40歳、年一回の体力測定に臨む
学生のころは、年度ごとに測定していた自分の体力。
反復横跳びや上体反らしが懐かしい。
社会人になると、トレーニングジムにでも通っていない限り、そういう測定からとんと遠ざかってしまう。
そこで私は、昨年30代ラストイヤーに自分なりの体力測定イベントを設定した。
それは、とあるマラソン大会の10km走に必ずエントリーするというもの。
もともとフルマラソンの完走経験もある私だけど、
ここ数年はおしりに根が生えているのかと思わんばかりの出不精に。
このままでは走ることはおろか、歩くことさえ嫌いになりそうと一念発起した結果、年に一度、マラソン大会で10kmを走り自分の体力を試そうということになった。
昨年からスタートして、今年で2回目になる。
学生のころの体力測定が、それに向けて練習をすることがないように
私もマラソンの練習は全くしていない。
というのはこじつけで、単に練習嫌いなだけである。
当日の天気は大雨。
「体力測定で風邪ひいてもしかたないし、今年はやめるかな。」なんて怠けた考えが頭をよぎる。
と思いつつも、マラソンガチ勢の夫が運転する車の助手席に滑り込み会場を目指す。
会場入りしてしまえばこっちのもの。
お祭りのような雰囲気に、さっきまでの怠けた考えはどこへやら。
雨の中のランニングに向けて準備を始めながら、体育祭前のワクワク感に似ているな、と懐かしくなる。
ランニングウェアの上にレインコートを羽織り、フードまでしっかりと被って防雨対策をする。雨は降り続いているけれど、そんなことを気にするランナーは誰もいない。ランナーたちのランナーズハイは走る前から始まっているのだ。
スタートブロックにスタンバイし、盛大なスタートセレモニーが終われば、いよいよマラソンスタート。まずはフルマラソンランナーたちが一斉に走り出し、10km走のファンランナーである私たちもそれにつづく。
最初の2kmくらいは大勢のランナーがもみくちゃになりながら走る。
沿道の声援に手を振ったり、ケーブルテレビのカメラにピースをしたり意外と忙しい。周りばかり気にしていたら、大きな水溜まりに足を突っ込むことになる。
雨の日のランニングはシューズがグチョグチョになるのが一番辛い。着地するたびに水を吸ったスポンジを踏んでいるかのような感覚と、足元から冷えが襲ってくるからだ。まぁ、走っていればランナーズハイでそんなことも忘れてしまうのだけれど。
昨年も同じコースを走っているから、今年は景色を眺める余裕もある。
仮装をしながら走っているランナーの遊び心にも楽しませてもらい、給水所でボランティアをしている学生たちの声援と笑顔に元気をもらいながらのランニング。
あ〜最高に気持ちがいい。
途中、私は体力測定をしているのだったと思い出し、昨年の体と今年の体の違いを観察してみる。息切れは今年もさほどしていない。タイムなどお構いなしに、ゆるーく快適に走っている証拠。たまに靴底で地面を擦ってしまうことがある。ん、これは足が上がってないってこと?年をとると、少しの段差でもつまづくっていうよね。そんなふうに自分の体を観察しながら8km地点に到達したとき、昨年とは明らかに違うと思ったことがあった。
「あと2kmもあるじゃん!」
昨年は「10kmってあっという間、もっと走りたかったな。」と思っていたのに、今年は残りの距離にたじろいでしまった。体に目を向けてみると、腕が振れていない。そのせいで、上半身は前に行こうとするのに、足がついてきていない。最後の2kmは心の中で「腕を振る!腕を振る!」と呪文のように唱えながら走ることになった。
ゴールゲートをくぐる頃には、降り続いていた雨も弱まっていた。
フィニッシャータオルを受け取り、祝福の声にお礼を返しながらゴール地点の競技場を後にする。
今年も一度も歩くことなく、なんとか完走できた。ランナー限定のおもてなしを受け、砂糖醤油がしっかりかかったお餅をほおばりながら、ホッと胸をなで下ろした。
フルマラソンに出走していたマラソンガチ勢の夫が自己ベストを更新したと聞いて、来年は私もハーフマラソンに再挑戦するかな、と意気込んでみた。いけない、いけない、完全にランナーズハイを引きずっている。次回のことはもう少し冷静になってからまた考えよう。
昨年からの体の変化、心の変化をこうして記録しておく。
体力測定記録用紙がわりの自分の手帳を開いて、<□10km完走する>の項目にチェックを入れる。今年の体力測定も無事に終了。おつかれさま、私。