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スクールドッグのハンドラーになりたい

スクールドッグ」または「動物介在教育」という言葉をご存知ですか?個人的にはこの「スクールドッグ」の活動、日本の教育・福祉または動物業界を変えるきっかけになり得るのでは?と注目しています。


動物介在教育とは

セラピードッグのことか?と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、厳密に言えば違います。セラピードッグは動物介在療法(Animal Assisted Therapy)と呼ばれ、これは医療行為となります。スクールドッグは医療目的ではなく、教育を目的とした動物介在活動(Animal Assisted Activity)の一つです。

スクールドッグは、教育の一手段として位置付けられています。
日本における「動物介在教育」は、実は教育指導要領にも記載されており、国からも推進されています。
学校飼育動物はうさぎ・ニワトリ・昆虫・魚などの小動物がメインで、学校に農業科などがある場合は馬や牛、山羊などの大型動物を飼育する場合もあります。実は犬や猫も学校飼育動物に含まれますが、実際に犬猫を飼育している学校は極めて少ないのが現実です。

昔は多くの学校で何かしらの動物が飼育されていましたが、現在では飼育・管理担当の教員への負担や、長期休暇中のお世話の問題、アレルギー問題などがあり、学校飼育動物がいる学校は減少傾向にあります。実際に、平成19年度には79%の小学校で動物が飼育されていましたが、令和4年度では21%までその数は減少しています。
最近は朝顔などの植物を育てることが、動物飼育の代わりを担っているようです。しかしそれで本当に代わりになっているのでしょうか?

海外の事例

スイス

スイスでは、「学校犬」と呼ばれる犬が学校にいるケースがあるそうです。その場合学校には、動物介在教育士と呼ばれる専門職員がいるとのこと。
子どもたちを無条件に受け入れてくれる存在として、学校犬が学校や教育現場に広く受け入れられているようです。

利用している生徒「顔がニキビだらけだろうが、太っていようが、そんなことは犬にとってどうでもいい。」

スウェーデン

スウェーデンでは、「教育犬」と呼ばれる犬が学校にいるケースがあるそうです。
子どもたちが授業中に気分が悪くなったり、授業や活動に集中できないことがあると、犬がいる教室に行って犬と触れ合う。いつでも「犬が寄り添ってくれる」ことが、子どもたちの自信につながっているそうです。

イギリス

イギリスのリンカーン大学によると、犬との交流によりリラックス効果が得られるという研究結果があります。

①リラックスのための瞑想をするグループと、②犬との交流をするグループに分かれてそれらを継続する。
すると、②犬との交流を続けたグループではリラックス効果が得られたが、①瞑想グループでは子どもたちがストレスを感じる比率が上がっていった。

台湾

野良犬・野良猫を、愛情を持って世話をするということが実生活に溶け込んでいる国と言われています。スクールドッグを導入している学校はなんと300校。動物介在教育×動物福祉(保護活動)も広がっていて、関連プログラムを推進する学校には、国からの支援があるそうです。

スクールドッグとは

一般社団法人日本スクールドッグ協会が提唱する、教育現場に犬を派遣する事業、またはその犬自身を「スクールドッグ」と呼んでいます。

スクールドッグ協会は、子どもたちの学びの場に「スクールドッグ」と呼ばれる犬を介在させる教育事業の普及・啓発活動を行っています。
画一的な教育体制に馴染めなかったり、学校や家庭に居場所がない、いじめ等を打ち明けられないなどの理由から、いわゆる「不登校」の増加・10代における自殺者の増加・自己肯定感の低下などが深刻な社会問題となっています。それらの問題を解決するため、スクールドッグが多くの子どもたちの居場所づくりに繋がると考え、動物介在教育を進められています。

教育現場での動物介在教育のステップ
1. 「命」との出会い
2. 犬との関係性の構築(他者理解)
3. 自発的な養護性の発動
4. 生徒が主体となる探究的な活動へ

「動物介在教育入門」講座

2024年春〜夏、入門編の講座が全5回開催され、私はその4回目と5回目に参加しました。初めは「動物」「教育」というワードに惹かれて、好奇心や興味本位での参加でしたが、知れば知るほど「コレは💡」というシナジーを感じました。

#4 スクールドッグが学校で果たす役割

動物介在教育(Animal Assisted Education)では、教育動物福祉/動物愛護がキーワードとなります。
ハンドラーとスクールドッグは教育現場に入るわけですから、教育に関する知識は必須になりますし、子どもたちに動物愛護の精神を伝えることがハンドラーの使命だと言えます。だからと言ってそのために犬を蔑ろにしてはいけませんし、動物福祉や犬について、ハンドラーは常に学び続けることが求められます。

大人は子どもたちに対して「自分らしくいてほしい」「社会で活躍してほしい」と願うものです。しかしそれは、マズローの欲求5段階説でいう、最上位の「自己実現の欲求」にあたります。その下層にある生理的欲求や安全の欲求が満たされていない段階では、自己実現できるはずがありません。
スクールドッグは、子どもたちの心の拠り所となり、まずは子どもたちに安心できる居場所を提供することを目標としています。

スクールドッグの役割は、子どもたちにただ寄り添うこと。

#5 動物介在教育における専門家との連携

学校飼育動物を「飼育しない」という選択肢ではなく、「飼育の仕方」の指導体制を整えていくことが必要です。そのために獣医師や愛玩動物看護師などの専門家との連携が重要になってきます。
愛玩動物看護師は2022年から国家資格化し、その活動の幅が広がることが期待されています。今後は専門家の一人として、教育現場に入って活躍する人材が増えることでしょう。
その一方で、こういった専門家とのマッチングが課題になっている部分もあるそうです。学校側からの要請がないと、獣医師や動物看護師は動けないという課題もあります。スクールドッグのハンドラーが、その架け橋になることが期待されます。

動物介在教育の可能性

スクールドッグは、小中高校に犬が入ることを想定しています。個人的には、日本語学校にも入れたらおもしろいのにとも考えています。

私は今、動物保護施設で働いていますが、そこで初めて犬と触れ合いました。それまで犬という動物は全くの未経験でしたが、毎日接するうちに犬は可能性の塊だと感じるようになりました。
犬は人を成長させてくれます。信じれば信じた分だけ、こちらに返してくれるのです。それがお互いの自信につながります。そんな経験を自分自身がしたからこそ、【犬】には可能性を感じています。犬を通して、言葉や文化を越えて、ヒトがつながる・輝ける居場所をつくれるのではないかと思っています。

またスクールドッグのハンドラーには、犬に関する知識だけではなく、【ヒト】とりわけ子どもや教育についての知見も求められます。ここは私の今までの経験を活かすことができる分野なのではないかと思います。もちろん全てではないけれど、スクールドッグの事業は【私だからできること】になり得るのではないかと感じています。

動物という新しい価値観との「出会い」によって、「気づき」を得て価値観が変化することに、年齢は関係ないと思います。大人も成長していける、常に成長していかなければならない、そんな向上心を持って、日頃から人や動物と接していきたいと感じました。 

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