占いに行った part2 ①

 どうにもこうにも予定が狂っている。感染症の影響だけでなく、人生の予定が…。先読み出来ていたようなものですら思いもかけず暗礁に乗り上げることが続き、自分でもどうしたら良いのか、どう動けば正しいのか、よくわからなくなっている。
 前回、思い切って飛び込んだ占いの館は、私を大いに助けてくれた。何かあったらまた診てもらえば良い…と思っていたが、その機会を持てない状況になってしまった。これは感染症の影響だが、今現在、不安しかないので困っている。
 毎日ネットで何らかの占いを探し、ホッとする答えを探してしまう。前回実際に診てもらった時のように、未来を肯定するような診断ばかりなので、いい加減信じて邁進した方が良いのだろうが、結局うまく前進出来ないのでずっと足踏み状態だ。
 自宅から程近くに、「当たる」と評判の占いサロンがあるのを知った。評価も100点満点中80点となかなか良い。予約が取れるのなら…と問い合わせてみたら、あっさり取れた。
 大きな看板だった。しかし随分古く、寂れている。完全個室と書いていたが、確かに個室ではあるものの、扉は半ガラス張りなので、外から覗けば中が見える。人通りが多いわけでは無いので、再々人が覗くことはないのだろうが、思っていたのとちょっと違った。
 10分単位で料金が千円ずつ上がっていくのは、前回のところと同じだった。聞きたいのは仕事のことだけなので、取り敢えず10分から始めて、時間がかかりそうなら20分まで伸ばしてもらうことにした。
 生年月日と名前から、何やら本を開き、紙に漢字を書き入れていく。現在の仕事運は悪くない…と言われた。ホッとするも、それ以上のことは何も言わない。資格を持っているのか、とか、どういう方面で仕事をしたいと思っているのか…など、詳細の聞き出しにかかる一方で、10分も経っていないのに、占い師が得意分野だという五行易で診てみないかと言われる。10分で千円のコースだと、いつ頃仕事に就けるのか…と言うところまでは診られないと言う。何故?と思った。
 10分千円で分かったことは、現在仕事運は悪くない…ということだけ。占い師が書き記した文字に対する説明は一切なく、“悪くない”の範疇さえ読み取れない。突き詰めてもそれ以上のことを言ってもらえないので、折角来たのだから…と渋々ながら、勧められる五行易で診てもらうことにした。想定外の出費だが、詳しくわかるのならちゃんと聞きたい。
 布を広げ、漢字が書かれた賽子のような石を振る。そしてさっきとは別の紙に漢字を入れていく。その作業を二回やった。
 最初から気になっていたのだが、大して言葉は発しないのに、作業の時間だけはかかっている。かかった時間の分だけ、こちらに伝えることはないのか、不思議で仕方がない。
「仕事、見つかるよ。二つ見つかるって出てる」
 ホっとしたのも束の間、意外な言葉が追従してきた。
「ひとつは、自分がやりたいと思っているけど、相手からはいらんと思われて、結局続かない。もうひとつは、自分が望んでる報酬より大分下げられる。続けるにしても、結局は自分の気持ち次第」
 は?と思った。
 仕事運…悪くないのではなかったのか?
 仕事見つかるって…それ、見つかることになってるの?
「それって妥協しないとだめってことですか?」
 納得できずに尋ねる。
「今まで持ってる資格でやって来た仕事じゃないことしようと思うなら、今年一年間、アルバイトでもしながら資格取った方が良い」
 再び、は?である。
 言われたことが不本意だったからではない…と言えば噓になる。しかしこちらが質問されて答えたことから、導き出しただけの言葉のようにしか思えなかった。
◎今まで資格を使ってしてきた仕事は、今後したくない。
◎4月から新天地で働きたい。
◎一生その仕事を続けたい!と決意した途端、片っ端からダメになる。
◎専門職の勤務システムは体質に合わないと気付いたので、平凡でいいから事務職として働きたい。
◎転職するには年齢的に難しい年代に入っているから焦るし不安。
 すべて私が言ったことだが、それらを全部ひっくるめて、オウムのように、自分の意見のように、私が言ったことを繰り返す。そして最後は一般論で返された。
 特に、“一生その仕事を続けたい!と決意した途端、片っ端からダメになる”は、私が話した直後、同じ言葉を繰り返され、「そのように出てる」「これからも繰り返すことになっている」と言われたので真っ青になった。その状況を打破したいから相談しているのに、回避する方法を提示するとか、そうならないようにアドバイスするとか、そんなこともないのだろうか?
「他に何か聞きたいことは?」と訊かれ、聞きたいことなど何一つ聞けていないと思ったが、これ以上何か質問しても、追加料金を上乗せされるだけだと思った。絞り出して、いつ頃仕事が見つかるのか聞いてみると…。
「5月…4月、5月ぐらいかなぁ…」
 何とも微妙な言い方だ。その表に、本当にそんなことが書いてあるのか、疑わしい。私が4月には新しいところで働きたいと言ったから、料金追加に対する報いか何かで、適当なことを言っているのではないか…としか思えなかった。
 結局、10分千円から、20分二千円を飛び越し、30分三千円でもない、30分~三千五百円間の五行易を、30分も診てもらえずに終了した。
 痛い出費になった。しかも何の得にもならない出費だ。アドバイスは、「したことないことするなら、役に立つ資格を取れ」である。しかし実際は、資格などなくても出来る事務職はある。経験が無いからなかなか書類選考すら通らない…と言ったのは私だし、だからといって、資格を取ったから事務職の仕事が決まると言われたわけでもない。むしろその逆だ。
「取ったから決まるとは限らんけど…」
 彼女は言った。
 それ、占いちゃうやん。

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