見出し画像

『出版・マンガビジネスの著作権』要約


著作物とは何か?
定義
「①思想又は感情を②創作的に③表現したものであって、④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
①人の精神活動全般を指す 単なるデータや歴史的事実は× 事実の選び方やデータの配列は著作権になる
②オリジナリティ/個性 短い言葉は創作的とは言いにくい
③まとまりをもった表現内容である必要がある アイデアや文体は×
④広く知的・文化的な範囲 工業デザインなどは意匠法や不正防止条例で守られている

他主な分類

二次著作物
「著作権を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」
‐ 完全オリジナルではない著作物を指す 単なるコピーは×
‐元になった著作物を原著作物と言う
‐ 原著作者の許可を得ていないと翻案権と著作者人格権の侵害になる
‐ 原著作者は二次著作物に二次著作者と同等の著作権を要する

編集著作物
‐ 個々の素材を選択・配列した編集物であり、その選択や配列に創作性がある場合の著作物を指す

共同著作物
‐ 二人以上の人が共同で創作した著作物のうち、各人の寄与を分離して個別に利用することができない著作物を指す
‐ 許可を得るには原則共同著作者全員の同意が必要

結合著作物
‐ 創作者の寄与を分離して利用することができる著作物を指す

著作権

著作(財産)権
著作者に与えられる権利の内、著作物の利用に関する財産的な権利
- 支分権の総称である
- 支分権にはそれぞれの著作権の許諾や禁止をすることができる権利(許諾権/禁止権)
- 仮に権利が侵害された場合損害賠償や不当利得の返還を請求することができる

著作者人格権
- 人的利益の保護に関する権利
- 主に公表権/氏名表示権/同一性保持権の総称

著作(財産)権
「公」「公衆」とは
‐ 公衆とは一般に不特定の人、また特定の人でも多数の場合は公衆にあたる 明確なラインはない
‐ 公衆に見せ聞かせることを目的としている時点で、実際に見せ聞かせたかどうかは問われない

〇複製権
録音、録画やその他の方法によって、有機的に再製すること、つまり形あるものに固定をすることを指す
‐ 他の支分権と異なり「公」「公衆」のためにされる場合に限られない
‐ しかし制限規定の私的使用目的の複製については複製権の侵害にはならない

〇上映権・演奏権
「公」に上映・演奏をすることを対象とした権利
録音した音楽や映像を再製する行為も該当する

〇上映権
「公」に行われる上映行為のみ

〇公衆送信権
公衆送信権は公衆に向けて著作物を無線又は優先で送信すること
‐ 送信の方法には一斉送信型とオンデマンド型(受信者からのリクエストを受けて行う送信)がある 
‐ 後者はアクセスがあった時に送信が可能であれば送信可能化といい、公衆送信に含まれる
‐ 後者は自動公衆送信(netflixなど)と手動公衆送信(ファックスなど)に分けられる

〇伝達権
伝達権は公衆放送されている著作物を受信し、それを受信装置で公に伝達することを対象とした権利
‐ 喫茶店でテレビ放送を流すのは伝達権/録画映像やDVDは上映権の対象

〇口述権
公衆に向けて言語の著作物を朗読したりする行為を対象とした権利

〇展示権
公衆に見せるために原作品を展示することを対象としており、美術の著作物と未発行の写真の著作物の原作品について認められる
‐ 原作品を対象としているので複製物を展示しても権利侵害にはならない
‐ 原作品でも所有者、所有者から許可を得た者が展示するのは侵害にならない

〇頒布権
映画の著作物の複製について公衆に販売・委譲したり、貸与したりすることを内容とする権利
‐ 映画のみの適用されるが他の著作物には譲渡権と貸与権が認められているのでほぼ結果同じ

〇譲渡権
著作物を原作品または複製物の譲渡により公衆に提供することを内容とする権利
‐ 映画以外の著作物を対象とする
‐ 譲渡権者が著作物の複製物をいったん他人に譲渡するとその複製物はその後譲渡には権利が及ばなくなる(消尽するという)
‐ 譲渡権が消尽していないことを知らないで購入した人が公衆に売る行為をした場合は侵害にならない

〇貸与権
著作物の複製を公衆に対して貸与することを内容とした権利
‐ 貸与は有料、無料を問わない
‐ 映画以外の著作物を対象
‐ 貸与権は譲渡権とは異なり消尽しない

〇翻訳権・翻案権など
‐ 翻訳:言語の著作物を言語体系の異なる他の言語に変えること
‐ 編曲:ある楽曲をもとに類似する楽曲を創作することと解釈してよい
‐ 変形:3次元→2次元にするなど著作物の存在様式を変えること
‐ 翻案:既存の著作物に対して表現上の本質的な特徴の同一性を保ちつつ、新たな創作性を加えて別の著作物を創作すること
‐ それぞれには創造性が必要でありgoogle翻訳などは複製にあたる
‐ 新たな著作物から既存著作物の表現上の本質的特徴がもはや感じ取れない場合は侵害にならない

著作者人格権

〇公表権
‐ 著作物を公表するか否か、公表する場合いつ、どのような方法で公表するかを決めることができる権利
‐ 未発表の著作物にのみ適用
‐ 著作権の譲渡などすると公表について同意したとみなされ公表権が及ばなくなる場合もある

〇氏名表示権
‐ 著作物が公衆に提示、提供される場合に著作者の氏名を表示するか否か、表示する場合にどのように表示するか決めることができる権利

〇同一性保持権
‐ 著作物の同一性を保持し、著作者の意思に反した変更切除その他改変を受けない権利
‐ 漫画作品など特定のコマだけを抜き出すことも切除で侵害にあたる
‐ タイトル自体は著作物に当たらない場合が多いが著作者の意に反している場合は侵害にあたる

〇名誉・声望保持権
‐ 著作者の名誉、声望を害する方法で著作物を利用することも侵害にあたる

㊟ 
‐ 著作権も著作者人格権もともに著作権の利用について著作者に認められる権利である
‐ 著作権は財産権なので委譲可能、著作者が死亡すれば相続される
‐ 著作者人格権は人格的権利(肖像権やプライバシーと同様)なので譲渡はできず相続はされない(一身専属性)
‐ 相続はされないが著作者人格権を使って遺族は著作者が生きていた場合著作者人格権の侵害となるような行為は差し止め請求など行使は可能とされる

出版権

〇第一号出版権 (出版行為/複製行為)
①頒布の目的を持つて、②原作のまま印刷その他の③機械的又は化学的方法により④文書又は図郭として複製する権利(記録媒体に記録された電磁的記録として複製する権利も含む)
①→頒布は有償、無償を問わずに副生物を公衆に譲渡したり貸与したりすること
③→機械又は化学的方法なので手動は出版権の対象外
‐ 文書または図画なので動画等は対象外
‐ 電子記録はDVDなどを指す

〇第二号出版権 (公衆送信行為)
原作のまま前条第一項に規定する方式により記録媒体に記録された当該著作物の複製を用いて公衆送信を行う権利

‐その他

著作権はどのような条件で保護を受けるのか

‐無方式主義
‐ 著作権は権利発生に何も手続きが必要ない(ベルヌ条約の原則)

‐著作者の登録
‐ 登録の必要はないが登録することもできる
‐ ①実名登録②第一発行(公表)年月日の登録③プログラムの著作物の創作年月日の登録④著作権譲渡・質権設定等の登録⑤出版権の設定等の登録

‐©表示
‐ 自身の権利を主張するためにつけるもので必ずしも必要ではない
‐ インターネットで掲載する場合はつけておくと自由利用と思われないので有効
‐ ©は著作者名ではなく著作権者名

著作者について
‐ 著作物を創作する者と定義される (単純作業や編集者は著作者に当たる場合はあまりない)
‐ 映画の著作物は映画製作者に帰属する場合が多い 

‐職務著作
①法人その他使用者の発意に基づき、②法人の業務に従事するものが、③職務上製作する著作物で、④法人名義で公表するものを指す
②→雇用関係が無くても発注者の指揮命令に従って業務を行っている場合当てはまる

著作者隣接権
著作物を公衆に伝達する重要な役割を担っていて、著作物の創作活動に準じたある種の創作活動を行っている行為には著作者隣接権が付与される
‐ 主に実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に付与される
‐ 著作者隣接権には人格権は認められていないが、実演家だけ実演家人格権(指名表示権、同一性保持権)が認められる

制限規定
アメリカでは「フェアユース」という概念的判断だが、日本は過去の判例での個別的判断によって著作権を制限している

‐ 私的使用のための複製
・複製する人にとって自分自身が複製物を使用する目的の場合
・家庭内で使用する目的の場合
・家庭内に準じる限られた範囲で使用する目的の場合
以下は侵害に当たる
・公衆が利用するために設置されている自動複製機器を用いる場合
・コピープロテクト技術が施されているときにそれを回避して複製を行う場合
・著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル式の録音または録画をその事実と知りながら行う場合
‐ 複製するのは使用する人である必要があるので自炊代行業者などは私的利用には当てはまらない
‐ 政令で指定した録音録画機器及び記録媒体を使って行う場合には複製自体は自由だが著作者に私的録音・録画補償金を支払わなければならない

‐引用
引用と認められる要件は以下の通り
・引用される著作物と引用する著作物とが明確に区分されている(明瞭区分性)
・前者の部分が「従」で自ら作成する部分が「主」という主従関係がある(附従性)
・出所の表示がされている

‐非営利目的での上映等
利用が認められる要件は以下の通り
・営利目的としない(宣伝目的も除く)
・聴衆・観衆から入場料その他の名目を一切の対価を徴収せず、
・実演家・口述者に出演料などの報酬が支払われない場合

‐図書館での利用
・利用者の求めに応じて(置いてあるコピー機はこれに当たらない)
・老朽化した蔵書の保存のため
・絶版などのため入手困難な資料についてほかの図書館から要望があった場合

‐学校での利用
‐ 教育目的であればOKな場合も多い
‐ 著作者への通知が前提にあるよ~

著作権の保護期間
著作者が死亡した日、公表された日、創作された日の属する翌年の1月1日から起算する

保護期間のバリエーション
・実名で公表された著作物
”創作の時から著作者の死亡の時まで”+”著作権の死亡の時から50年間”
‐ 二人以上の著作者の場合後に死亡した側
・無名または変名で公表された場合
著作者が特定できない場合は、”公表後50年”
・団体名義の著作物
法人など団体の著作者名義の場合、”公表後50年”
50年以内に公表されない場合、”創作時から50年”
・映画の著作物
”公表後70年”

‐保護期間の特例
‐ 著作権者本国が定めている保護期間のみで保護される(保護期間の相互主義)
‐ 戦時加算
‐ 著作者隣接権の保護期間は”公表から50年”
‐死後の保護について
‐ 相続はされないが著作者人格権を使って遺族は著作者が生きていた場合著作者人格権の侵害となるような行為は差し止め請求など行使は可能とされる

著作権侵害
・同一性
・類似性(個性が入っていればOK)
・依拠性(意図的でなければOK)

‐民事上の法的効果

・差し止め請求権
侵害行為の停止又は侵害行為の予防を行うことができる権利
‐ 侵害者に故意、過失が無くても(全く落ち度がなくても)認められる

・損害賠償請求権
‐ 侵害者の著作権侵害によって権利者が被った損害を買収するよう侵害者に求められる権利
‐ 侵害者に故意、過失があることが必要
‐ 請求できる損害は
①著作権が損害されたことでm著作権者の利益が現書した場合に、本来であれば得られたであろう利益
②侵害者が著作権を侵害したことにより得た利益
③侵害者が権利者から承諾を受けていたとしたら、支払っていたであろうライセンス料
‐ 弁護士に頼んで訴訟してもらうことが多いが、その場合の弁護士の報酬は裁判所が認めた損害の約一割の金額が損害額に上乗せされることが多い
‐ 著作者人格権侵害に伴う損害は別 慰謝料(精神的苦痛)

・名誉回復措置等請求権
著作者人格権、実演家人格権(著作権、著作者隣接権は該当しない)が侵害された場合に、著作者等であることを確保し、または自分の名誉・声望を回復するために適切な措置を求める事のできる権利
‐ 侵害者に故意、過失があることが必要
‐ 具体的措置には謝罪広告や訂正記事の掲載が挙げられる

‐刑事上の法的罰則
著作権者等が告訴した場合にだけ起訴されることになる(親告罪)

・著作権・著作者隣接権の侵害
→10年以下の懲役若しくは1000万円以下(法人は3億円以下)の罰金また双方
・著作権・著作者隣接権とみなされる行為
→5年以下の懲役若しくは500万円以下(法人は3億円以下)の罰金また双方
・著作者人格権・実演家人格権の侵害
→5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金また双方
*著作者・実演家が死亡後、生前であれば著作者人格権の侵害になった行為
→500万円以下の罰金 親告罪ではない

著作権の国際的保護

・ベルヌ条約
‐ 174か国が加盟している著作権に関する国際条約
‐ 著作者が加盟国外でも加盟国内で公表されれば保護対象になる
‐ 原則として発祥の国ではなく利用される国の法律が適用される
①内国民待遇
加盟国が外国人の著作物を保護する場合にも、自国民に与えられている保護と同等の保護を与えなければならない
②無方式主義
登録やコピーマークは必要ない
③遡及効
ベルヌ条約が効力を持つ以前の著作物まで保護される(期間満了しているものは除く)

・万国著作権条約
著作物すべてに©、作者の指名、最初の発行年を表示しておけば方式主義刻でも自動的に保護を受けることができる条約

・TRIPS協定
‐ コンピューター・プログラムの保護の確認
‐ 編集物・データベースの保護
‐ コンピューター・プログラム、映画の著作物に関する貸与権の保護
‐ 実演家・レコード製作者の録画録音権等、複製権の保護
‐ レコードの貸与権の保護
内国待遇、遡及効アリ

・WIPO著作権条約
‐ コンピューター・プログラムの保護の確認
‐ 編集物・データベースの保護
‐ 譲渡権の保護
‐ コンピューター・プログラム、映画の著作物、レコードに関する貸与兼の保護
‐ 優先・無線の方法でインターネット等を用いてインタラクティブに送信する権利、送信可能化権の保護
‐ コピープロテクション等の技術的保護手段の解除等の禁止

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?