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バッグに揺れる、タイの癒しとお守り

毎日BTS(バンコク市内を走るスカイトレイン)で通勤している。
昨年あることに気づいた。

結構な数の大人が、カバンやバックパックにぬいぐるみ付キーホルダーをぶらさげているのだ。20センチくらいあるようなぬいぐるみを、男女問わずつけている。

うちの会社のタイ人も例外ではなく、ポケモンなどの定番キャラクターものから、日本で昔流行ったモンチッチ人形、中国の人気メーカーPOP MARTのキャラクターまで。

他人の趣味にとやかくいうのは大変野暮なことだと、充分わかっていますが、解せない。タイ人は、かわいらしいものを好むというのは知っているけど、それでも解せない。

なので、分析してみた(ほっといてくれ、という声が聞こえそうだ…)。


伝統のお守りプラクルアン

敬虔な仏教徒の多いタイの国には、「プラクルアン」という伝統的なお守りがある。仏陀や高僧を象った数センチの小さな彫像で、家内安全や商売繁盛、学業祈願などのご利益があると信じられているそうだ。

国内外にコレクターまでいるそうで、数十~数百年前に作られたプラクルアンなどはその希少性から高値がつくこともある。例えば1860年代後半に作られたというラカン寺院のプラクルアンは、8000万バーツ(約3億6千万円)で取引されたという。

タイでは昔から、信仰の対象としての仏像をコンパクトサイズにして身に着ける、というお守り文化があったのだ。

幸運の人形ルク・テープ

2016年ごろ、ルク・テープという人形が、タイで一大ブームを巻き起こしたらしい。

ロイターに、当時の記事があった。

「クーリエ・ジャポン」にも記事があった。

2つの記事によると、「ルク・テープ」(子供の天使)と呼ばれる赤ん坊の人形は、持ち主に幸運をもたらすと言われていたそうだ。ブームの火付け役のタイ人女性は、あるとき市場で赤ん坊の人形を購入してから、商売繁盛を経験した。その後、人形に魂を吹き込む儀式を行って販売開始。著名人を含む購入者から幸運の報告が相次ぎ、ソーシャルメディアで話題となった。人気が過熱するにつれ、飛行機予約のときに、ルク・テープ人形の名前で座席を購入する人まで登場。一時期は社会問題となったそうだ。

ロイターの記事いわく、2006年のクーデター直後にも陶製のお守りが流行したとか…。

書くのも恐ろしいクマントーン

調べてたらここまでたどり着いちゃって、もう怖くて後悔の念が押し寄せているのだけど、クマントーンというお守りもある。

クマントーンとは、亡くなった胎児の遺体をミイラにしたものや、遺灰にしたあとに…これ以上は怖くてかけないので、興味のある方は、ご自分でお調べください…。

勝手にまとめ

観光業が盛んで世界中の人々がこぞって訪れる、微笑みの国タイ。が、その実、もろもろ複雑な社会。長引く不安定な政治体制は、タイが中進国から脱却する機会を何十年も阻んでいる。

2023年のタイ下院総選挙で、若きピター氏率いる前進党が最多議席を獲得、第一党になるも、政権奪取ならず。あげく解党命令。いつのまにかタイに戻ってきたタクシン元首相が恩赦を受けたと思ったら、2023年9月にタクシン派のセター新政権発足…となるも、わずか1年で解職を命じられ、2024年8月にセター氏失職。そしてあっという間の同年9月、タクシンさんの次女ペートンタン氏が首相に就任。

そんな中でも、人々の多くは表立って政治の話をすることはない。報道の裏に隠されたいくつものストーリーを知りつつも、怒りや不安や思いのたけをぶちまけることもない。ただただ日常を送る。

古くから効力があるとされるプラクルアン、突然大流行したルク・テープ、クーデター直後に流行した陶製のお守り、いまも熱烈なコレクターがいるとされるクマントーン…。

通勤するタイ人のバッグで揺れる、大きなぬいぐるみキーホルダーは、ある種、彼らの癒しであってお守りなのかもしれない。

大人気フィギュアストアPOP MARTの、Crybaby(泣いている赤ん坊)。


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