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ついつい、「ずる」を選択してしまう環境とは。

大学時代、焼き肉屋さんでバイトをしていて「ムンチュ」というピリ辛野菜サラダを作っていた時のこと、たまたま見回りに来た店長にボールの中をのぞかれて、

「お前、これ胡麻入っとらんやんけ!!」

と、指摘され、「まじだ!」と思いながら、

「いや、入っています!!」

と、とっさに答えてしまったJUNです。

いや、店長怖すぎでしょ。そこからは地獄。

自分でもなぜ「入っている。」と言い切ってしまったのか。たぶん、怒られたくないという防衛反応であろうとは思うのですが、

「入っとらんやんけ。どこに目つけとんのや。」

「いや、入ってます!!」

のやりとりの押収。いや~こちらとしては分が悪いですよ。だって、胡麻入れてませんから。

なぜ「嘘をついたのか。」も疑問ですが、それよりもなぜ「胡麻を入れ忘れたことを認めなかったのか。」の方が今となっては謎です。

本日は、そんな話題。

僕を擁護するわけではなく、人間にはちょっとだけ「ずるい」ところがあります。悪気はないんだけれども、「ずる」を生み出しやすい環境が整ってしまったことにより「ついずる」が出てしまうのです。

そんな状況がどんなものかをまとめていきます。

▶「ずる」をしやすい環境とは。

僕が敬愛するダン・アリエリーさんの本からおもしろい実験内容を紹介させてください。きっと、みなさんも納得してくれると思うのです。ざっくり説明すると、ずる 嘘とごまかしの行動経済学

あるテストを被験者に受けてもらい、点数をどれだけ誤魔化すかを実験しました。そして、テスト後の点数の報告の仕方を試験官がチェックするという方式と、自己採点方式に分けたのです。

もうお分かりですね。結果は、

「自己採点方式の方が、誤魔化す人が増えた。」

という結果になりました。そのテスト結果は、今後の人生にほんの一ミリも影響しないのにですよ。やはり、人間はおもしろいですね。

さらにさらに、報酬を加えてみました。そうです。良い点数を取ったほうが報酬を多くもらえるという制度にしたのです。あなたは、どんな結果になったと思いますか。これもおもしろくて、

「誤魔化すは誤魔化すけど、思い切って高得点にはしない。」

ということが見えてきたのです。どういうことか、

「高得点の方が高収入だとは分かっているけれど、そこまで誤魔化して高収入を得るのは申し訳ないから、ほどほどに誤魔化して、ほどほどの報酬を獲得する。」

という選択に至ったというのです。

結果、

「報酬が高くなるからと言って、人間がより『ずる』をするようになるとは限らない。」

とも言えるのです。なんだか、矛盾しているようで「なるほどなぁ。」と思わせてくれる人間味のある結果ですよね。

▶どうしても見てしまう答え。

さて、この結果を踏まえて子どもたちの学校生活を考えてみましょう。アリエリーさんの本を読みながら僕が具体的に想起した場面は、子どもたちが自己採点をする場面です。

さすがに、がっつり評価するテストを自己採点にはしません。その理由は、子どもの「ずる」を疑っているのではなく、僕自信が採点しながら子どもたちの学習傾向を分析したいからです。

しかし、テスト前のプレテストのようなものは、自己採点を求めることがあります。その理由は、

「自己採点することで、自分の『今』の実力を直視し、テストに向けての作戦を立ててほしい。」

という願いからでもあります。

プレテストを受け、教師が〇付け。返されて解き直しと言うプロセスのデメリットは、フィードバックにそれなりの時間がかかってしまうということでしょう。

僕としては、プレテストを解いたその気持ちのまま、弱点を克服する作戦会議までいってほしいのです。だからこそ、解き終わった子どもから自己採点をして、解き直しという学習スタイルにしています。

しかし、ここで「ずる」スイッチが押される可能性があります。そうです、

「自己採点。」

というところですね。プレテストなので、極端に言うとどんな点数を取っていても良いのです。しかし、子どもながらに「高得点の方が良い。」と思ってこっそり作業をして点数を高めてしまうかもしれません。もしくは、「これは・・・。まぁ正解だろう。」とめちゃくちゃ甘めの採点をしてしまうことがあるかもしれません。

このような人間心理を知っていると、「自己採点でお願い!」と簡単に指示はできません。やはり、

「このプレテストは、自分の実力を知るものだから、本番はこのテストを超えればいい。」

と、テストの意図を伝えておくことは必須でしょう。

また、絶対に伝えておきたいルールとして、

「分からない問題は、とばしていい。そして、最後まで解き終わってから採点するんだよ。」

ということは守ってもらいましょう。なぜか、僕も身に覚えがあるので痛いほど分かるのですが、

1問解き終え、「あっているかな。」と気になって答えを確認。

「よし!合っていたぞ!と安堵しつつ、隣に記入されている問題2の答えをチラ見してしまう。」

という「ずる」!!

これは、しょうがない。だって、視界に入ってきてしまうから。「絶対に見ないようにしよう!」と心の中で誓って解答欄を見るんだけど、どうしても視界に入ってきちゃうから! これを繰り返していくと100点取れちゃうから!

教師の配慮として、「最後まで解き終わってから採点。」というルールだけは、子どものためだと思って最初に提示してくださいね!

▶「ずる」以上に怖いこと。

さて、ここまでついついしてしまう「ずる」について書いてきました。しかし、最後は恐怖ですよ。人間の恐ろしさをまとめます。

何が恐ろしいのかというと、人間は、

「『ずる』をして獲得した得点を、そのまま自分の実力として認識してしまう!」

という特性があるのです!!

「こわっ!!」って思いませんか。自分で意識的に「ずる」をしておいて、実力よりも高得点をとっておきながら、その点数は「自分の実力の正当な評価である。」とじわじわ思い込んでしまう特性があるのです。

「ずる」をするのは、人としてしょうがない面もあります。しかし、もっと怖いのは、その「ずる」を受け入れて正当化してしまうということです。

子どもたちと関わっていると、ごくたまに、

「何かの弾みでついた小さな嘘が、時が経つにつれて本当だと自分で思い込んでしまう。」

という怪現象に見舞われるお子様がいます。

明らかに違った事実があるのにも関わらず、「うそ」をつき続けたらそっちの方向に自分を寄せていってしまうということです。

だからプレテストで「嘘得点」をとってはいけないのです。きっと、そのような「ずる」を働いてしまうと、テスト直前には、

「自分の実力を過剰に評価し、結果に落胆する。」

ことが目に見えています。

▶まとめ。

本記事では、「子どもが『ずる』をする環境に追い込んではいけない!」という内容をまとめました。

やはり、自己採点をするのであれば、「全て解き終わってから、赤鉛筆で!」というルールは必須ですね。こっそり書き直すことができるチャンスをみすみす与えてしまうのは、教師の責任です。

誰しもが「ずるをしてはいけない。」と思ってきているのですから。そんな素直な子どもたちを、ちょっと頑張れば「ずる」ができる状況においてはいけません。

「ずる」をして最終的に苦しい思いをするのは子ども自身だということをしっかりと受け止め、心を鬼にして真剣勝負しましょう!


ずるはしていません。


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