春のひかりの中を散歩中
春のひかりは清潔だと思う。明るい。
透明度は冬の方が高い。でも、春の方が圧倒的にやわらかい。
ほっぺたや耳たぶ、まぶた、冬のつめたさが苦手な部位ほど、ひかりが春を帯びてきたことを喜んでいる。
土手を散歩するのは気分がいい。
季節の移ろいは、もっぱらひかりの変化で気づく。明度はもちろん、ひかりにも湿度や彩度があって、数値化はできないけれど、体感で十分だ。
皮膚になめらかなひかりの膜が張るような感覚。細胞がちょぼちょぼ春に呼応する。
のんびりしたりぼんやりしたりするのは得意じゃないが、春のひかりは淡くかすんで、少し間伸びしていて、歩速が落ちてしまう。どれだけでも歩いていけそうな気持ちになる。