
推し、燃ゆ

芥川賞受賞作品らしい。
作者さんは1999年生まれ、若いね。
本を見た時ページ数薄い!と思っていました。しかし中身は濃かったですね。
本編感想ですが、この主人公、発達障害者ですよね。
物語で出てきた彼女の生きにくさ、すべてこれに通ずるものがあります。
健常者の方から見たら「そうなの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、当事者ならほぼ全員がこう言うでしょう。
「私と同類だ。」と。
その生きづらさの逃避先が一人の人間を推すことだったらしいですが、
その情熱は計り知れないものがありましたね。
一人の人間をここまで愛する、じゃなくて推せるのは素直に尊敬する。
しかし、同じ発達障害者としてこの子は健全だなと思ったのは、
ブログなどを通じてファン同士で交流していることですね。
しかもそこでは人を引き付ける文才があるおかげか、彼女を中心にコミュニティが作られてるんです。凄いですね。羨ましいですね。
ネットの人間関係すら構築できずにアカウントを削除してしまった自分とは大違いだ。
おっと、また登場人物と己を比較する悪い癖が出てしまいました…。
しかし、一番状況の変化が流動的な生きている人間を推すのはマズかったね。
「いくら推しは推せるときに推せ。」と言っても旬というものがあるし、不祥事を起こした時点で一発アウト。
あとは結婚して推せなくなったって人もいるけど、彼女はどうだったかな。
今回の推しは芸能界も引退してしまったけど、仮に続けてたら推し続けていただろうか。
生涯の推し、長期間推せるものを選ぶなら、芸術作品、音楽とか過去の偉人などの評価が確定してしまったものが良さげだね。
もちろん歴史的発見がされて評価が覆るかもしれないけど、それも推せる人からしたら歓喜ものでしょう。
そう考えると歴女とかはいろいろ安定してるな。
あとは二次元とかプラモデルとかいわゆる普通のオタク趣味が強いだろうな。
あいつらは三次元に恋愛もしないし、不祥事も起こさないし。
もちろん、コンテンツは廃れるかもしれないけど作品そのものは無くなるわけでもないし、終わる原因も三次元の会社や人間が引き起こしたものだから、二次元本体の推しにはダメージがいかない。うん、無敵だな。
しかし二次元の中の人や原作者を推していて、彼らが問題を起こしていたら少々酷だな。
まぁキャラクターだけを推していたら問題ないけどね。
やはり生きている人間を推すべきではない。
話は逸れたけど、彼女は推しが燃えてしまい生きている理由や活力がまったくなくなったわけで…。
てっきり自殺エンドかなと思いましたよ。
いや、その先はそうかもしれないのですが。
部屋も散らかり、洗っていない食器や床に散らばっているゴミが散乱した中でエンディングを迎えるわけです。
何の希望もない、しかし生きなきゃいけない。
彼女は今後どうなるのでしょうね。