happano.org