砕け落ちる
オリンピックで成績が振るわなかった後、「退く」と言い出すのではないかとひやひやしていた。しかし明言はされず、次回も彼を見られると思った。頑張って欲しいと…。
しかし今になって、プロに転向すると発表された。至って前向きで、決して「退く」ではないのだと希望を感じるが、何かが違うと思った。競技の場で見られなくなる。それが私にとっては大きなことなのであった。
活躍してくれたら嬉しい。しかし、成績が振るわなくても、見られるだけで嬉しいのだ。頑張っている姿は、実際、本人にとっては苦しいことなのかも知れないが、そのエネルギーが画面を通してこちらにも伝わる。人を元気にさせる力を持っている。そんな人はこの世にそれほど多くない。
今後も別の形で見られるのだと、それは信じている。見られるときっと嬉しい。そう思う。
けれど何かが変わる。変わらないものなんて無いのかも知れないが、この変化は決して喜びではない。それだけは真実だ。
この月は予想もしない悲しいことが続いた。夏は続いたが、翌月が喜びに満ちた一ヶ月になる予想が、今はまるで出来なかった。
夏が終われば秋が来る。秋が去れば冬だ。季節が寂しさに満ち満ちても、幸せが訪れる可能性はゼロではない。
予想もしないことが起こる。心も体もついて行かない。
良くないことばかりだったのであれば、次は良いことばかりが続くのだと信じたい。希望は未だ、何処にも見えないが…。