『コロナ禍におけるライブハウスの危機』の本質にあるもの
ライブハウスにコロナ禍をもたらしたものとは…
2020年2月、大阪市都島区のライブハウスにおいて新型コロナウィルスのクラスターが発生。更に、そこで感染した人々が他のライブハウスや職場、家庭などで更なる感染者を生み出し、感染を拡大させた事が各メディアやネットで大々的に報じられた。
まだ、新型コロナウィルスについてわかっている事が少なく、未知のウィルスに対する猜疑心や恐怖心が先行していた時期だっただけに、このニュースが与えた影響は大きかった。更に、『感染拡大のリスクが大きい場所』としてライブハウスが名指しで挙げられた事で、ライブハウスの悪いイメージは決定的になった。
その後、緊急事態宣言等による営業自粛や営業制限によって、多くのライブハウスが苦境に立たされた。また、当初政府筋から提示されたライブハウスの運営ガイドラインは、そのまま実施すれば経営が不可能となってしまう様なもので、ライブハウス関係者を困惑させた。
コロナ禍における運営で特にネックとなったのが、一つは収容人数制限、もう一つはライブイベントの自粛等の理由による公演数の減少だ。これによってライブハウスは利益を削られる上に収入源まで断たれる事となり、まさしく兵糧攻めに遭った形で経営的に追い込まれたのである。その結果、閉店を余儀なくされるライブハウスが続出した。
それから3年、2023年6月の段階では新型コロナウィルス研究が進んだ事で感染対策が確立され、ワクチンの開発・接種も進展を見、ウィルスの脅威自体は存在するもののその影響はかつてとは比較にならないくらいに低下している。5月8日からは新型コロナウィルス感染症の扱いがこれまでの感染症2類から5類へと変わり、マスクの着用も任意となった。
ライブハウスもまた、関係者と行政が折衝を重ねた事によりライブハウスの経営の指針となり得る運営ガイドラインが制定され、更に数々の営業制限が順次撤廃されて営業の自由が徐々に回復していき、ついには観客収容率100%での声出しも可能となって、ライブスペースにはほぼかつての光景が戻って来た。ライブハウスのスタッフを始め、イベンターや演者、観客が全員で協力し合った事もあって会場内の感染対策もほぼ完成され、ライブハウスを訪れる人に安全な環境を提供出来ている。何なら、感染リスクという点からすれば今やライブハウス内にいる方が町中よりも安心出来るくらいだ。
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