米金利はどこまで上がる?株バブル崩壊?
マーケットの焦点は足もと上昇中の米金利。
古典的な経済学の文脈で、一般的に金利の上昇は株価の下落要因とされる。しかし、今回の金利上昇は必ずしも株価の下落を誘発するものではないと考えている。
そもそも、現在なぜ金利が上昇しているのかというと、期待インフレ率(BEI)が上昇しているから。
現在上昇しているのは名目金利(US 10YR Tield)で、実質金利(TIPS 10YR Yield)はさほど上昇していない。名目金利と実質金利の関係は以下の関係式で説明される。
名目金利=実質金利+期待インフレ率(フィッシャー方程式)
ワクチン普及、米追加経済対策にともなう経済回復、および原油価格の高騰をうけ期待インフレ率が上昇し、名目金利が上昇するという結果になっている。
これは決して悪い金利上昇ではなく、経済の回復とともに期待インフレ率が上昇することは当然であるし、大規模な金融緩和下、長短金利差が拡大しているのでむしろ歓迎できるものだと考えている。
金利上昇のデメリットとして、先に上げた株等の資産価格の下落のほか、ドル高が挙げられるが、報道ベースではイエレン米財務長官はドル安を志向しているわけではない様子。また、先日のウィリアムズNY連銀総裁の発言に鑑みると、Fedはただちに金利上昇に対応するわけではなく、しばらくは金利上昇を容認すると考えられる。
では、Fedが動く(金利上昇を牽制する)ラインがどこかと言えば、目先は実質金利が0%に近づくライン、名目金利の目安で言えば、1.8%(現在値:1.34%)辺りか。
現状、ドルの過剰感から21年中はドル安を予想する声が多く、実際にドル安トレンドが続くなかではあるが、実質金利の上昇を皮切りに2021年はドル高が進行するのではないかと考えている。
株に関しても、金利上昇だけをみると株価にネガティブと言えるだろうが、業績をともなっているので大きな下落はないとみている。株がビビって下げるようであれば積極的に買いたい。
たしかに資産価格にバブリーな感じはあるものの、今後しばらくは、市場稀に見る金余り相場が続く公算が高く、また、現在の株価上昇は決して不健全なものではないため、今回の金利上昇を以ってバブル崩壊を騒ぐのはナンセンスだろう。