鳴かない蝉とたどりつけないわたし
オリンピックで一番楽しみな競技はバレーボール。V6のMUSIC FOR THE PEOPLEがイメージソングになっていた年のワールドカップはすでにテレビに張りついて見ていたので、そのもっと昔、ソ連の女子の監督が血管が切れるんじゃないかと心配になるくらいの勢いで、真っ赤な顔をして怒鳴り散らす光景が名物だった時代からバレーボールに夢中になっていたのだと思う。瞬間湯沸かし器のごとく興奮がおさまらない様子の監督とは裏腹に、スーパーモデルのような美しい選手たちがどこまでもクールで、その対比がとても印象的だった。南派(ワイルド)か青山派(さわやか)か荻野派(硬派)か、決めきれずに迷っていた時代から、あっという間に数十年の時が過ぎて。
今年の5月~6月にかけて開催されたネーションズリーグ。バレーボール熱がすっかり冷めきっていたので、最初のほうはノーマークだったのだけれども、途中から日本の男子も女子もめちゃくちゃがんばっていると聞きつけて見始めたらまんまとバレーボール熱が再燃してしまった。何年ぶりだろう、おかえりなさい、わたしのバレーボール熱。男子の準決勝と決勝をどうしてもライブで観たくてU-NEXTにまで加入してしまった。あの頃とはすっかり好みのタイプが変わってしまった2024年のわたしは迷うことなくフィリップ・ブラン監督派。ちょうどいい感じのクールさ。暑苦しい熱血タイプが苦手なので、落ち着くわー。選手たちは男子も女子もみんなかわいかったです(歳を取るとこうなる)。ブラン監督は、オリンピック後は日本代表の監督を退かれるそうなので、オリンピックでは絶対にメダルを獲って監督に花道を作ってあげて欲しい。宜しくお願いします。
月額料金2,189円(税込)のU-NEXTは31日間無料トライアルを存分に楽しんで解約する。無料トライアル期間中に、わたしの中で3本の指に入るくらいに大好きな映画『エリザベスタウン』を視聴した。Blu-rayも持っているのだけれどセットするのが面倒でしばらく観ていなかったので何年ぶりかに観て改めてスキの気持ちを強くした。
喪失と再生の物語は昔から大好物なのだけれども、『エリザベスタウン』の見どころはなんといってもキルスティン・ダンストが演じるクレアのキュートさ。彼女の底抜けの明るさが、仕事で大失敗してすべてを失い自殺まで決意したドリュー(オーランド・ブルーム。はぁ、好き。)の心を開いて癒す、なんとも気持ちのいいエンターテイメントだ。ロードムービー好きにはたまらない。仕事で大失敗して落ち込んでいる方もそうでない方も、ただただキュートなクレアに癒されたい方もそうでない方も、南派も青山派も荻野派もブラン監督派も竹野内派も、ぜひ。
近所のマンションの前で虫取り網を持った小学生の男の子が一点を見つめていて、その視線の先を追ってみたら、つるりとした質感の背が低くて細い木におびただしい数の蝉が静かにとまっていた。ざっと見た感じでも10匹以上のおそろいの蝉(羽が透明のタイプ)が等間隔にとまっていたのだけれど、まったく鳴いていなかった。喉が渇いて声が出なくなってしまったんだろうか。隣の木にも、そのまた隣の木にも、同じようにおそろいの蝉(羽が透明のタイプ)が等間隔にとまっていて、だけどみんな静かにしていた。たまたま一斉に休憩していただけならばいいのだけれど、鳴いてこそ蝉と思っていたので、鳴かない蝉のことがちょっと心配になった。蝉の心配をしている場合ではないというのは百も承知なのだけれども。
極度の方向音痴をなんとかしたい。初めて行く場所は、Googleマップで入念にイメージトレーニングをしてから向かうのだけれど、駅から出たとたん、北も南も分からなくなってあっちへうろうろ、こっちへうろうろ。たぶん傍から見ると、タイムスリップでもしてきたんじゃないかと疑われるほど不審な動きをしているという自覚がある。わたしがわたしの目撃者だったら念のため通報していると思う。駅から徒歩2分なんて余裕、と思って10分前には到着できる計算で出発したのに、結局約束の時間ギリギリに汗だくで駆け込むという失態をこれまでに何度繰り返しただろう。ビルの前には到着したのに、入り口が分からないというトリップもあったりして、初めての場所にたどり着くセンスが絶望的に欠如しているので、これから先は、できるだけ初めての場所に行かないように生きていきたい。