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あたたかな隙間

 暖かいなあ、と思う。
 ロボ太と呼んでいる温風機が、暖かな風を送って、部屋を満たしてくれる。
 三十三度と表記されているのは嘘だと思うけれど、とろりと溶けるように暖かい。
 わたしはソファーに足を投げ、ふわふわのブランケットに包まれる。
 今日はのんびり起きて、パジャマから着替えなかった。そういう日があっても、いいと思う。そいう日が良い日だって、いいと思う。
 パジャマは、年季が入ってきたけれど、まだふんわりとやわらかく、部屋着の中で、きちんといちばん暖かい。
 茶色いのもいい。テディーベアみたいで、包まれているみたいで。

 さっきまでは、ゲーム実況のアーカイブをだらだら見ていた。見たり、聞いたり、笑ったり。
 それは友達と一緒にゲームをしているような、友達の部屋でぼおっとしているような、そういう特別な幸福だと思う。

 何もしない、どこにも行かない、贅沢な時間。
 いつも、何かをしなくてはいけない気がして、実際そうだとも思う。
 でも時にはそうじゃなくて、「やらなきゃいけないことがたくさんある」と思って、水面のぎりぎりで息をしている気分のときも多い。
 何を、いつまでに、と整理ができれば案外平気なことも多くて、今のわたしは、そのことに気づいている。
 むかしは、忙しそうな人に憧れたりもしたけれど、誰かに、みんなに必要とされているのが羨ましかったんだと思う。
 いまはもうちょっと、うさんくさい人になりたい。コイツ何やって暮らしてるんだろう、何か暇そうで、いつもへらへらしてるけど、みたいな。隙間がある人だと思われたい。
 その隙間で、大切な人と関わって、作りたいものを少しずつこしらえていければ、充分に幸せだと思える。例え、どこへも行けなくても。

 今日は、部屋が暖かくて、いろんなものがふんわりしていて、なんだか嬉しい。
 そんなことを嬉しい、と思えて、幸せだなあ、と思う。

 最近お気に入りのアルバムを、やっぱり好きだなあ、と思って、のんびり言葉を綴った。
 ふつうのことかもしれないけど、なかなかそうできなかったり、思えなかったりする時間の多さも知っている。

 今日はたくさん寝て、たくさん食べて、ただ暖かいことが幸せで、ぞんぶんに嬉しい。
 時間を、毎日を大切にする。というのが、こんな意味だったらいいなあと思う。



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松永ねる
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