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おげんさんといっしょに泣いた夜

星野源、という名前を初めてはっきりと意識したのは、『SUN』 から。あちこちで耳にしてはいたが、2015年の紅白を観て、なんて楽しそうに歌うんだろう!と、この曲が大好きになった。

当時は3歳の息子を抱え、長女はまだお腹の中。そんな生活で、新譜を追いかけたり出演作を調べたりする余裕はなく、テレビに出ていたら手を止めて聴く程度だった。

そんなにわかファンの私がこうして書くのもおこがましいが、今回放送された『おげんさんといっしょ イッキ見再放送』で不覚にも泣いてしまった。

週末の深夜。これまでに放送された4回の番組の最後の1曲が、 『 うちで踊ろう』だった。

この曲は、初めての緊急事態宣言が出され、得体の知れないウイルスに怯え、でもそれを子供達には感じさせまいと必死だった2020年4月に発表された。
SNSから源さん1人きりの弾き語りで発表されたこの曲は反響を呼び、さまざまな分野の方々がアレンジを加え、世界中に広がっていった。

ドラえもんの主題歌から源さんを知った息子と、とにかく音楽をかけていれば機嫌のいい娘もこの曲がお気に入りで、子供達が歌う様子を動画に撮り、何度も見返しては笑い合う、楽しい時間を作ってくれた。
と同時に、学校も行けず、家から出られず、買い物に行くことさえ決死の覚悟だった当時の空気を孕んだ曲でもあった。

そんな『うちで踊ろう』を、約1年半ぶりに聴いたのが、今回の再放送だった。
必死だったあの頃、そして、来年こそはと出口を探してもがいていたのに、ほとんど変わらない現実。これまでの様々な思いが駆け巡ると同時に、これまで家族全員が健康に過ごせたことに感謝した瞬間でもあった。

狭いスペースで歌い、踊り、ハグしたりと、手作り感満載だった2017年の初回放送。その後も毎回豪華なゲストや音楽。そしておげんさん家のセットが増築され、アクリル版で仕切られた “ソーシャルなディスタンス” の中で放送された第4回までを一気に見られた再放送だった。

ほんの3年前はこんなにも自由に触れ合うことが出来ていたのか、という驚きと、そんな当たり前のことに驚かなければならない現状へのやり場のない気持ち。
その中でも、工夫を凝らして楽しもうとする気持ちが溢れていた第4回を改めて観ることができて嬉しかった。

この数年で、源さんの若手時代の苦労や、身体のこと、音楽への想いを見聞きする機会も増え、私の曲の聴き方も変わっていた。
コンサートや舞台が軒並み中止され、源さん自身も大変な時期を過ごしてきたに違いない。

1年半経った今も緊急事態宣言は続き、以前よりは様々なことが緩和されてはいるものの、子供たちに我慢をさせる生活には変わりはない。
それでも、番組を通してこの1年あまりを振り返り、
悪いことばかりではなかったはず!
たまには肩の力を抜いてもいいんじゃない?
そう、言われた気がした。

おげんさん、ありがとう。



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