電車で足を踏まれた日

 都会に出掛けて行った帰り、電車内で足を踏まれた。
 車内は平日夕方の帰宅ラッシュ。そこそこギュウギュウの、限りなく満員電車に近い状態。出入り口付近に立っていたら、慌てて飛び込んで来たマダムに…。
 踏んだ自覚があったのであろうマダムは、慌てて「すみませんっ」と低頭平身に謝る。マナーが良かったからではなく、特に痛くも無かったので、ペコペコされて逆に恐縮した。
 地下鉄が民営化されて、メトロという名前に変わってから、車内の座席が減り、車イスやベビーカーなどに無理のないようなスペースが広く確保された気がする。私が立っていた扉の横が丁度そのスペースで、既に二台のベビーカーがそこに置かれており、ハンドルを手にしている保護者の姿が目に入った。
 一人は日本人で、もう一人はインド系の男性。ベビーカーはしっかり幅を取っているのに、どちらにも子どもが乗っていないのは何故だろう…と思っていると、日本人のベビーカーの側で、わちゃわちゃと動き回る女の子がいた。
 結構混んでいるのに、ベビーカー分と動き回る子ども分のスペース。これ、本当に必要?と若干イラっとしたが、ベビーカーに乗って大人しく座っていることに、子どもの方が疲れてぐずったのかも知れないし、車内で泣かれると、親も反って気を遣うのかも…などと考えつつ、足元でちょろちょろしているジャパニーズガールをなるべく意識しないようにした。
 何駅かで席が空いたので、遠慮の塊のように誰も座ろうとしない座席へ移動。下車予定の終点まで30分近くあるので、座れてラッキーと思ったのも束の間、横を見るとインド系ガールが窓向き膝立ちで足をバタバタさせていた。靴は履いたままである。
 誰も座らなかったのはこの子のせいか…。そして、もう一台の空席ベビーカー…主は彼女だったのかな…と思った。
 ガールの隣には母親らしきインド系マダムが平然と座っている。靴履きっぱも、足バタバタもお構いなし。
 日本であろうと、マナーに問題を感じる場面はしばしば見かけるが、今回のように異文化であった場合、彼らの国ではまた別のマナーが存在するのか、それとも日本のように気にし過ぎないのか、それとも文化の問題ではないのか、様々な疑問が脳裏を駆け巡る。
 日本語以外習得していないし、説教が深い愛情の表れ…と捉えられるような大阪マダムの嫌味の無さを体現出来るまでにはまだまだ修行が足りないので、ひたすら黙って耐える。
 メトロ=地下鉄なので、窓の外を見ても何も見えない…と大人は思いがちなのであるが、インド系ガールは姿勢も足バタバタも現状維持を貫きながら、その後何駅かを乗り過ごした。
暫くして降車駅に着いたらしく、座席から飛び降りたガール。去り際に思いっきり隣席の足(私)を踏み、振り返りもせず保護者と共に車両から姿を消した。
 ベビーカーに乗るぐらいだから、大きくても未就学児。飛び降りた勢いがついても、然程痛いわけはない。しかししかし…振り返りもしないって、どんだけ気にせぇへんねん。ってか、おかん。子どもを気に掛けへんすぎやろ。
 外国の方々に恨みはないし、とにかく心の広い人間でありたいと思いつつ、日々精進しているつもりではあるが、ちょっとこれってどうなのよ?と思ってしまった私。まだまだ細かい小さい人間でしかないのかも知れません。

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