祖母との思い出
わが子の性別がわかるようになってから、自分の小さいころのことをよく思い出すようになった。
中でも思い出深いのが、祖母とのお出かけだ。
祖母は今でも健在だが、よく私たち姉妹を散歩に連れて行ってくれた。
私の実家は、徒歩1分で海、という立地にある。
春の木漏れ日さす松林を潜り抜け、堤防の続く高台の広場によく連れて行ってくれた。
広場にはつくしやよもぎがたくさん生えており、
それらをスーパーの袋いっぱいに持ち帰り、台所でよくおやつを作った。
つくしのきんぴら
つくしの頭はそのまま、節についている笠の部分を取り、お砂糖と醤油で炒めてくれた。
つくしは灰汁が強く、すぐに手が真っ黒になる。
祖母と向かい合い、無心で笠をとったことを思い出す。
よもぎだんご
よもぎは若芽だけ摘み、お湯でゆでた後、包丁でたたいて細かくした。
祖母が白玉粉に熱湯をいれてこね、そこに刻んだよもぎを入れ、なんとも渋い色の塊をこねていく。
たっぷりのお湯の中に、丸めただんごを落としていく。
数分でつやつやのよもぎだんごが出来上がる。
春の定番だった。
少し薄暗い、11時くらいの台所で、美味しいにおいをつくりだす祖母の後姿を思い出して、懐かしんでいる。
祖母は当時よりも足腰が悪くなった。高台の公園は新しく大きな公園へと生まれ変わり、つくしやよもぎの数はうんと減った。
新しい公園は見晴らしの良いやぐらが設置され、富士山を臨む絶景のスポットになっている。
帰省した際は今の公園にも訪れるが、私の思い出は以前の公園の姿の中にある。
ああいう体験を小さいときにできて、よかったな、と思っている。
思えば、小さいころから植物に触れる機会が多かった。そのためか、今でも季節ごとの木々や花を見ることは割と好きだったりする。
この経験が、何になっているかは言語化できないが、ふとした時に季節を感じて、沁みるのだ。
こういう経験を、産まれる我が子と一緒に楽しむことができたらいいな、と思っている。
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