両肩ぶつぶつ事件 ①

 ユニバーサルスタジオジャパン…通称USJの年間パスがそろそろ切れるので、最後の足掻きと出かけて行った。
 以前は何年も続けて年間パスを購入し、何とか元を取った程度でも足蹴く通っていたのだが、同行していた友人がハードな仕事に就いて以来、無駄が目に見えてきたことから、長らくご無沙汰することとなった。
 久しぶりに誘いを受けて出かけたその日、世間は夏休み真っ只中。ある程度覚悟はしていたが、人気絶頂を誇っていたハリー・ポッターゾーン目当てに怒涛の人だかりで、パーク内を歩くだけなのに満員電車状態。日傘と日焼け止めの甲斐もなく、ノースリーブの肩は真っ赤に日焼けし、全身汗だくで疲れ果てる。ハリー・ポッターに人気を譲ってナンバー2に格下げを余儀なくされた、アメイジング・スパイダーマンと、JAWZに何時間も何とか並び、ようやく乗って諦めを付けた。
 しかし、他者同様の目的だったハリー・ポッターを尻目に、大人しく帰ることが出来なかったいい大人二人は、年間パスの購入を決意。当日券との差額…という極小の記載に気付かず、アテンダントを質問攻めにしたうえで、想定より高くついたそれを何とかゲットしたのであった。
 すっかり遅くなって、あと五分で自宅…という帰路の最中、突然の雷鳴と前代未聞の大豪雨に襲われた。バイクに跨っていた私の視界は雨粒に遮られ、全身は何十杯ものバケツの水に洗い流されたような集中豪雨の餌食となる。何とか家に辿り着いた時には、服を脱がずに玄関から上に上がれないほど、雨浸しになっていた。
 正直、ずぶ濡れ過ぎて笑った。Gパンの裾から滴が止めどなく流れるような経験は、早々ない。しかも日中、ありえないほどの快晴だったのだ。すっかり焦げてしまった肩が嘘のように冷やされ、汗まみれの体など、不純物だらけとは言え、すっきりきれいになった気分であった。
 そんな思い出深い(?)スタートを切った翌年、今度はジュラシック・パークゾーンに【フライング・ダイナソー】という強者が登場!トリケラトプス宛らのうつ伏せ姿勢に吊り下げられ、急上昇、急降下、そして急旋回…という激しさ満点に魅了された梅雨のある日、「パス切れるまでにもう一回乗りたいな」と言い合って、友とは別れた。
 今の仕事は目まぐるしい日常と引き換えるように、夏と冬の休暇ががっつり取れる。過去の仕事は変則勤務で時間拘束が多岐に渡り、不定休だったこともあって、基本的に規則正しい生活をしたい私の性格上、仕事内容とはまた別の意味でストレスが多かった。
 同じく多忙を極めている相棒だが、彼女は夏と冬、そして春も、常々長期休暇の確保された仕事を貫いていただけに、決まった期間、休暇があることに舞い上がっている私の方が不思議に映ったようである。
 何はともあれ、互いの夏季休暇を充実させて消化するために、スケジュール調整を行う。私は計算高いので、USJへの再訪を最優先にした。年間パスを持っていれば、一年間いつでも行ける!そんな安心感が確実に手伝って、最近は長蛇の列のメインアトラクションを気長に並んでひとつふたつ楽しんだ後は、人混みを逃れて飲み食いしながらひたすら喋り、気付けば帰る時間…なんてことが日常化していた。果たして元を取れたのかも怪しい。
 画して、夏休み到来で昨年の二の舞を踏みそうな快晴の七月末、再びハリウッドもどきのゲートを潜ったのである。

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