30分の逃避行
とっておきの週末が、終わってしまう。
残されたあと30分、もう30分、まだ30分、脳裏にチラつく月曜日の影を遠くに追いやって、日曜日のベッドに身体を沈み込ませて、ただこの重力に身を任せて目を閉じたい。
チルなヒップホップなんてかけちゃって、人気のないプールの上に漂うような気持ちで、古い木目の天井をうっすら開けた目の先に眺めたい。
ハイボール2杯分の体温の上昇が、最近だしてきたばかりの厚手の布団の隅で、じんわりと広がる。少し早い心臓の音。指先にうつったアイシャドウのラメが、電球の光に反射している。枕元からかすかに漂う、ラベンダーのアロマの匂い。
あんなこと、こんなこと、構わずにやってくる、1分1秒。走馬灯のように駆け抜ける、あの子の声、あの人の後ろ姿。
日曜日の夜を浄化して、溶けた時間は静かに寝息をたてながら、月曜日の朝、私の目を覚ます炭酸水の泡になる。
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