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詩「ヴィリニュス」

バルトの海を越えて
教会と驟雨の街へ
私達の乱れがちな魂の
拠り所を思い出すための旅

夜明けの門から大聖堂へ
そぞろに歩む人々は
限りないはからいの気配に
わずかに面持ちを引き締める

こうして荒れ地に生きる私達は
一体何を守るべきだろう
流した涙は涸れるほどで
喪われた歴史はさらに重いとすれば
私達は何を償うことができるだろう

過ぎゆく日々の勢いは
必然と偶然を繰り返しながら
次第に全てを押し流してしまう
あの日の昂揚もなかったかのように
(だが地下牢の叫びは決して忘れまい!)

数知れぬ白い天使が舞う教会で
母に連れられた少年が二人
まず兄が跪いて十字を切り
すぐに弟が跪いて十字を切る
正しい将来という約束のために


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