★今日の問題★

 被保佐人が時効利益の放棄、時効完成後の債務の承認をするには、保佐人の同意を要するとされているが、その根拠を述べよ。

胡桃「10秒で答えてね。よーいどん!」

建太郎「おう」

1秒

2秒

3秒

4秒

5秒

6秒

7秒

8秒

9秒……

胡桃「10秒経過。どうかしら? 」
建太郎「うーん。これはどう考えたらいいんだ? 」
胡桃「まず、時効利益の放棄、時効完成後の債務の承認がどういうものか分かるかしら? 」
建太郎「つまり、債務には、消滅時効と言うのがあって、時効期間を過ぎれば、債務はなかったことにできるんだろ」
胡桃「そうね。次のように定められているわ」

民法
(債権等の消滅時効)抜粋
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

建太郎「うん。この期間を過ぎれば、債務者としては、債務を弁済しなくてよくなるわけだな」
胡桃「そうね。それなのに、債務者が時効利益を放棄する。つまり、消滅時効期間が経過していると主張しないで、債務を弁済する。あるいは、消滅時効完成後に債務を承認するというのはどういう意味があるかしら? 」
建太郎「本来なら、払わなくてもいいのに、自らすすんで払っていると」
胡桃「そうよ。新たに借金をしているのと同じだということなのよ」
建太郎「うん。確かにそう言えるな」
胡桃「ということは、次の条文のどれが問題になるか分かるかしら? 」

民法
(保佐人の同意を要する行為等)抜粋
第十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

建太郎「民法第十三条1項二号かな。借財又は保証をすること。に当たると」
胡桃「そうよ。ただ、時効利益の放棄、時効完成後の債務の承認とは、書かれていないわね」
建太郎「うん。そんな表現はないな」
胡桃「そこで、判例は次のように考えているのよ」

民法第十三条1項二号の「借財又は保証をすること。」の規定が「類推適用」される。(大判大正8年5月12日)

建太郎「なるほど。類推適用するということなのか」
胡桃「というわけで、被保佐人が時効利益の放棄、時効完成後の債務の承認をするには、保佐人の同意が必要だと押さえておいてね」
建太郎「うん。OK」

※問題は、ノベル時代社の肢別100問ドリルを利用しています。下記サイトから入手できます。

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