11月が好きな理由
実家から車で30分ほど走ったところに、世界で一番美しいスターバックス、というスタバがある。
今もそのポジションなのかは知らないが、少なくともかつてはそう言われていた。
11月のとても穏やかな天気の日、そのスタバがある公園は、それはそれは気持ち良い空気に満ちていた。
平日の午後、買ってきたコーヒーを父と母に渡すと、時間は止まってるのに風は吹いているような不思議な空気のなか、わたしは無言で公園内を歩いた。
散歩というにはかなり激しい歩き方だったが、わたしはぐいぐい歩きまわり、展望台のような建物を1階から3階まで6往復した。
穏やかな天気は、言いようのない焦燥感を少し和らげてくれるんだなと思った。
そして11月が好きになった。クリスマスを待ち遠しく思う豊かな季節。真冬を迎える前の穏やかな一瞬。夫と交際することを決めた月。そして、ひとつめの宝物が登場することになる月。
展望台から、並んで座っている両親の小さな後ろ姿を見ながら、11月が好きだと強烈に感じた。
その18時間後、公園の目の前にある病院で、わたしは長女を産んだ。7年前の明日の出来事だ。
ひとつめの宝物はどんどん大きくなっていく。6歳の長女のことが大好きだったが、今日でもう会えなくなる。残念だけど仕方ない。
ちなみに長女曰く、母親は去年の今日も5歳の彼女に会えなくなるのがさびしい、と言っていたらしい。親の方は全然進歩していないようだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?