「ダメージコントロール」火に油を注がない危機管理
国会答弁の常套句に「報道承知」という手法があります。
これは野党からの質問等に対して
真っ向からイエス・ノーを示さず
「報道されていることは承知しているが(真偽のほどはお答えしません)」
という報道に責任転嫁してまずは質問者からの矛先をかわす、答弁作成の際の危機管理手法の一つです。
テレビなどの国会答弁を観てみると、この「報道承知」が多用されていることに気づかれるかと。
この手法は企業等の謝罪会見、ひいては我々の日常生活にも応用可能な手法なのです。
1 企業の謝罪会見における「サンドバッグ」状態
企業をはじめ大学、病院関係者等の失態、謝罪会見の記者会見で報道関係者からの矢継ぎ早の質問に対して
「しどろもどろ」
になり、挙句に
虚構の事実やウソを思わず発言或いはウソを隠すためにまた更なるウソを重ねてしまい自ら墓穴を掘り「泥沼」状態になってしまう、所謂「サンドバッグ」状態をよく見かけませんか?
反対に、質問に対して理路整然、泰然自若とした、安心して見ていられる会見も散見されます。この違いはどこから来るのでしょうか?
2 「まさかの時」のための諸準備は日頃から
「悲観的に準備して楽観的に行動する」
危機管理の要諦を説いたのは危機管理の大御所、亡き佐々淳行氏です。ではこういう謝罪会見などにおける「悲観的な準備」とはどういう準備を言うのでしょうか?
(1) 考え得る「想定問答」を出来るだけ作成しておき、定期的にリニューアルしておく
そもそも普通の人ならノー原稿で人前で話すということに対して苦手意識や緊張感を伴うのにそれが「記者会見」という特殊なシチュエーションであればなおさらです。
場数を踏んだベテランなら別として通常の対応能力では上記のような「サンドバッグ状態」に陥ることは火を見るよりも明らかですね。
従って、原稿すなわち想定問答を準備して一言一句間違わないよう、相手つまりマスコミなどに言質を取られないよう留意しながら会見に臨むことが肝要です。
この想定問答ですが、企業であれば総務・企画課辺りが担当して有事に備えた当該企業独自のタイプに応じた、あらゆる角度と考え得る想定とこれに対する簡潔明瞭な問答を日頃から準備しておくと良いでしょう。
また、これは定期的に見直し、必要があれば加除訂正しておくことが大事です。
(2) 答弁担当者のリハーサル、真実のみを告げる誠実な会見を目指す
答弁担当者は通常
その組織のトップ或いは広報担当官
ということになろうかと思われますが、その方々には折を見て謝罪会見のリハーサルを実施訓練しておけば「本番」でのパフォーマンスも少しはましに行えるのではないでしょうか。
その時に大切なのは服装、髪型、視線(キョロキョロしたり、某総理の如く下ばかりを向いていたのでは自信無げなのが手に取るように相手にバレバレ)ですが、もっと大切なのは
「やってしまったことは仕方がない」
という割り切りと迷惑をかけた関係者への心からのウソ偽りのない謝罪意識、更には今後の対応に対する実現可能かつ具体的な補償の内容、修復施策その他ビジョンを明確に示すことではないでしょうか?
口先だけのパフォーマンスは、会見に臨んだマスコミをはじめ観ている我々に不快かつ不誠実な印象を与え、以後の会見を「泥沼」状態に導いてしまうことを答弁担当者は深く肝に銘じなければならないと思います。
これは企業の謝罪会見を例にご説明しましたが、これを我々の日常生活に置き換えて考えてみましょう。詳しくは次回以降にご説明します。
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