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中医学の応用⑤症状別の考え方 頭痛
突然の頭の痛み・・・そんなときに使える漢方薬のご紹介です。
頭が急に痛くなるというのは、『外因性』のことが多く、その原因を除くと痛みがなくなるのが特徴です。
その原因になるのは、風寒・風熱・風湿・肝火など があります。
急性ではなく、慢性的に、また繰り返すような頭痛が起こる場合には、『内因性』=体の内部に原因があることが多く、外因はその頭痛を誘発する原因となりますが、誘発する原因を除いても繰り返すことがあり、体の内側から整えていく必要があります。
また、別の疾患、例えば副鼻腔炎による鼻炎・鼻閉の悪化による頭痛や肩~背部の過緊張に伴って頭痛が起こることもあり、この場合には鼻炎の治療や肩こりの治療も平行して行う必要があります。
不通即痛(ふつうそくつう)
これは、中医学での痛みが起こる原因の根本としてとらえられている考え方で、『何か詰まるものの存在が気血の流れを塞ぐために、痛みが起こる』という考え方です。
例えば、瘀血(血の流れの滞り)や痰湿(余分な水分が痰となって経絡を塞いでいる)などが、その気血の流れを滞らせている原因であるため、それを除くことで、治療を行うという考え方です。
急性の頭痛で、最も多い原因は、『風邪』です。
今回は風邪をひいた時の頭痛を詳しく見てみましょう。
『風邪』をひいた時の頭の痛み
『風邪』には、中医学的には『風寒』と『風熱』があります。
簡単にいうと、風寒は『寒邪』が原因となるもの、風熱は『熱邪』が原因となるものです。
風寒の頭痛
『風寒』という状態を、中医学的に説明すると、
風寒の邪が体表面に侵入し、寒邪が経絡を凝滞(凝集して滞る性質)したために頭痛・咽頭痛・寒気などの風邪の症状が起こる
となります。
寒邪は表である太陽経を犯すことが多いため、寒邪による頭痛は、後頚部を中心とした太陽頭痛が中心となります。
風邪をひいた時に、頭の後ろ〜首、肩にかけて痛みやこりが起こることが多く、風邪をひいた時によく使われる葛根湯はこの『太陽頭痛』に効果的だと言われています。
風寒頭痛の特徴
✔︎ 強い締め付けられるような頭痛
✔︎ 項背部のこわばりを伴う
✔︎ 強い寒気・軽度の発熱
✔︎ 汗は出ない・身体の痛み
冷えによる痛みというのは、強いことが特徴で冷えが強いほど痛みは強くあなります。また、頭だけではなく、肩や関節など全身に現れることもあります。
風寒頭痛に使われる漢方薬
代表的なのは、風邪を治療する漢方薬としても有名な 麻黄湯 桂枝湯 葛根湯 です。(こちらは別のコラムにて詳しくご紹介しています)
ここで覚えておきたい漢方薬は次の2つ
●川芎茶調散 (せんきゅうちゃちょうさん)
●麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
川芎茶調散は頭痛に効果のある漢方薬としてよく使われ、部位に関係なく全般的に効果があるものですが、一番効果があるのは側頭部の頭痛だと言われています。
風熱の頭痛
『風邪をひいた』という時には、風寒の邪によるのか、風熱の邪によるのかでその対処法が異なります。
風熱の邪による風邪は中医学的に説明すると
風熱の邪が侵入し、熱邪が経脈を乱す ということになり、寒気や悪寒よりも高熱や喉の熱感と痛み、黄色く粘っこい鼻汁など、熱の症状が強い風邪の症状を指します。
インフルエンザや炎症性疾患の初期にもみられるもので、熱は上昇する性質があるため熱邪はまず上部を犯すことになり、頭痛や鼻汁、喉の痛みと炎症などの頭部や顔面部に症状が出るのが特徴です。
風熱頭痛の特徴
✔︎ 張ったような頭痛(熱感を伴う)
✔︎ 寒気は軽度で熱が高い
✔︎ 目の充血
✔︎ 咽喉痛
✔︎ 身体の熱感
✔︎ 脈が速い
風熱頭痛に使われる漢方薬
風熱頭痛を治療するには、体表を開いて熱を放散し、邪を外部に追い出す「疏散風熱」を行います。
そのためには、清熱効果のある薄荷・桑葉・菊花・牛蒡子・金銀花・連翹
などが配合されている漢方薬を選びます。
●銀翹散 (ぎんぎょうさん)
銀翹散は、ぜひ覚えておきたい漢方薬です。
実は、銀翹散は医療用の漢方薬にはありません。市販でしか買えない漢方薬なのです。
他にも、清上防風湯・荊芥連翹湯 などもありますがこちらはどちらかというと体質改善的に使用されるもので、特に荊芥連翹湯は、いわゆる「解毒証体質」肌色が黒っぽくニキビ肌で、精神的に生真面目、憂鬱傾向、背が高く筋肉質で骨っぽい体格の体質改善の薬としても使用され、副鼻腔炎を伴う頭痛にも適する方剤です。