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どこかの本屋を旅してる。

今日は久々にここで降りた。
タリーズでコーヒーを飲みたいと思った。
そうしてわたしは、飲みたいコーヒーや、寄りたいお店で降りる駅を決める。

久々に降りたこの駅で、
そういえばタリーズは改装をしていたのだ、そうだ。
看板を見て思い出した。
そしてほんとうに、けっこうまぬけな顔でつぶやいてしまった。
「まじか」
全席禁煙になってた。

タバコの吸えないタリーズは、なんだかスターバックスみたいだ。
仕事とか打ち合わせをしている人が多い。
ただ座っているだけだと手持ち無沙汰なので、わたしも仕事をしているふりをして、iPadを取り出してみる。
今日は、本屋の話をしよう。

わたしが仕事帰りに立ち寄る駅が四つある、というはなしをした。
すべての駅に本屋がある。
駅ナカの、ほんとうに流行りの文庫本と雑誌だけ置いてある駅もあれば、
なぜか駅近にも本屋さんがある町もある。

今日はふたつめの駅、にきている。

本屋の違いに気づいたのは、みっつめの駅に入り浸ったときに気づいた。
この本屋は妙に、児童書が多い。
そういえば、駅ナカの比較的大きな本屋は、ビジネス書みたいなのがやたら多い。この駅は、乗り換えで使う人が多いのだ。

児童書が多いこの町は、こどもが多いんだろうなあ、と思いをはせる。
明るくてきれいな本屋で、ずっと本を買い続けておとなになる。
この町のこどもは、そうして育っていくのだろう。

それから、本屋の違いはおもしろいと思うようになった。
ハーブティーについて気になることを調べようと思って、
だいたいこの本屋にはありそうだ、と目星をつけたが2件歩いたけどぜんぜんなかった。
結局、みっつめの駅の本屋で見つけた。

今日寄ったふたつめの駅の本屋は、通路がやたら広くて
料理とか家事とか、ライフスタイルや趣味に関する本が多いような気がした。
あと、旅行の本。
きっと、そういう本が必要な人が多い町なんだ。
わたしはかけまわるように、うろうろしてしまう。

今日は帰って眠ってしまおう、と思っていたのに
本屋にくると、どうしても元気になってしまう。

そういえば、ここ、1・2年ほどあまり小説を読んでいなかったな、と思って
小説のコーナーをのぞいてみた。

たぶん、小説をやめていた時期は、
なにかを飲み込むげんきがなかったんだなあ、といまになってわかる。
いまは、わくわくしてしまう。

手元に置くのは、絶対に気に入った本と参考書にしぼっている。
わたしは自分に言い聞かせた。
鷺沢さんの本はひとつも手放してない、
江國さんと吉本ばななの本は、あまり読まない本を選んでいくつか手放している
村上春樹は、「羊をめぐる冒険」を好きすぎて、手放してから買い直している。
小説は絶対に失敗したくないのだ。

じゃあ図書館にいこう、一旦いこうと今日は決めて、タリーズに逃げ込んだ。

でもなあ、わかっているんだよなあ
図書館の本より、本屋さんの本のほうが、絶対おもしろそうなんだ。
だって、売るために並べてあるから。
この本が好きな人はこれも好きでしょ、て帯とかコメントつきで置いてあるから
図書館と本屋さんで本を選ぶのは、ぜんぜん違う。

わたしの気持ち置きどころでも違う。
ぜんぶがおもしろそうに見えることもあるし、
なにを見てもぜんぜんだめなこともある。

本は冒険だ。
いま、いちばん強いとか、強くなれそうなやつを選ぶ。
それが、知識をつけるとか、前向きになるとか、べつに前向きな感情じゃなくてもいいんだけど

最近は、これだ!と思って、浅野いにおさんのエッセイを買った。
おもしろくてすぐ読んで、すぐに弟に貸してしまった。
きっと、弟にもおもしろい本になると思った。

たまには誰かと、
いつもはひとりで、本の海を泳ぐ。
その町の匂いにふれながら、
たまにむせかえりながら

わたしは今日も、出会いを求めて
どこかの本屋を旅してる。

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松永ねる
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