ファンクなど「一発もの」の吹き方
ファンクは一般的なジャズと共通点も多いのですが、相違点もあり。(そもそもジャズ民がやるファンクと純ファンク勢との違いとか言い出すと、宗教論争みたいな不毛な応酬になりかねない…)
ファンクの特徴は以下のようでしょうか。
コード進行はシンプル(単一調性が多い)
リズムがタイト
ファンクは「縦」の音楽
「タテノリ」とか「ヨコノリ」とかの話ではなくて。
楽譜の水平面(x軸)は時間です。垂直(y軸)は音の高低ですね。
x軸とy軸に刻んだ目盛りをイメージして、x軸の目盛り=リズム(縦)、y軸の目盛り=音の高低(横)と称することが多いです。
「縦をそろえて」なんて、よくいいますが、これは、楽譜を視覚的にとらえた言い方なわけです。
そういう視点からすると、ファンクは、横(音の高さ)よりも縦(リズム)に意識を向ける音楽だといえましょう。
リズム(縦)に気をつけてアドリブしましょう。
リズムとアクセント。
コードワークがシンプルな曲、いわゆる「一発」曲は、音使いはシンプルに、その分リズムにことさら注意を払って吹くいい練習になります。
八分音符のキレとか、注意してカッコよさを追求しましょう。
ストーリーを作る
ファンクのソロも、本質的にはジャズと変わらないのですが、以前に書いたアドリブの注意点の要素分解のなかで、
与えられた場(コード)に対して適切な(時には不適切な)音を出す
ソロの、そして曲の起承転結を作る
メロディーに意味をもたせる(motivating)
自分以外の音に反応する(interplay)
コード進行がシンプルな分、1.の段階はコード進行がめまぐるしく変わるジャズ曲より達成しやすい。その分、2. 3. 4.の要素について、注意を払ってみましょう。
キメフレーズ
ハッキリとした「強い」フレーズが、ファンクではハマりやすいです。
コード進行がどんどん変わるジャズ曲では、アドリブはコード進行を表現するための音列であったりする。一方、ファンクは、平坦なコードの繰り返し。だからこそフレーズの「強さ」が試される。
(フレーズの強さ、弱さについては別項で論じたいと思っていますが、たとえば甲子園の応援で使われるメロディが強いメロディー。)
盛り上がり
ジャズのいわゆる「歌もの」では、コード進行を追ってツーファイブリックなどのストックフレーズを「嵌め込む」手法でも、そこそこストーリーになりやすい。が、ワンコードだと、ストーリーは自分で作らなきゃいけない。
というわけで、ストーリーの作り方。
ダイナミクスやフレーズの展開で、盛り上がりを演出しましょう。
キメフレーズ以外のとこ
キャッチーなフレーズがまず耳につきます。
このキャッチーなフレーズを最大限かっこいいリズム、アクセント、アーティキュレーションで吹く。これが第一段階。
目立つ部分をカッコよく。
しかしソロの作り込みの鍵となるのは、そのキメフレーズ以外の部分です。
キメフレーズを全体の中でどういうふうに配置するか。
スターだけでは演劇にならず、4番バッターだけでは野球にならないように、キメだけではソロにならない。
キメをどう配置するか。上手い人は構成力に優れています。
起承転結に配慮しながら、キメを戦略的に配置しましょう。
技巧論的にいえば、キメフレーズの語尾を少し変えて繰り返したり、同じフレーズのリズムを少しずらしたり(裏から入ったり、伸ばしの音を変化させたり)ポリリズム的なアプローチを取ったり。フレーズをさまざまな角度から展開させてゆくわけです。
メイシオパーカー、キャンディダルファー、デヴィッド・サンボーン。
みんな、シンプルなフレーズにメチャクチャ気持ちいいタイミングで音が入ります。そして、一見フレーズを繰り返してるだけのように見える部分も、長いスパン(16小節とか32小節単位で見ると、きちんと起承転結みたいなストーリーが見えてくることもあります。
では、参考までに、キャンディ・ダルファーさんのソロをどうぞ。
テーマのあとトランペットが火の出るようなソロをかましています。
これはテーマの後の盛り上がりをそのまま受け継いで、まるで無酸素運動のように駆け抜けるソロです。「二番手」のソロとしてはお手本のよう。
その後、ストンと落として、メインのキャンディー・ダルファーが、長々としたソロで盛り上げます。
ここの構成、大変勉強になります。ライブなので、フレーズの作り込みは荒いけど「盛り上げてゆく」という部分がよく見えるソロ。基本的にCDとかよりもライブテイクの方がソロは長尺で、その分展開感がわかりやすいです。
まとめ
ファンクはコードがシンプルな分、タイトなリズムで、フレーズのキレに注意して演奏しましょう。
小難しさ(頭)よりもカッコよさ(フィジカル)
しかしファンクのソロの第二のポイントは、ストーリーを作ること。ソロを吹く側としては、ソロの全体構成、盛り上がりやモチーフの展開などに注意してください。