宅建士試験で40点取って合格するための最も簡単な方法はこのライトノベル小説を読むことです 権利関係編1-19
「誰の戸籍簿謄本と住民票だって? 」
「建太郎のよ! 」
「何で、俺のが必要なの? 」
「建太郎! 悲しみに暮れている場合ではないのよ! 戸籍簿謄本と住民票を用意してくれれば、手続きは私がやるから! 今回、遺産分割協議書は必要ないわ。だから、印鑑証明書は必要ないわ。とにかく、それだけは急いで取ってきて! もう九時だから、市役所が開いているわ! 」
「何のこと? 悲しみに暮れているって……? 」
建太郎が首を傾げると、胡桃も目を丸くした。
「建太郎。まさか、何も知らないの? 」
「だから何が? 」
「ニュースも新聞も見ていないの? 誰からも連絡来なかったの? 」
昨夜は、一通り、宅建の問題を解いただけで、寝てしまったし、朝は寝坊したので当然、テレビなど見る暇もない。建太郎は新聞を取っていないので、チェックすることも、もちろんない。
胡桃が机の傍らに置かれた今朝の朝刊を建太郎に突き出した。
「だったら、見た方がいいわ」
『宅本健一・春子夫妻事故死』の黒い太文字がかなり目立つサイズで刻まれていた。
不動産業を営む宅本健一氏とその妻春子さんが、山道の崖から車ごと転落して死亡した。春子さんは妊娠していたが、胎児も死亡した。警察では自動車のハンドル操作を誤った事故死と見て調べを進めている。宅本健一氏は、不動産王として知られ、都知事選にも立候補していたが落選した。
啞然とした建太郎は、胡桃を見やった。
「伯父さんが事故で亡くなったってことか……」
「そうよ……」
胡桃が椅子から立ち上がって、建太郎の傍らに寄り添う。背中をソッと撫でてきた。
「辛いのは分かるわ。でも、迅速に行動しないと。特に、今回の場合のように、多額の遺産が絡み、なおかつ、複雑な相続関係になる事案では、放っておくわけにはいかないのよ」
「うん、分かるよ。悲しいとかじゃなくて、あまりに衝撃が大きくて……。不動産王とも言われた伯父さんが車の転落事故で死亡だなんて信じられないよ」
「人生、いつ、何があるか、分からないものね。富を極めた人だって、いつ、災難がふりかかるか知れたものではないんだわ」
「俺はどうしたらいいんだろう? 」
「しっかりするのよ。いい? 建太郎は、現在のところ、宅本健一さんの唯一の法定相続人なのよ。特別な遺言書が見つからない限り、宅本健一さんの遺産――数千億円相当の不動産やその他の資産はすべて、建太郎が相続することになるの」
「全く、実感がないよ……。数千億円の遺産? 」
「相続が開始したら、相続人がまずやるべきことは何か分かるわね? 」
「ああ……。分かる。相続の承認又は放棄だろ」
建太郎は宅建のテキストを取り出してパラパラッとめくった。
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※権利関係編は完結しています。今年の合格を目指す方は、先に読み進めてくださいね。