第010話 新しい挑戦
広告イベントでお互いにフォローしてくれる人も増えた。だけど、もっと多くの人に僕たちを知ってもらいたい。ファンを増やしたい。そんな気持ちが二人の間で大きく芽生えていた。
「どうしたら増やせるんだろう……」
「やっぱりSHOWLIVEだけではなく、他の媒体への露出も必要ですよね。S.S.さんが言うVtuberとしては全然なりきれてないので、そこに重点をおいてみるのがいいかもしれませんね」
「S.S.さんかぁ……。未だにG社の野望は謎のままだけど、Vtuberとしての活動が活発になったら何か分かるのかな?」
「そうですね。もしかしたらチャンネル登録数とか関係あるのかも? とにかくオレ達は新しいことをしないといけないと思います!」
それから僕たちは様々な案を出し合い、やれることは全部やってみようってことになった。
◇
一つ目は2019/05/11に初公開したサウンドノベル。
僕たちの小説を動画で流すことで、小説を読むのが苦手な人でも入りやすくなるのではと思ったからだ。
声の演技。
そんなことをするのは初めてで、どんな風に話して良いのかも分からず、本当に手探り状態だった。これで大丈夫? 不安のまま声を吹き込んだ。
「オレは意外と好きですよ。歌を歌うのが好きな関係なのか、どうやって感情を込めて伝えるかを意識しながら撮っている時がとても楽しかったです。でも、滑舌がめっちゃ悪いので発声練習頑張らないとだな~」
八広に聞いたらそんなことを言っていた。
そっか、確かに歌と一緒か……。
なんとか声を吹き込み、効果音(SE)やイラスト、動画制作は他の方に協力してもらい第000話が完成した。
なんだろう。めっちゃ感動した。
『続きが気になる!』
『すごくいい!』
リスナーさんたちからの反応も上々で、ほっと一安心。
だけど僕はもっと上手くなりたいと思った。もっと気持ちを意識して収録しよう。そうやって何度か収録を重ねた。
2019/05/18に001話、2019/05/31に002話が公開され、今は第003話までの収録が終わっている。チェックしてくれる人から上手くなったねと言われたことが本当に嬉しかった。
◇
二つ目はハピバトスクール。2019/05/23に公開。
VTuberとしてどんなことをしていったら僕たちに興味を持ってくれるかを八広と考えた。
「バーチャル界で有名な人にインタビューをして、バーチャルのことを何も知らない人でも楽しめるような番組を作るのはどうだろう?」
「いいですね! 自分たちの勉強にもなりますし!」
そうやって決まったハピバトスクール。第一回目のゲストはバーチャル界で行われる大きなイベントの副主催者さん。そんな凄い方に出ていただけることになった。
僕の役割は司会のような立ち位置で番組を仕切る、ゲストの方に話を聞くというものだ。はっきり言って不安、心配、自信なし! だけどやるしかない!
来て下さるゲストの方に失礼がないようにすること。
面白くすること。
見てくれる皆に興味を持ってもらうこと。
不安でいっぱいの撮影だったけど、初回ゲストの方がめちゃくちゃ優しくて、話しやすいうえに気さくに応えて下さったので本当に楽しく収録で出来た。
「先輩が司会進行をしてくれて、いい感じに進めてくれて本当に助かりました。オレ、全然上手くしゃべれなくて」
「八広は意外と人見知りだよね」
行動力はあるくせに、ちょっと不思議だ。
「次は頑張ります……。この番組は、ここでしか聞けない話とかを盛り込めるようにして付加価値をつけていけたらいいですよね」
「そうだね。僕ももっと上手く聞き出せるように頑張らないと。それに編集も。普段の僕がやってる編集とは全く違うからなぁ~」
普段やっているウェディングムービーとは構成が全然違う。だから他の人の動画を見て研究して、テロップや音を足したりする作業に凄く意識した。すごく大変だけど、こういうのもすごく楽しい。
『おお! その話は気になる!!』
『進行上手い』
なんて言葉も貰えて、少し重い息が軽くなった。
このハピバトスクールは、ゲストさんから次のゲストさんを紹介してもらうため、普段会うことも話すことも出来ない人に会える。それは見てくれる人にとっても、僕たちにとっても本当に刺激的で勉強になるなって感じた。
だからこそ、これからもしっかりと勉強して続けていきたいと思った。
◇
三つ目はハピバトツアー。2019/05/30に公開。
これもVRの世界に興味を持ってもらうための一つにしたかった。
ワールドの世界観を壊さないように。
行ってみたいって思ってもらえるように。
眠る前にちょっと旅をする感覚になってもらえたらと、シンプルにナレーションのみの構成した。
これらのコンセプトを元に撮影、構成、ナレーションも一人で考えてやったので不安だらけだった。本当にこのまま突き進めていいの? 作りながらもずっとそんなことを考えていた。
「先輩~。ナレーション、録音したので送りますね~」
だけど八広からもらったナレーションを聴いて、これならいけるかもって思った。情緒たっぷりの声。映像に入れてみるとイメージにぴったりだ。だけどそれと同時に、僕ももっと上手くナレーションを読めるようにならないとって身が引き締まる。僕の課題は多い。
「普段行っている場所をこういう風に紹介できるのは嬉しいですね。これを機会にワールドに行ってくれる人やVR好きになる人が増えたらいいですよね」
「本当、そう。自分でもワールドを作ってみたいなという人も出るかもしれないしね。僕たちが誰かのきっかけになれたら嬉しいな」
八広とそんなことを話した。
◇
四つ目の最後のチャレンジは歌動画を上げることだった。2019/06/01に一日遅れの初公開。
やっぱり歌は何度もリピートして聞いたりするし、反響も大きいだろうと考えた。じゃあ、何を歌う? 色々相談した結果、人気のアニメであり、あまり歌ってみた動画が上がっていないものを選んだ。歌ってみた動画が少ないということは、それだけ難しい曲でもある。だからこそ僕たちはそれにチャレンジしてみることにしたんだけど……。
もう~~~!! 本当に難しい曲だった!!
自分の知識不足、下手さ加減を痛感させられた。
八広が、録音された各トラックの音量バランスや音色などを調整する作業(MIX)をしてくれたんだけど、僕が足を引っ張ってしまっている。
「先輩……今、こんな感じなんですが……」
出来上がった曲を聴いてみる……。
「ううっ。僕の頭出し部分がやっぱり気になるね……」
「オレの歌と重ねたバージョンも作ってみました」
……不協和音。
「出だしはやっぱり大事だからさ、僕もう一度撮ろうか?」
「そうですね……。お願いします」
頭の部分だけ撮り直したけど、録音した環境が違うせいかこれも上手くいかないらしい。
「先輩……。頭の部分はオレに変えてもいいですか?」
「うん。ごめん、お願い」
僕のせいで八広に苦労をかけてしまっている。
僕がちゃんと出来ていれば……。
仕事して、配信して、動画を撮ったり、歌を撮ったり、動画編集をする日々。
僕は少し疲れていて、気持ちもマイナス気味になっていた。
そんな中、歌を公開する数日前に、僕は配信連続100日目を迎えた。
いつものように配信を始めるとすぐに皆からお祝いの言葉やギフトが飛んでくる。
『100日おめでとーーー!!!』
それを見て胸の中がカァっと一気に熱くなった。
辛い時や苦しい時、皆の言葉が何度も何度も僕を支えてくれる。
ほら、だって……今もこんなに支えてもらっている……。
疲れた心が癒されていくのを感じながら涙がぽろぽろと零れた。
応援してくれるリスナーさん達の中に、積極的に僕達の為に考えて動いてくれる人が増えたことも実感していたし、皆との絆が強まっているのを日々感じていた。
こうして皆に出会えた事が嬉しいし、僕にとって本当に宝物なんだ……。
僕はまた前を向いた。
◇
「すみません。配信予定日より一日遅れてしまったのはMIXが上手く出来ない自分のせいなので。本当、すみません」
「八広が毎日深夜にコツコツMIXしていたのを知っている。八広のせいなんかじゃない。おかげでいいものが出来たよ! 本当に感謝している」
実際、リスナーさんから上がった声も良かった。八広がいなかったらどうなっていたのか……。
「先輩が作ったPVのおかげもありますよ! センスが光ってるなと思いました! 場所選びとか、カットとかがかなり歌とマッチしていたので、完成品を見た時めちゃくちゃ感動しましたから!」
「ははは。ありがとう」
僕たちはこうやってお互い出来ないことを補填(ほてん)し合ってバランスを取っているのかもしれない。
なんか……支え合ってるなって感じた。
僕たちは何もかも始めたばかりだし、これから二人で成長していけばいいよね。
新しく始めた四つの挑戦の成果はまだ分からない。だけど、もっともっとコンテンツが増えたら見てくれる人も増えるって信じて進もう。
あ、そうそう!
忘れてはいけない一番支えてくれている人に感謝の気持ちを伝えたい!
この怒涛の期間の間、僕たちはハピバ島であることを計画し、実行した。
サウンドノベル sound novel
後日追加予定!
※実際の配信はSHOWROOMでご覧いただけます。
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