謝るということ
Googleの便利なウェブアプリケーションに「Forms」がある。
教育現場でも使用されるようになって、徐々に浸透してきている。
授業での活用には、その日学習したこと(知識(わかる))を、Formsで作成したテストする(技能(できる))ことが考えられる。
プリントの配付、回収、丸付け、返却までを即座に行えるのだ。
そして、Formsには便利な機能があり、平均点や誤答の多い設問リストが出る。
こちらも、子供達の弱点を即座に把握し、伝えることができる。
便利であるがゆえに、慣れてしまったがゆえに、本来と違う形で伝わってしまうこともあった。
ある授業で、授業終了5分前にミニテストを行った。
100点満点の基礎を確認するものだ。
平均点を伝え、誤答を解説しようとFormsを開いた。
電子黒板はついたまま、素早く移動させようと思ったその時。
Formsは、平均と同時に誰が回答したのかはわからないようになっているが、点数の棒グラフが表示される。
なんと、その点数のグラフでフリーズしてしまった。
慌ててテレビをオフにし、何事もなかったかのように進めた。
しかし。
その点数が、多くの子どもに見られ、誰かが一番低い点数の犯人探しを始めてしまった。
「あの点数私〜」
笑顔で戯ける子ども。つられて笑う周囲の子ども。
下校も近づき、そのままにして帰りの会を迎えてしまった。
しかし、その子は仲のいい子に相談していた。
「みんなの前で点数がバレて恥ずかしかった。嫌だった。あの場では、言い出さないと他の人に言われそうだったから、笑って答えた。」
顔で笑って、心で泣いていたのだ。
あの時。頭によぎった、本当は辛いんじゃないのかという可能性。
ミニテストとはいえ、謝って見えてしまった事への謝罪。
しかし、時間が迫り焦っていた私は後回しにしてしまった。
言い訳はいくらでもできる。
フリーズしなければ。誰かが言い出さなければ。その子がもっと勉強していれば。
でも、その全てのきっかけを作ったのは間違いなく自分の操作だ。
Formsは悪くない。悪いのは道具を使っている人間だ。
後日、私はクラスの前でその子に謝罪をした。
うなづいてくれた。
しかし、その時ふと思った。
私は、ただ自分がその罪から逃れたくて謝ったのではないか?
謝ったら楽になるのは自分だけではないか?
その子が恥ずかしい、嫌だと思った気持ちは消えないのでは?
そんなことを考えていたら、何もできないかもしれない。
失敗したら謝ればいい。そして繰り返さなければいい。
だがそれは、当事者を抜きにした考えなのかもしれない。
少なくとも。
こんなにモヤモヤするならば、次から行動を変えることしかないと思う。
そして。
仕方ない、と言って向き合わない人にだけはなりたくない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?