――番外編 オンチ卿の来襲!?(前編)
黄色い髪のたくあん眉毛が特徴的な可愛らしい女の子が、とある部屋でウサギのぬいぐるみと会話をしている。
「トオンくん。今日もブロスト楽しかったね! でも、まだまだ練習しないとダメだね~」
今、困り顔の彼女の名前は東雲めぐ。高校二年生である。瑛斗(エピト)と八広(ハチピ)より年下ではあるが、SHOWLIVE配信者としての先輩だ。
一緒におしゃべりをしているのは、高性能AIを内蔵したうさぎ型のぬいぐるみのトオンくんである。
めぐちゃんは、毎週金曜日にトオンくんと二人でをゲーム実況の配信をしており、今はその配信が終わったところ。
ブロストライクとは、銃やブーメランといった様々な武器を使うキャラを選択し、三対三のチーム戦などを行うものだ。それを略してブロストと呼んでいる。
「そうだオン。そもそもオンチ卿がいるせいで、うまく練習できないかもしれないですオン」
トオンくんが言う"オンチ卿"というのは、何でもかんでもオンチにしちゃう悪い奴。いつも"ゲームオンチにしてやる!"と言っているため、勝てないのはそのせいなのかもしれない。
しかしそのオンチ卿。オンチにするというよりかは、一緒にプレイして楽しんでいる様子なのだ。先ほども一緒になって楽しく遊んでいたことは誰の目から見ても疑う余地もなかった。
「ああ、そういえば! 今日もオンチ卿とフレンドになれなかったな~」
めぐちゃんも三人でブロストをするのが楽しいみたいで、オンチ卿とゲームのフレンドになりたいらしい。オンチ卿はめぐちゃんにとって敵なのだが、こうやってゲームを一緒にしていく中でいつの間にかゲーム仲間のような感覚になっていたからだ。
「本当はなんか、オンチ卿もフレンドになりたい雰囲気を感じますオン」
『WA~HAHAHAHAHA!』
突然聞こえた笑い声にめぐちゃんは目を見開いた。
「え? オンチ卿!?」
『フレンド? ふざけるんじゃない! 対決をさせろ! 対決を!』
話を聞いていたのか、オンチ卿の声が降り注ぐ。
「配信でもそんなこと言ってたけどさ~、三人チームだからできないよ……」
「そうだオン」
めぐちゃんは身構えもせず当たり前のように答えた。もう既に友達のようである。
ちなみに対決するには三対三のチーム戦になるため、あと三人必要なのだ。対決をするなんて無理な話だった。
『そんなの関係ない! こうなったら、そこらにいるやつをゲームオンチにしてきてやるわ! 待っていろ! WA~HAHAHAHAHA!』
そう言い残してオンチ卿はめぐちゃんとトオンくんは強制的にまっくらワールドに連れて行ったのである。
「またですオン」
「え? なになに?」
辺りは真っ黒で何もない。
訳も分からないままめぐちゃんとトオンは二人まっくらワールドに取り残されたのだった。
「嵐のような奴ですオン……」
◇
ここはハピバ島。
「あ~今日もお疲れ様!」
「いや~、まさかあそこで先輩が溶鉱炉に落ちていくなんて――」
エピトとハチピの配信が終わり、いつものように談笑している時だった。
『WA~HAHAHAHAHA!』
「あれ、先輩の声ちょっと低いですね」
「いや僕じゃない。僕じゃない。僕じゃないから」
突然降り注がれた声に二人が反応する。
『お前たち二人をゲームオンチにしてくれるわ!』
オンチ卿は唐突だ。
何も知らない二人は顔を見合わせた。
「ゲームオンチってなんですか?」
「わかんない……G社と関係がある?」
ハチピの問いにエピトの眉間に皺が寄る。
『HAHAHAHAHA! このままお前たち二人をまっくらワールドに連れて行く!』
「えっ!? ちょっ、ゲームオンチって何!? まっくらワールドって何ーーーーーーー!!」
「わぁーーーーーーー!!!」
エピトの叫びも虚しく、二人はあっという間にまっくらワールドに連れてこられた。
「何ここ!?」
「真っ暗で何も見えませんね」
「ハチピの姿は見えるから暗いんじゃなくて、すべてが黒いだけの世界? 一体なんなの?」
困惑が隠せない二人はただ辺りを見回した。
先ほどの声の主すらいない。
二人が途方に暮れた時だった。
「ああっ!! エピト~~~! ハチピ~~~!」
可愛らしい声と共に黄色い髪の女の子が走り寄ってきた。
「あっ、めぐちゃん!?」
「めぐちゃん先輩だ!」
いつも気にかけてくれる優しい先輩の顔を見つけて、驚きながらもエピトとハチピに笑みが生まれる。
「二人ともオンチ卿に連れてこられたの?」
「オンチ卿?」
めぐちゃんの問いすらよくわからないエピトは顔をしかめた。
「そう、あの真っ黒の人――」
『WA~HAHAHAHAHA!』
目の前に突如オンチ卿が現れた。黒い体がもやもやと霧のように揺れている。手や足はない。顔は白いお面で隠されていて、表情は分からなかった。
『今からお前たちをゲームオンチにしてやる!』
どうしてもゲームオンチにしたいらしい。
「ゲームオンチ? 一体どういうこと? めぐちゃん分かります?」
初めて会うオンチ卿にいきなり言われて、エピトはどうしていいか分からなかった。
「ん~、私にもよくわかんない」
「え~……」
何か知ってるはずのめぐちゃんに知らないと言われてはお手上げだ。
「僕から説明するオン」
さすが高性能AIのトオンくん。詳しく説明をし始めた。
「オンチ卿の右手に持っている、緑色の物体に注目してほしいですオン。ウ〇チのような、音符のような形をしているオン。そいつはオンチと呼ばれている生き物ですオン。これを頭に乗せられると何でもかんでもオンチにされちゃうんですオン!」
『そうだ! オンチにしてやるぞ!』
説明の間、ちゃんと待ってくれていたオンチ卿。
「えー、やめてよぉ」
「カンベンしてほしいですオン」
めぐちゃんとトオンくんは逃げるわけでもなくただオンチ卿に文句を言うだけ。とてものんびりしている。
「えっ、こういう場合どうしたらいいんですか?」
「どうします? どうします?」
対応に困ったエピトとハチピがめぐちゃんにコソコソ聞いた。
「ん~とね~――」
『えええいっ!!』
四人でごにょごにょ話している隙にオンチ卿がトオンくんの頭にオンチを乗せた!!
「あああああっ!!」
『WA~HAHAHAHAHA! さあ、私と対決だ!』
「……だからね、ブロストは三人じゃないとできないよ? まだ足りないよ~」
無理やり対決に持ち込もうとするオンチ卿に、めぐちゃんは優しく諭す。
『そんなの関係ない! ブロストで対決するぞ!』
「……出来ないんだって」
それでもやりたがるオンチ卿にめぐちゃんの側にいたエピトとハチピも苦笑いをこぼした。
「友達いなくてブロスト対決したいだけじゃないんすか?」
『いい加減にしろ! こうなったらお前たち二人のハピバ島をオンチでいっぱいにしてやるわ!』
友達がいなくてにカチンときたのか、オンチ卿が怒る。
「えええっ!? それは困る!!」
「この二人の大事な島なんだから……」
エピトとハチピが慌て、めぐちゃんは優しく諭そうとするとまたオンチ卿が笑った。
『WA~HAHAHAHAHA! 誰も止められない! おい、そこにいるカメラマン! お前だお前! 三上!』
「え……俺ですか……?」
『お前もオンチにしてやる!』
「ああっ、あああああ!!」
こうしてカメラマンも巻き込まれ、ブロスト対決することになってしまった。
決戦は来週の金曜日。
それまでトオンくんと三上さんの頭にはオンチが乗ったままだ。
番外編の動画はこちら
うたっておんぷっコ♪【05】オンチまみれ
東雲めぐYouTubeチャンネル 【MeguRoom】
※実際の配信はSHOWROOMでご覧いただけます。
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