私が思う大学で経済学を志す意味
皆さん、初めまして。ぶーさんです。
初投稿になります。
本メディアの主旨が「阪大経済卒の4人がそれぞれの経験や知識、考えを社会に発信する」ことにありますので、最初は「私が考える大学で経済学を学ぶ意味」をテーマに書きたいと思います。
これから大学に進学する学生さんや、大学で何か学問を学び直したい社会人の方が経済学部を一つの選択肢と考えれる一助になればと思います。
◾️目次
①私が経済学部を志した理由
②経済学部で学べること・学んだこと
③社会に出た今思う経済学を学んだ意義とは
①私が経済学部を志した理由
私が何となく経済学部を意識し始めたのは中学3年生です。きっかけは中3で初めて学ぶ「公民」の授業でした。初めて経済の仕組み(需給曲線とかインフレ・デフレとか)を学んで、なんやこれめっちゃおもろいやん!と経済のことに興味を持つようになりました。当時は中学生ということもあり、「ビルドインスタビライザー」とか「デフレスパイラル」とか「神の見えざる手」などの"それっぽい"言葉に惹かれたのかもれしれません。
特に「日本銀行は銀行の銀行」という表現にとても惹かれた記憶があります。(笑)
そんなこんなで経済学に興味を持ち始め、何となく大学では経済学部を目指してみようかなぁ、と考えるようになりました。
そして、高1の文理選択で改めて志望学部を考える際に、小さい頃から大好きだった数学を極めるべく理学部を目指すか、経済学部に挑戦してみるかを悩みました。結果的には、当時はお金や経済の仕組みを知りたいという想いが強かったのもあり、また経済学部では自分の好きな数学も扱えると考え、経済学部を第一志望にすることにしました。
高校の「政治・経済」の授業を受けていく中でも、さらに経済学への興味は深まり、そのまま受験では経済学部を受験しました。
②経済学部で学べること・学んだこと
私は経済学部を何となく「お金」について学べるところだと思っていました。お金儲けや株、ビジネスの方法を学べるのが経済学だと考えていました。
それに対する私の今の結論はこうです。
経済学部は”「お金」を学ぶところ”ではなく”(人間の行動の分析を通じて)社会を貫く仕組みを学ぶ(見つける)ところ”です。
おお、、、いきなり何言ってるねん、という突っ込みが聞こえてきますが、要するにこういうことです。
経済学部は勿論お金のことも扱うし学ぶんだけど、それがメインではありません。「お金」の問題だけではない「労働」や「貧困」、「個人の消費」等の問題を含めた社会全体の仕組みや原理を学ぶことができるのが経済学部なのです。
皆さん、そもそも「経済」という言葉の本来の意味を知っていますか?
そうです。「経世済民(けいせいざいみん)」です。書き下すと「世を経(おさ)め、民を済(すく)う」となります。この言葉に対する意味や考え方は世に様々にありますが、私は以下のように考えています。
「この世(社会)の道理を解き明かし、それを以て人々をより良い生活に導く」
経済学とは、ただ私利私欲を高めるわけではなく、数字上で社会の出来事をこねくり回して楽しんでいるわけでもなく、より良い社会に向けた仕組みや制度を作ることを目的とした学問なのではないでしょうか。
上記のことを突き詰めれば、経済学とは地球の限られた資源をどう分配すれば、社会が豊かになるかを探求する学問ともいえます。
そんな学問を学ぶことができる場所が経済学部です。
私が経済学は私利私欲だけの学問じゃないと考える様になった最初のきっかけは以下の本でした。
「経済学的思考のセンス」
この本は是非とも経済学部を志望している中高生や、既に大学で経済学徒となっている人に読んでもらいたい1冊です。
著者は我らが大阪大学 大学院 経済学研究科 教授の大竹文雄氏です。
この本は結婚やゴルフの賞金制度、年金問題、年功序列型賃金等の身近な問題や社会的な問題を経済学的な視点、とりわけリスクに対する人の行動や、インセンティブが人の行動に与える影響に着目して、解説していく内容になっています。この本を通じて、経済学的視点で社会の仕組みや物事を考える(=経済学的思考のセンス)とはどういうことかについて、その一端を知ることができます。
折角なので、実際に本書に書かれているエピソードを1つ紹介します。
◆プロゴルファーのやる気と賞金の関係
皆さん、プロゴルファー30人が参加する以下2つのゴルフトーナメントを想像してください。
①1位の選手だけに1億円の賞金が出る大会
②1位に6千万、2位に3千万、3位に1千万の賞金が出る大会
どちらの大会が盛り上がるだろうか?
1位のみに賞金が出るため上位層な熾烈なトップ争いが見れる①のほうだろうか?それとも、真ん中あたりの順位の選手も入賞を目指して最後まで全力を出してくれそうな②だろうか?
参加者のレベルがみな同程度であれば①でも熾烈なトップ争いが繰り広げられて、ある程度盛り上がるだろう。一方でもし参加者の実力値にばらつきがあればどうだろうか。①の大会では実力値が下位の選手は全力でプレーするだろうか。恐らく、実力を120%発揮するようなプレーはしないだろう。しかし、②の大会では、実力値が下位の選手でも僅かな可能性の入賞にかけて100%の実力を発揮するプレーをするのではないだろうか。このような状況を考えると、参加者の実力値にばらつきがある場合は、②の様な大会のほうが盛り上がると言えるだろう。
このように、ゴルフという競技は大会の賞金構造が各選手のプレーのレベルに影響を与えることが一般定期に知られています。
このゴルフ競技が持つ経済学的な意味について、本書では幾つかの実際の研究例を踏まえて開設されています。
私は大学の合格報告を高校の政治・経済の授業の先生にしに行った際に、経済学部で学ぶなら、まずはこれを読んでから入学しなさい、とこの本を勧められて、高校最後の冬休みに読みました。
この本を読んで、自分の中での経済学のイメージが大きく変わりました。(大学に入学する直前にそれはどうなの?という突っ込みはやめましょう笑)
私は幸いにもこの本を読んでから大学で学び始めることができた為、実際に授業を受け始めてから、経済学部で学ぶことのイメージと現実にはギャップを感じませんでした。
実際に、私が大阪大学経済学部で受講した講義で扱った内容を以下に列挙しました。
あくまでも私が大学で受講した講義の内容を並べただけで、これらが経済学部が手中に収めている分野の全てではないことに留意した上で参考にして頂きたい。
・マクロ経済学
・ミクロ経済学
・経済史
・統計学
・会計学
・労働経済学
・行動経済学
・計量経済学
・金融論
・貿易論
・最適化論
・経営戦略論
・組織論
・経営管理
・ゲーム理論
・インセンティブ理論
・etc ......
経済学部で扱う内容はお金の仕組みや銀行の仕組みだけだと、元々思っていた自分からすれば、経済学部は想像以上に幅広い内容を扱う所でした。
本記事では阪大経済で学んだことのざっくりした紹介ということで、それぞれの細かい内容についてはまた今後の機会で皆さんに紹介できればと思います。
また、これは少し補足なのですが、全国の大学を見た時に”経済学部”問名前の下で「経済学」「経営学」「会計学」の3つをバランス良く学べる大学は希少だそうです。
多くの大学が経済学部や経営学部、商学部等と学部で分かれていたり、経済学部の中に学科として扱う分野を上記のように分けている。そんな中で、経済学部というくくりの中で上記分野を幅広く学ぶことができるのは日本で「東京大学」「京都大学」「大阪大学」の3つだそうです。
経済学部に興味のある学生で大学選びに悩んでいる人は上記の様な視点も良かったら参考にしてください。
ここまで、大学の経済学部で学べることは何なのかという話をしてきました。勿論、学生一人一人によって選ぶ授業も違えば、専門も違う。経済学部で学べることを抽象化して一言で表すのは難しいかもしれない。ただ、あえてそこに一本の線を通すのならば、それはやはり「この世(社会)の道理を解き明かす力」と「それを以て人々をより良い生活に導こうとする精神」ではないだろうか。
③社会に出た今思う経済学を学ぶ意義とは
今、私は既に大学を卒業し、働いています。そんな私が改めて大学で経済学を学ぶ意義を考えてみました。
大学の経済学部で学んぶことなんて、社会に出たら使い物にならん!と声高々に仰られる方がいますが、私はそうは思いません。私は専門が経営学だったということもあり、大学での学びが日々の業務に役立っています。別に経営学に限らず、行動経済学だって、ゲーム理論の考えだってどんな仕事にも活かせることができる、と私は思います。
ただ私がここで言いたいことは大学で経済学を学んだことが仕事で役に立つ、ということではありません。
経済学部はあくまでも経世済民の学問を学ぶ所です。その学問を大学で学ぶ意義とは、「社会の仕組みを正しく捉まえて、社会のあるべき姿や問題に対して自らの考えを持てるようになること」だと思います。
転売行為は何で問題視されるのだろうか?そもそも転売行為は駄目なのだろうか?教育は貧困問題を解決するのか?競争社会とははそもそもどんな社会なのだろうか?世の中の格差はこのままでいいのか?そもそも格差とは何なのか?
社会に関する疑問や問題はこの世に溢れんばかりとあります。それらに対して、皆さんは明確な意思を以て自分の答えを持っているだろうか。チケットの転売行為をする人に、どんな物売りビジネスだって安く商品を仕入れてそれを高く売るだろう!チケット転売の何が問題なんだ!と怒鳴られたら、皆さんはきちんと返答できるだろうか?
経済学を学ぶ意義はこうした社会の問題に対して真摯に向き合い、自分なりにあるべき解を見つけ出せるようになることではないだろうか?勿論、経済学を学んだからと言ってこれらの問題に対して正解を必ず導ける、というわけではない。社会に出て始めて直面する様々な問題に対して”経済学的なアプローチ”を使って取り組むことができる、それが大学で経済学を学ぶ意義だと私は思います。
社会でそうした姿勢を持てることは、仕事に活きるかもしれないし、自分の人生の志を決めることにもつながるかもしれません。
そうした姿勢を持った人こそが経済学徒なのではないだろうか。
と、ここまで真面目に語りましたが、正直そんな堅っ苦しいことなんて気にせず、何となく経済学面白そうだなーぐらいの気持ちで、経済学の世界に飛び込んでください。笑
そこで学んだ先に見える社会の姿は、経済学を学ばなかったあなたでは見ることのできなかった姿になって現れてきます。そして、それはあなたに新しい考えを与えてくれます。私がそうであったように。
この記事をを読んだ方から経済学を志し、いつか「経世済民」の精神で世の中をより良いものに変革してくれる方が現れたらこれ以上に嬉しいことはありません。