社長室の番人
会社で大掛かりな席替えがあり、社長室の番人みたいな位置の席になってしまった。
秘書でもないのに、社長が面接なのかミーティングなのか、ただの離席なのか把握できてしまう。把握できてしまうから、社長に用事のある人は「あれ、社長は?」とわたしに尋ねてきて、わたしは答えることができてしまう。困ったものだ。
控えめに言ってわたしは自社の社長が大好きだが、社長室の掲示物や備品の整理などをする時に、すぐ手伝いにきちゃうのにはとにかく閉口している。「わたしのことは空気だと思ってくれ」と言おうが「ひとりでできますんで」と言おうが、まるで聞く耳を持たない。
もちろん、ひとが近くにいて作業してる以上は集中できないし機密情報も扱えないだろうから、手伝ってでもさっさと出て行ってほしい気持ちは理解できる。
それにしたって、社長に粘着タックをねりねりして掲示物を壁に貼らせるのは問題だ。でも社長は背が高いので、わたしの手の届かない高さにも掲示物を貼ってくれるのは非常に助かる。
こんな作業をさせて申し訳ないとか感じているわりに「おそれいります」を連発しながら、わりと思いっきり社長を使ってしまいがちな事実は否めない。
とりあえず、わたしの目下の大事な役割は、ほっとくとすぐに荒れる社長室のデスク周りをクリーンに保つこと…
しょっちゅう社長室に出入りしているせいで、さらに番人っぽさが増していく予感しかしない。
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