【HaniwaFactoryの小話】手でキツネ作ってコンコン、とは。
私は、突然友人に話を聞いて欲しいと呼び出された。
ただでさえ自分の事で精一杯人間である私は他人の話を聞くのは面倒な性分なのだが、その友人曰く「あんた何を話しても動じないから気楽」というので、まぁそうだねと。古い付き合いだし小一時間しか確保しなかったし、まぁいいかと外に出た。
仕事帰りの友人とオフィス街で待ち合わせて、適当なチェーンのカフェに入ってスターバックスの偽物みたいなナントカラテみたいな飲み物をすすりながら、友人の困難な日常の話を色々と聞いた。詳細は書けないが、よくある生きるの大変そうな話だった。
私からは「昔読んだ、目黒寄生虫館の館長だった人のエッセイは面白いぞ。尻から出るものを患者に電話で実況中継された話が最高で。今何センチくらい出てきました!みたいな」という話題をつい、口走ってしまった。
隣の席に居た意識高い系風の男性は顔色を変えていなかったが、その手元のPCでツイッターに『今、カフェで隣に座ってる女が蟯虫の話とかウンコの話し始めて辛い』とか書かれてないか心配する程度にビビりではある。(検索したがヒットしなかった)亀谷了の寄生虫エッセイは大変面白い、これだけは間違いない。雷魚の刺身の話とかな。でも最近増殖してるオシャレなカフェではこの話題は楽しくお喋りしにくい。私の存在自体がオフィス街の意識高い客層がはびこるカフェに合わない気がする。しかし友人は周囲を気にしない人なので「目黒寄生虫館、存在知ってるんだけどまだ行ったことないんだよなー」とニラニラ笑っていた。ある意味尊い存在である。
帰り際、友人と別れる時になって突然「そうだ、私キツネやりたいんだけど」と言う。ここ最近ツイッターでバズっていたこれの話だ。
「私、あれやる相手居ないけどやってみたいから、ちょっと付き合ってよやってみたいんだよ、キツネで別れの挨拶をコンコンって」
日頃のストレスで本当に頭おかしくなってたらしいので大変不憫になって「わかった、いいよ」と答えたら。答えたらな。答えたらな!!!
友人が満面の笑みで
えっ??!!!何それ、耳???
あんたどうしたんだよ、何それどういう事?!
そのままその場で軽く叫んでしまった。何しろ友人は本気だったからだ。本気で全力でキツネになるつもりだったらしい、ちょっとまて。待ってくれ。
「これだろ…これ…それ違う…こっちだよキツネ…」と右手でお馴染みのキツネの手のポーズを作って顔の前に突き出してやったら
友人「えっ?!あれ?え??ええええええええええええええええええ!」
と叫び返し、慌てて頭上に振り上げた手を降ろして自らの手でキツネのポーズと作ろうとするが、動揺し過ぎているのか手のポーズがキツネじゃなくて、ハードロッカーみたいになってる。ヘビメタである。
「落ち着こうよ!!!メロイック・サインじゃねぇよキツネだよ!」
ペットボトルを持ってたら水ドンするチャンスであったが、残念ながら持ってなかった。(突然シン・ゴジラをぶっこむ。)
もうこのあたりから爆笑してたんで台詞はよく覚えてない。
私「ちげぇだろ!キツネ!」
友人「なんで?!私これだと思ってた!!」
私「何でそんな目立つことするんだよ!」
友人「えっ、でもこれでコンコン…」
私「やめろ、やるなwwwwwwwwwwwwww」
笑いが止まらなくて、キツネの手でツイート通りにやっても、笑って手が震えてまともにコンコン出来ない。
私「あんた、それでいいんじゃないの。そのまま地面にバタンて倒れてくれるなら『ゴンお前だったのかー!』って叫んであげるから」
友人「ごんぎつねの話はヤメロ!!!!!!wwwwwwww」
今度会ったら、栗をくれ。ごん。
※事実に基づいてはいるのだが、分かりやすくなるよう誇張しているから、もしかしたら事実ではないかもしれない、お話。