毎日一分で読める憲法基本問題17
★今日の問題★
日本国憲法前文は、憲法典の一部として、法規範性を有するが、裁判規範となり得るかどうかについては、いくつかの判例がある。そして、最高裁はどのような考え方を採っているか?
胡桃「10秒で答えてね。よーいどん!」
建太郎「おう」
1秒
2秒
3秒
4秒
5秒
6秒
7秒
8秒
9秒……
胡桃「10秒経過。どうかしら?」
建太郎「法規範性と、裁判規範は違うんだ? 」
胡桃「そうなのね。裁判規範というのは、要するに、裁判において、前文を根拠にして、何らかの主張ができるのかということね」
建太郎「前文は、宣言文みたいなものだから、裁判で根拠条文になるかどうかが問題になるんだな」
胡桃「そうよ。学説には、裁判規範にならないとする考えと、なるという考え方があるのね。それぞれの考え方は次のとおりよ」
否定説
1、前文は、憲法の理想、原則を抽象的に宣明したものに過ぎない。
2、前文の内容は、すべて、本文の各条項に具体化されているので、裁判では本文を判断基準とすれば足りる。
3、そして、本文の各条項に欠缺はない。
肯定説
1、本文にも抽象的な規定がある。前文と本文の規定の抽象性の相違は相対的なものに過ぎない。
2、すると、前文は抽象的で、本文に具体化され、各条項に欠缺がないというだけでは、前文の裁判規範性を否定できない。
3、例えば、平和のうちに生存する権利は、本文に規定のない基本的人権と解すべきで、これに反する法律や行為については、前文の規定を適用して違憲と判断すべきである。
建太郎「肯定説は、平和のうちに生存する権利は、前文にしか書かれていないと考えるんだな」
胡桃「そうね。じゃあ、最高裁はどのような考え方を採っているか? ということね」
百里基地訴訟の最高裁判決で、「平和主義ないし平和的生存権として主張する平和とは、理念ないし目的としての抽象的概念であつて、それ自体が独立して、具体的訴訟において私法上の行為の効力の判断基準になるものとはいえない」としている。(最判平成元年6月20日)
建太郎「つまり、最高裁は否定説の立場を採っているということか」
胡桃「そうよ。最高裁は、裁判規範性を有しないとの立場を取っているということね。いろいろな判例があるけど、試験対策としてはそれだけ押さえておいてね」
建太郎「うん。OK」
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