見出し画像

ここは迷路か地の果てか? Unlimited洋書探しの旅

Kindle Unlimitedの「2ヶ月間99円キャンペーン」を始めて2ヶ月目に入りました。感想は、、、というとそれなりに使える、が、読みたい本探しが大変、というところでしょうか。
*タイトル画像:ヒリガイノン語の絵本(左)、1950年のチャーリー・ブラウン第1巻(詳細は本文で)

Unlimitedで自分の好みに合う本、ぜひとも読みたいと思わせられる本、ヘェーこんな本が世の中にあるんだという本と、どうやったら出会えるのか。探し方がまだいまいちわかってない。いろいろやってみたけれど(Kindleストアで「読み放題」にチェックを入れる、出版社名や著者名を入れてみる、などなど)、うまくヒットしません。というか該当なしの場合が多く、関係ない本がズラズラ出てくるとか、やたらコミックが並ぶとか、有料の本しか出てこないとか。キーワードの入れ方が適切でないのか?

洋書も同様の感じだったので、思いついてamazon.comに行ってみました。こちらにもアカウントをもっているので。しかし「自分の国にこのサービスがあるか見よ。そこでUnlimitedを使ってくれ」というアテンションです。

洋書で好みの本を見つけるのは日本語の本以上にハードルが高そう。が、検索というのは面白いところがあって、スペルの間違いから、思わぬ本が出てくることがあります。ジュンパ・ラヒリの本はあるかな、と思って検索窓に「Lahili」(正しい綴りは「Lahiri」)と入れたところ、なんだかわからない本が出てきました。んんん? 「Hiligaynon English Dictionary」、ヒリガイノンって何? どこ? どうしてこんなものが出てきたかというと、Lahili このヒリの部分を拾ったのでしょう。調べたところ、フィリピンの島で話されている言葉のようでした。ウィキペディアによると700万人の母語話者がいるとか。

ヒリガイノン語が話されている地域(Roel Balingit: CC BY-SA 3.0)

ヒリガイノン語に縁はないけれど、こんなことでもなければ出会わない言語だと思い、ライブラリに追加。DLして本を開いてみると、該当する島々の地図がまずあって、ページをめくるといきなり「ában」と出てきます。どうやら本文に突入のようです。普通ならあるはずのこの言語についての紹介文も目次、索引もなく、著者 or 監修者名すらなし、そして3111ページ! 
(アマゾンの販売ページには「Ilonggo Community(著)」とありました。イロンゴというこの言葉を話す民族のようです)

こんな大部の本は初めて、これだけでも(出会い方をふくめ)、DLの価値ありかも? ちなみに「ában」の意味は「終える、連れ去る、取り外す(はた織り機から)」。この辞書は例文付きなのですが、「すぐに布をはた織り機から外しなさい」「川が大地を洗い流した」など多数の文例あり。はた織り機は例文に何回も出てくるので、生活に密着した道具なのかも。などと見ていると、ヒリガイノン文化に少し興味がわいてきます。最終ページは「ýuyum」で終わり。この言葉の意味は「嬉しくなる、おいしい、素敵、美しい」etc.

ここからUnlimited期限終了まで、1日1語学んでみるとか?

マイナー言語といえば、ナイジェリアなどで話されているヨルバ語(といっても2000万人の話者がいる)の「ヨルバ語←→英語辞典」を紙の本で持っているのですが、それも700ページ近くある分厚い本です。使う機会はほぼないです。たまに浅漬けをつくるとき、重しにちょうどいいので乗せていますが。

さて、この「Lahili」違いで出てきた本に、もう1冊、興味を惹かれたものがありました。タイトルは『Umberkhed: No one is safe』で、英語版とあります。「ウンバルケドの森で若い男の死体が見つかった」とあるので小説のようです。著者はMaithili Potadarという女性の作家です。あ、わかった、Maithiliのhiliに引っかかったんだ!

『Umberkhed: No one is safe』の表紙

ネットでUmberkhedを検索してみたら、マハーラーシュトラ州の土地の名前とあり、この州はインド西部にありました。インドだったんですね。言語の欄を見ると、「Marathi and Hindi, Ahirani And Bhili」とあって、ここにもhiliがありました。Bhiliの読みはビーリーのようです。そうか、ジュンパ・ラヒリはインド系の作家、綴りは違うけれど音的には「hili」はインドの人名や言語名と関係が深いとわかりました。

ウンバルケド村(マハーラーシュトラ州))by Google Map

Unlimitedで洋書を探している理由の一つに、あまり有名でない、一般に知られていない作家と出会えないかな、ということがありました。その意味で、このMaithili Potadarさんは条件に合っています。調べたところ、この本がデビュー作で、他に2作出版しているようです。amazon.comの著者紹介では現在30代半ばで、20代初期にインドからアメリカにやってきた移民で、弁護士から作家へ転身したとありました。他の2冊もUnlimitedになっていたので、どれを読むか、検討の価値はありそうです。

インド人作家で思い出しました。現在、もう一人、インドの作家の本がライブラリに入れてあります。Unlimitedで洋書を探していたときに、当てずっぽうに「literature」「Indian」といったワードを入れたら出て来たのです。本のタイトルは『The Candid Life of Meena Dave』、著者はNamrata Patelさん、こちらも女性の作家です。フォトジャーナリストで流浪者(家なし、家族なしの女性)の主人公が、突然、ボストンはバックベイにあるビクトリア時代のアパートを相続して…..というお話のよう。アマゾンのレビューが20000近くありました。

『The Candid Life of Meena Dave』表紙

この作家もインドからの移民のようで、小説の前に置かれた「Author's Note」には、1790年頃にはもう始まっていたインド人のアメリカ移住の話(東インド会社による使用人の"輸出"や機会を求めて国を離れた人々など)がありました。小説の前置きにこういうテキストを置くところに、興味をもちました。エンタメ系というより、文学系の人なのか。

ちょっとしたスペル違いと、Indianというキーワードで出会った、二人のインド出自の作家。インド系の英語作家は多いと思うので、他にもまだ見つけられそう。それ以外でも、今後、Vietnamese、Pakistani、Nigerian、あるいはimmigrant…..などのワードを入れて探せば、まだまだ面白い出会いがあるやも知れず。

ところで、さきほどのヒリガイノン語ですが、英語とバイリンガルの絵本がありました。Unlimitedでです。ヘェー! タイトルは『Am I Small? Ka gamay sa akon?』、著者はフィリップ・ウィンターバーグというドイツ人。オリジナルは英語なのか、ドイツ語なのか。日本語を含め、200の言語に訳されているみたいで、全てUnlimitedのようです。この絵本と、ヒリガイノン語の辞書を組み合わせて読んでみる、というのはどうだろう。

そういえば、日本語の本で、『音とことばのふしぎな世界』(川原繁人著)という本を、先日ライブラリに入れました。岩波にはUnlimited本がわりとあって、これは「岩波科学ライブラリー」のシリーズです。この本は、世界の言語を音声学的に探索した本のようなので、もしかしたらヒリガイノン語をさまようときに、何か役立つことがあるかも、と。まだ「かも」の段階ですが。

Unlimitedというのは、このような「かも」の段階の本を、あれこれ見るのには利用価値がありそうです。「購入」というハードルの前では、まったく心が動かないものも、借りる、ちょっと覗く、であれば、好奇心がふくらむことはあります。この「借りる」という言葉、アマゾンもUnlimitedのプログラムで使っています。

ある本を「読み放題で読む」にしようとしたら、ページ下から「現在、借りているタイトル数が上限に達しています」という表示が出てきました。1冊返せば、新しい本が借りられます。借りる、返却する、と図書館の感覚です。ちなみに上限冊数は20冊。わたしはここのところ、出し入れが結構ありますが、まあ充分な冊数ではないかと思います。

普段、本を選んだり、買ったりするときというのは、自分では気づいていないけれど、ある決まったラインにしっかり収まっていて、とんでもないところに行ったり、偶然に出会ったりが案外少ないのかもしれません。きまった領域の内側をぐるぐるまわっているような。情報を得る方法が、だいたいある傾向に沿っているということがあるし。

そういえばKindleストアで洋書を探しはじめた最初の頃に、ベストセラーのラベル付きで『The Complete Peanuts Vol. 1: 1950-1952』というのが出てきて、とりあえずライブラリに入れてみました。Vol.1のみがUnlimitedです。チャーリー・ブラウンとスヌーピーの超有名なコミックです。『ピーナッツ』に登場するキャラクターは、アメリカで1948年にはじめて登場したようです。しかしそのときは『Li'l Folks』というタイトルの漫画だったみたいで。

著者のチャールズ・シュルツ氏
『The Complete Peanuts Vol. 1: 1950-1952』より

コミックなので、これはKindle FireにDLしました。ページを開くと、まずカラーの扉ページ、つづいて誰もいない草地の絵が出てきます。↓

『The Complete Peanuts Vol. 1: 1950-1952』より

そして数ページに渡るイントロダクションがあり、そのあと、本文(漫画)がはじまる前に、こんな絵が置かれています。

『The Complete Peanuts Vol. 1: 1950-1952』より

漫画の中身を予感させる、いい感じのはじまりだな、と思いました。言葉がない、主人公もスヌーピーもいない、その「ない」ところに、何か伝わるものがあります。

中身の漫画もなかなか良いです。まず絵がとても上手いと思いました。すごくシンプルな線で描かれたモノクロの4コマ漫画で、ものによっては言葉がまったくないものもあります。子どもの世界を描いたものですが、もう子どもじゃない人間にとっても….いや、アメリカでは新聞連載だったようなので大人のための漫画なのでしょうか?

主人公のチャーリー・ブラウンは、Wikipediaによると「愛すべき敗者」のキャラクターで、女の子たちからいじめられたりします。著者のシュルツによると、チャーリーは「きれいな金髪であるために髪が薄く見えるだけで、禿頭ではない」そうで、髪が濡れているときは実線で描かれている、とウィキペディアにはありました。見てみたい!

この本、Unlimitedでなく購入した場合は2684円です。Vol.2以降もほぼそれくらいの値段でした。全32巻です。紙の本(ハードカバー)はもっと高いです。ふふ〜ん、Vol.1だけでも終わりまで読んでみようっかな。チャーリーの髪が濡れているときの絵も、見てみたい気がするし。。。

そういえば昔、『いまどきのこども』『シニカル・ヒステリー・アワー』という玖保キリコのシリーズ漫画があって、あれってチャーリー・ブラウンの日本版だったのだろうか? 愛読書でしたけど。

コミックはほとんど読まないのですが、Unlimitedなら試しにという気分はあります。あ、1つだけ、『極主夫道』というのをUnlimitedで読みました。5巻まではUnlimitedで読めるみたいです。(コミックはこれ式が多いですね)

まだ残り3週間はあるので、さらなる探索をつづけます。期限が切れてから通常料金で契約する可能性は? もしかしたら1ヶ月くらいならあるかも。読みはじめた本が読み終わってない、といった理由で。

最初のほうで書いたウンバルケド村の殺人事件の小説、読みはじめていてほぼ半分まできました。文体はややエンタメ系に近いかな、でもインドの人々の生活や人間関係、家庭環境などがわかり、読みつづけたい気分になっています。

About the quotation of the images:
I believe the images in this article are used within the copyright law and personal rights. But if any should not be displayed here, let us know, so we will remove it immediately. Or if any need credits, tell us and they will be added. (Kazue Daikoku: editor@happano.org)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?