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CFRP(カーボン)の正体を知ろう

◆本記事では、CFRP(カーボン)の正体について、簡単に解説をします。

目次
・はじめに
・CFRPは炭素繊維を使ったFRP
・CFRPは高いもの?
おまけ
①カーボンナノチューブとは別物
②実は新素材ではないCFRP

はじめに

 近頃、新素材という枕詞とともに、カーボン、炭素繊維強化プラスチック、CFRPなどという言葉を聞くことが多くなってきました。これらは、大抵の場合同じ材料を示していて、正式にはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)といいます。これは、そのままシーエフアールピーと読みます。CFRPは「軽くて強い」ため、ロケットや人工衛星などの宇宙機、航空機、F1などのレースカー、スポーツ用品などに対して適用することができる優れものです。それ故、ものづくりの中で金属パーツに代替するものとして語られ、技術系、経済系の記事に取り上げられたり、サイエンスフィクションの創作物などにも取り上げられることがあります。このようにCFRPはさまざまなメディアに取り上げられることも少なくなく、大いに期待されている材料です。

(蛇足:炭素繊維ではありませんが、最近では、週間少年ジャンプのDr.STONEにも紙繊維のFRPが登場していました。)

 注目されるのは良い事なのですが、少し困ったこともあります。それは、正しい情報が手に入らないこと、正確に理解している人を見つけられず情報の校正がとれないために、誤った情報を発信してしまっている記事やコンテンツが散見されることです。この原因は、情報収集のハードルの高さにあると考えます。

 この記事では、私が自社コンポジットセンターにて培った経験、各書籍、あるいはCFRP黎明期より活動している先達からの教えなどを元に、広く共有すべきと考えるCFRPの基本的な情報について共有して行きます。

CFRPは炭素繊維を使ったFRP

 CFRP(炭素繊維強化プラスチック)とは、炭素繊維を用いたFRP(繊維強化プラスチック)のことです。

引用 ”CFRP.media CFRPの実体を捉える(導入)”  https://cfrp.media/cfrp00/

FRPというのは、繊維がプラスチックによって補強され、プラスチックは繊維によって変位が抑制されるような、複数の材料が相補的に作用する複合材料です。FRPは、繊維の種類ごとに名前があり、炭素繊維を用いたFRPはCFRP、ガラス繊維を用いたFRPはGFRP、アラミド繊維を用いたFRPはAFRPなど、無数に存在します。GFRPは最も一般的なFRPであり、船や、バスタブ、クルマ、遊具、大型のフィギュア、装飾など、多用途で使用されています。ちなみに、単に「FRP」という時は、慣習的にGFRPを指している場合が多いです。

 FRPで使用されている樹脂のことを、マトリクス樹脂と呼びます。同じマトリクス樹脂を使用してFRPを作った場合、使用する繊維の種類を変える事によって、出来上がるFRPの物性は大きく変わります。炭素繊維にはたくさんの種類があるため、同じCFRPというくくりであっても、重さ、剛性、弾性、熱伝導率など、全く別物の材料となります。なお、ここでは触れませんが、全く同じ材料を採用しても、積層設計、繊維長などの要素の違いによって、物性が大きく異なります。従って、CFRPは、とても抽象的な概念であると言うこともできます。

CFRPは高いもの?

 現在のところ、CFRPはそれなりに高級な材料です。これは、使用する材料の価格がもともと高額である事と、生産技術が歴史の長い金属材料の業界ほど高度ではないことなどが大きな理由です。CFRPを、広く社会が採用するようになれば、双方ともにある程度課題が解決され、今より安く手に入る時代がくるのでしょうが、当面は、比較的高額であることを念頭に置く必要があります。

 CFRPを採用する際には、他の材料からは得難い性質・性能を手に入れられる場合や、部品点数削減による品質保証コストを下げられ、リスク低減及びコスト低減が可能になる場合など、一つの価格がそれなりに高いということを念頭に置いた上でも、採用する価値のある案件かを見極めることが重要なのです。

**おまけ

①カーボンナノチューブとは別物**

 カーボンというと、カーボンナノチューブも有名ですが、金属に代替する「軽くて強い」新素材と言われるときのカーボンは、ほとんどCFRPのことです。カーボンナノチューブをマトリクス樹脂に添加することで良い物性が得られるなどの例もありますが、「軽くて強い」という文脈でカーボンと言う時には、カーボンナノチューブではなく、CFRPであることを認識しましょう。

 つまり、同じカーボンと言っても、カーボンナノチューブの専門家はCFRPの専門家ではありませんので、情報を集めたい時や、誰かに相談したい場合などは、そこに気をつけましょう。

②実は新素材ではないCFRP

 CFRPの始まりは、50年ほど前に遡ります。炭素繊維の登場はもう少し前になりますが、炭素繊維を用いた複合材料の強度特性は工業的に有用であることがわかっていたので、成形技術の確立がこぞって行われていました。炭素繊維は、今よりも高額かつ貴重なものであったため、ある程度高額のコストを飲み込める航空機、宇宙機などの分野から採用がはじまりました。次第に扱いやすく求めやすい材料の登場、生産技術の高度化などによって、一般工業分野にも採用が拡大し始めました。採用が広がり始めると、徐々に一般に知れ渡るようになりました。

 このように、一般には最近知られ始めたCFRPなのですが、実はそれなりに歴史のある材料だったのです。

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