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埴輪たちによる団体演技

博物館や美術館には、様々な種類の埴輪が展示されています。今日では、一つ一つが単体の作品として見られるでしょうが、往時においては、団体で古墳に設置されました。
 
団体の主な構成員として、人物であれば主役級の男・武装した男・琴を弾く男・跪く男・女子・鷹匠・力士・馬曳/農夫など、動物であれば水鳥・鶏・馬・猪・鹿・犬などがいます。古墳によってバラツキはあるものの、種類は限定的です。例えば動物の場合、当時も生息していたはずのトカゲやカエル、イカの埴輪などは出てきません。
 
このことは、作者の創意や選択で自由につくられたのではなく、それぞれに意味があり、発注者の意向や約束事によって制作・提供されたことを示していると考えられます。
埴輪の発注者は、古墳の築造主だったと思われます。埴輪工房へ、必要な埴輪の種類や数量、納期などが指示・発注されたことでしょう。
古墳での位置や置き方も、適当に、あるいはつくり手の考えで勝手に配置したのではなく、何らかの法則・ルールがあったと思われます。
 
埴輪たちは団体演技で何らかの場面を表出していました。レプリカなどで復元・展示された人物埴輪の団体の様子は、儀式か祭祀の場面のように見えます。空想の世界を表現したとは考え難いですから、現実の様子を再現・ヴィジュアライズしたものなのでしょう。
 
しかし、それが古墳の築造主/被葬者が主催したセレモニーの再現なのかは分かりません。別の機会に触れますが、埴輪は形式化・様式化された造形・表現であって、後世の肖像とは異なるものであり、また、一つの工房から同じ型の埴輪が複数の古墳に供給されたと考えられるからです。前方後円墳の築造にも型・約束事があったと考えられているように、個々の埴輪の造形だけでなく、埴輪の配置・配列や団体の構成・表出場面にも型・ルールがあった可能性もあるでしょう。
 
一方、犬と猪の埴輪が登場する狩猟の場面など、ほかのシーンが併せて配置されることもあります。セレモニーの場で狩猟が行われたり、猪が乱入するとは考えられませんから、いくつかの場面が異時同図法のように表出されているのかもしれません。
 
古墳での埴輪たちの役割がどのようなものだったのかは様々な説がありハッキリ分かっていませんが、いくつかの役割を担っていた可能性も、時期とともに役割が変わっていった可能性もありますね。
何れにしても、埴輪の造形・表現は、古墳の上で果たすべき役割を反映したものと考えられます。正解を知ることはできませんが、当時の人々には、埴輪の団体が意味することを分かる文化的・社会的背景があったはずですし、それゆえ必要とされ、役割を果たしえたのです。
 
いくつかの物を組み合わせて設置し、全体で何かを表現する形式も、埴輪のユニークな特徴であり、アートの視点からすると大変興味深く、現代のインスタレーションにも通じるものがありますね。

再現された古墳での埴輪たち


日本はにわ協会ホームページ 
https://haniwa-japan.com/

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